「選挙の私物化」「ガッカリや」国保逃れだけじゃない…大阪市民の声を無視してまで吉村知事が“大阪府市ダブル選”を強行する真の理由
「選挙の私物化」「ガッカリや」国保逃れだけじゃない…大阪市民の声を無視してまで吉村知事が“大阪府市ダブル選”を強行する真の理由

衆院選の解散総選挙に合わせて大阪府知事だった日本維新の会代表・吉村洋文氏がぶち上げた大阪府知事と大阪市長の出直しダブル選。1月22日に知事選告示という急な展開に関係者は悲鳴を上げる。

2015年、2020年と過去2回住民投票で否決された「大阪都構想」の是非を問うために出直し選をすると吉村氏は言うが、その裏に都構想への疑念を拡大させる「別のアイデア」をつぶす狙いもあるとの見方がある。 

「市長や市役所職員は大阪府知事の奴隷ではありません」と怒りの声も…

吉村氏がダブル選方針を周辺に伝えたのは高市早苗首相が国会冒頭での解散を検討していると報じられてから4日後の1月13日。

「都構想に挑戦することが⼤阪の未来のために必要だ」と主張しながら、16日には大阪市長の横山英幸氏とそろって知事、市長を辞職し選挙を決めた。

都構想は⼤阪市を東京23区のように特別区に再編するもので、「身を切る改革」を掲げる維新の結党以来の悲願だ。

「是非を問うた2015年と2020年の住⺠投票ではいずれも否決されました。吉村氏は2回目の否決後、もう挑戦しないと明言しましたが2023年の知事選で再選されるとまた実現に意欲をみせ始めたのです」(政界関係者)

その都構想に挑戦する“資格”を得るため選挙で信任を受ける必要がある、との主張は一部のメディアや市民から「都構想ありき」「選挙の私物化と言わざるを得ない」と強く批判されているが、その理由は選挙の日程にもある。

「吉村氏は総選挙の投票日は2月8日になると早々に高市首相から聞いていたようで、同じ日にダブル選もぶつけることで、大阪はトリプル選になりました。

公職選挙法では、衆院選は公示から投票までの期間が12日以上となっているのに対し、政令指定都市の大阪市長選は告示から14日以上、知事選は同17日以上です。全国の自治体は急な総選挙の準備で四苦八苦ですが、大阪府下では知事選告示がさらに早く1月22日になったため大変です。

大阪市では候補者のポスター掲示板の資材が確保できず、衆院選だけなら約2000か所を予定していた掲示板が約3分の1に減らされました」(地元記者)

今回のダブル選挙に対して、交野市の山本景市長はSNSで「市長や市役所職員は大阪府知事の奴隷ではありません」と怒りを爆発。大阪府下の自治体職員Aさんも「不要不急の選挙をぶち上げて、掲示板を3分の1しか用意できないとは、何のための選挙なのか」と嘆く。

「大阪のダブル選は維新のゴリ押しを感じるわ」

有権者となる大阪府の住民はどうか。60代の主婦Bさんは「ダブル選の費用が28億円かかるって言われてますけど、ホンマですか? せっかく大阪・関西万博が黒字で吉村さんもやるやんって思ってたのに、また余計なことに予算を使ってガッカリです。

高市さんの解散も大義がないって言われてるけど、大阪のダブル選は維新のゴリ押しを感じるわ」と辛口だ。

いっぽうコンサルティング業の40代男性Cさんは「維新は身を切る改革をやろうとしていると感じる。反対派は既得権益者や税金の恩恵を受けている層だと言われると納得してしまう。今の二重行政がベストとは思わない。万博が盛況に終わったので、やったらええやんって思いますけど」と賛意を示す。

広告代理店勤務の30代女性Dさんも「あれだけ成功した万博の後の大阪の経済成長戦略として都構想はぜひ実現してほしい。インバウンド戦略は欠かせないと思う。万博跡地のIR(統合型リゾート)の建設も大阪が国際都市として発展するための一歩」と話す。

維新以外の地元政界からは「職責を放棄し、税金を使い選挙をすることに何の大義があるのか」(公明党幹部)との怒りの声があがり、自民や立憲民主、共産も立候補を見送った。

しかし別に一人が立候補すると表明したため、無投票にはならないとみられる。主要政党が選挙に付き合わなくとも吉村氏は当選すれば3回目の住民投票実施のお墨付きを得たとみなす姿勢だ。

吉村氏が選挙を急ぐ「二つの事情」

ではなぜ選挙を先に行なう必要があるのか。

吉村氏は2023年の再選後に言い始めた構想なので「何らかの民主的なプロセス」が必要と主張するが、地元記者は「維新議員による国保(国民健康保険)逃れ問題から目をそらす狙いでしょう」と話す。

「吉村氏が辞職を発表した15日に、維新は脱法的な国保逃れをしていたとする6議員を除名しました。でもこれで終わるわけがない。特に仲介料を取って“国保逃れコンサル”をした議員がいたとの情報があり『事実なら相当ヤバい話』とみるメディア各社が追いかけています」(同記者)

さらにもう一つ、都構想の逆風になる動きがあると維新の手法に精通した関係者が話す。

「都構想は大阪市を4つとか5つの特別区に分割する制度変更です。当然ですが4つに割れば、4倍とはならなくとも首長も管理職もその分増え、住民一人当たりのコストも上がります。

コストを下げるには自治体は分割でなく逆に合併したほうがよく、実際に“平成の大合併”と呼ばれる全国自治体の再編成はこうした考えから実施されました。

そこで、大阪市を軸に周辺自治体がいくつか合併する巨大な“特別市”に再編すれば、コスト削減と住民サービス向上ができるという考えが最近一部国会議員らから提唱され、注目されているんです」(関係者)

この特別市構想には法整備が必要だが、大阪は政治的環境が整った、実現に最も近い地域だという。

「大阪は大阪市だけでなく周辺市も、首長だけでなく議会多数派を維新が押さえており、維新がその気になれば複数市の行政と議会の賛同ですぐ実現できるでしょう。しかし、これまであまり知られていなかったこの構想に維新は反対してきました。都構想と真逆の発想だからです。

今、この特別市構想に目が向き始めたことに吉村さんは焦っている気配で、選挙で都構想を連呼することで特別市構想への関心が高まるのを防ぎたい思惑もありそうです」(前同)

吉村氏は21日、再選されれば任期切れで改選を迎える来年4月の統一地方選を念頭に「1年3か月の間に住民投票を実施させてくださいということに当然なる」と述べたが、住民投票は統一選との同時実施を目論んでいるとの見方が強い。

「これまで否決された2回の住民投票はいずれも単独で実施されました。

しかし次の統一選で住民投票を知事選と市長選、府議選、市議選に合わせた“5重選挙”で行なえば賛成多数に持ち込めると考えているようです」(地元記者)

国保逃れの批判拡大か都構想実現か。政治生命がかかる吉村氏が必死になるのも無理はない。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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