子どもの学力や共感力の向上、笑顔が増える…“読み聞かせ”の驚くべきプラス効果と逆効果になってしまうやり方
子どもの学力や共感力の向上、笑顔が増える…“読み聞かせ”の驚くべきプラス効果と逆効果になってしまうやり方

絵本の読み聞かせには、認知の発達、学力や共感力の向上といった数々のプラス効果があることが科学的にわかっている。しかし、その効果を意識するあまり、子どもに対して無理にやろうとしてはいけないという。

猪原敬介著『科学的根拠(エビデンス)が教える子どもの「すごい読書」』から抜粋・再構成して詳しく解説する。

子どもの笑顔も増える…読み聞かせの驚くべきプラス効果

まず、できるならば読み聞かせはしたほうがいいのか?
これは「YES」です。

読み聞かせの直接的効果については、

●認知(≒知能)発達 *1
●言葉の力 *1
●学力 *2
●共感力 *3*4

といったプラス効果があることが国内外の多くの研究で指摘されています。

例えば、『教育は遺伝に勝てるか?』(安藤寿康、朝日新聞出版)*2では、遺伝という「生まれつき変わらない特性」の要因を考慮しても、「読み聞かせをしたり読書の機会を与えてあげること」が、学力の向上に寄与する可能性があることを示しています。実はこうした行動遺伝学的知見において、学力にプラス効果を持つとされる家庭環境要因は珍しいのです。

学力に加えて、それ以外にも効果がありそうだということを考えれば、読み聞かせを家庭で行う価値は大きいでしょう。

さらに、直接的な効果以外でも、

●読み聞かせを習慣的に行うことが、読み聞かせ以外の時間でも子どもとのコミュニケーションを良好にする*5

●読み聞かせがうまく行われることで、母親自身の満足感や価値の認識につながる*6

ことが報告されています。

例えば、島根大学の佐藤鮎美さんの研究*5では、9カ月児の母親に、3カ月間、毎日一度は必ず読み聞かせを行ってもらう「絵本群」と、そうした介入を行わない「統制群」を比較しています。すると、介入の影響を調べるために絵本の読み聞かせ以外の場面として設定された「おもちゃで遊ぶ場面」での母子のかかわりに変化があり、「絵本群」では、

●母親から子への賞賛(ほめる)が増えた
●遊びの中での子どもの「微笑み」が増えた

ことがわかっています。

このように、総合的に見て、読み聞かせは家庭環境としてかなり高価値であるといえます。

読み聞かせが読書習慣をつくるのか

「幼いころの読み聞かせによって、児童期の読書習慣が形づくられるのではないか」という考えも根強いと思います。

これについては「YESでもあり、NOでもある」というのが私の意見です。

確かに、

●小学校入学前の読み聞かせが多いほど、入学後の子どもの読書時間が長い

という大規模な追跡調査の結果*7があり、間違ってはいません。

しかしそこから「幼いころに読み聞かせをしていない子どもに、小学生になってから何をしても無駄」と考えてしまっているとしたら、それは間違っています。

実際、別の研究*8では、全体的には「幼稚園や保育園のころの読み聞かせが多いほど、小学1・2年生時の読書が多く、読書好きである」という傾向がありつつも、幼稚園や保育園のころの家庭での読み聞かせが、

●「読んでくれなかった」と回答した児童のほうが、「時々読んでくれた」「あまり読んでくれなかった」と回答した児童よりも、小学1・2年生時の1カ月の読書冊数が多く、読書好きであった(「よく読んでくれた」と回答した児童とは同程度であった)

という結果を報告しています。

要するに、読み聞かせをするに越したことはないが、読み聞かせは子どもの読書習慣を形成する要因のひとつでしかないので、そのほかの要因によって容易に覆るものだということです。

大切なのはやはり「無理なく継続」

ちなみにここまで読んで、「読み聞かせがいいことはわかったから、読み聞かせのよいやり方を教えてよ」と思われた方がおられるかもしれません。

一応、そういう研究もあります。例えば、絵本のある部分に保護者が「これなんだろ?」と質問します。すると子どもが「ぞうさん!」のように答えるわけですが、そこで終わらずに、「ぞうさん何してるかな?」というように、さらに質問を重ねるのです。

こうした、情報を詳細化する反応を保護者がしている場合には、生後20カ月から27カ月にかけての子どもの語彙発達が促進されることが報告されています*9。

ただ、私のお勧めはこうしたテクニックを身につけることではなく、それが自然と生まれる家庭環境をつくることです。

読み聞かせが家庭生活の中に根づき、保護者に余裕があり、親子関係が良好で、読み聞かせ中の親密なやり取りがある……その自然な発露として、先ほどのような情報を詳細化する反応を保護者がする。こちらを目指すべきです。

そうでないと、こうしたテクニックを学んでも短期的な取り組みに終わってしまうでしょうし、「読み聞かせはこうしなければ」という保護者の方にストレスフルな取り組みは、読み聞かせの頻度そのものを下げてしまったり、保護者の方の精神を蝕んだりすることにもなります。

実際、一人目の子どもを育てる保護者について行った調査では、子どもが0~1歳のときに読み聞かせを多くしているほど、子どもが1~3歳のときの保護者の自尊心が低下し、そのことで子どもが3~6歳のときには保護者の抑うつ傾向を高めるという結果を報告しているものもあります*10。

少し前には「読み聞かせがうまく行われることで、母親自身の満足感や価値の認識につながる」と書きましたが、それはあくまでも「うまくいっている読み聞かせ」に限った話です。

そして読み聞かせがうまくいっていることの背景には、保護者自身の余裕や家庭の落ち着きといったものがあります。

まずは保護者自身が心身ともに健康であること。そして家庭が落ち着いた状態にあり、子どもが自然と「読み聞かせをしてほしい」と言う環境を整えること。その上で、子どもをよく観察し、好みに合う絵本を選び、保護者自身もその絵本の内容に興味を持って子どもとやり取りできるということ。

遠回りですが、こうした順序で読み聞かせまで到達することが、読書の前段階としての読み聞かせを効果的なものにし、そこでつくり上げた環境が、そのまま将来の子どもの自主的な読書活動につながっていくのだと思います。

文/猪原敬介

*1 Galea, C., Jones, A., Ko, K., Salins, A., Robidoux, S., Noble, C., & McArthur, G.
(2025). Home-based shared book reading and developmental outcomes in young children: a systematic review with meta-analyses. Frontiers in Language Sciences, 4:1540562, 1-19..
*2 安藤寿康(2023).教育は遺伝に勝てるか?.朝日新聞出版.
*3 村山陽・竹内瑠美・安永正史・山口淳・藤原佳典(2021).小学校における高齢
者の読み聞かせボランティア活動が児童の共感的関心の向上に及ぼす影響:親密な関係性の構築に着目して.日本世代間交流学会誌, 11, 13-22.
*4 大久保圭介・佐藤賢輔・浜名真以・野澤祥子(2024). 絵本の読み聞かせと幼児
のかな文字識字および情動理解の関連:読み聞かせの量・質・開始時期に注目して. 発達心理学研究, 35, 227-239.
*5 佐藤鮎美(2016). 絵本遊びが親子関係に良い効果をもたらすのは本当か?.ベビ
ーサイエンス, 16, 18-27.
*6 中根愛・中谷桃子・小林哲生.(2020).子どもに対する絵本読み聞かせから親は
何を得るのか. 認知科学, 27, 138-149.
*7 ベネッセ教育総合研究所.(2023).子どもの読書行動の実態−調査結果からわか
ること-. https://berd.benesse.jp/special/datachild/datashu04.php
*8 吉田佐治子・藪中征代(2015).幼児期の絵本の読み聞かせが就学後の読書に及
ぼす影響.摂南大学教育学研究, 11, 33-46.
*9  Murase, T(2014). Japanese mothers’ utterances about agents and actions during joint picture-book reading. Frontiers in Psychology, 5: 357, 1-12.
*10  Chen, E. Y.-J., & Tung, E. Y.-L(2023). Parents’ psychological well-being and story reading: A six year cross-lagged analysis. Journal of Child and Family Studies, 32,1382-1397.

『科学的根拠(エビデンス)が教える 子どもの「すごい読書」』日経BP

猪原敬介
子どもの学力や共感力の向上、笑顔が増える…“読み聞かせ”の驚くべきプラス効果と逆効果になってしまうやり方
『科学的根拠(エビデンス)が教える子どもの「すごい読書」』日経BP
2026/1/81980円(税込)336ページISBN: 978-4296002450本を味方にすると、子どもの人生は豊かになる!! 本が好きな子にも、ちょっと苦手な子にも。 本を読めば、将来、直面する「壁」や「迷い」を乗り越えやすくなる。 本の効果は、「頭がよくなる」だけではありません。 探究心・知的好奇心・思いやり・友達や周囲の大人とのコミュニケーション力…読書の効果を無理なくいいとこ取りするための、科学的根拠が教える読書法‼ ◎本は「3冊同時に買う」と、読書家への扉が開きやすくなる ◎まずは「表紙が見えるように家に飾り、飾る本を定期的に替える」ことから ◎飛ばし読み・途中でやめても問題なし!  「ちゃんと読ませる」よりも「本について一緒に話す」時間をとる ◎1冊プレゼントするなら「この子には少し簡単かな」という本に ◎読むのが遅い・集中力がない・自分で本を選べない……を解決するには? ◎なぜ「1日30分まで」の読書が、もっとも「能力を伸ばす」のか 3歳から15歳までの考える力・学力・共感力・生きる力を伸ばす読書術!!
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