「一般論で申し上げれば犯罪です」警察庁Xが異例の警告…SNSで可視化される学校いじめと大人たちの責任
「一般論で申し上げれば犯罪です」警察庁Xが異例の警告…SNSで可視化される学校いじめと大人たちの責任

日本全国で小中高生をはじめとした未成年のいじめや暴力行為を撮影した動画がSNSで拡散される事案が相次いでいる。社会全体に大きな衝撃を与え、1月22日には警察庁が異例の警告をXに投稿し、衆院選前の政治家が「いじめ対策を選挙公約に掲げます」と発言する事態となっている。

 

昨年末から今年にかけて、複数の学校で生徒同士の暴力を捉えた映像がXやTikTokなどに投稿されると、ネット上での批判、当局の調査、教育現場で緊急対応が進んでいる。また、“投稿される前提”での対策議論や、法・行政の対応も加速している。

「これは犯罪です」──警察庁公式Xでの異例の言及

1月22日、警察庁が公式Xアカウントに異例の投稿を行なった。

「現在、SNS上で、児童による暴力行為等の動画が投稿・拡散される事案が相次いでいますが、一般論で申し上げれば、他人に対する暴力行為や、これに加担して幇助する行為は犯罪です。 #暴行 #いじめ #警察」(警察庁公式Xより)

この投稿は2500万インプレッションを超えるほど大きな反響を呼んでいる。

特に、投稿内にある「一般論で申し上げれば」という前置きがネットユーザーの間で議論を呼び、逆に警察の強い危機感の表明として受け止められている。日頃から学校内のトラブルは教育委員会や学校で処理されがちだが、暴行・傷害行為は刑法に抵触する可能性が高く、警察が公式な見解として明言したこと自体が注目に値する。

2026年1月初旬、栃木県内の高校のトイレ内で生徒が別の生徒に暴行する短い映像がSNSで拡散され、県教育委員会や県警が調査に乗り出した。映像では殴打・蹴りつけられる被害者の様子が映され、傍観者の存在も確認された。これに対し、ネット上では、

「こんな暴力が日常化しているのか」
「加害者だけでなく、傍観者の処罰も必要だ」
「個人情報の晒し合いは別の人権侵害だ」

といった意見が飛び交い、暴力そのものへの非難や拡散方法への批判の声であふれた。

SNS上では動画投稿に加え、加害者とされる生徒の顔写真・氏名・学校名まで特定しようとする動きもあり、二次被害への懸念が高まっている。一部報道でも、「被害者や関係者のプライバシー保護が課題」と指摘されている。

SNS上の反応は単純な一元論ではない。

「これは絶対に許されない」「被害者の安全を第一に考えるべき」といった共感や悲痛な声が広がる一方で、同じ映像を見たユーザーが過去のいじめ事件を持ち出して「根深い構造的問題だ」と指摘する声もある。

また、「映像が拡散されること自体が被害者や加害者双方にとって二次被害になりうる」という意見も強い。特に加害者とされる児童の個人情報を晒す行為は、名誉毀損や人権侵害につながる可能性があるという指摘が専門家からも出ている。

国と自治体の対策:緊急会議と学校現場の指導強化

こうした状況を受けて、政府は緊急の対策会議を開催した。こども家庭庁、文部科学省、総務省、警察庁など6省庁が連携し、その対応について3つの点で発表している。

① 各学校での暴力・いじめの再確認

三学期中にアンケート調査や面談を実施し、見過ごされている暴力行為の有無を確認するよう教育委員会に指導。

② SNS事業者との連携強化

暴力動画や悪質な投稿については、利用規約に基づいて削除要請・迅速な対応を求める方針が打ち出された。

③ 被害者支援・相談窓口の周知

暴力・いじめを受けた児童が相談しやすい環境づくりとして、複数の相談窓口を学校や地域で周知する取り組みが進められている。

これらの措置は単なる「炎上対策」ではなく、教育現場全体の安全性向上を目指すものとして位置づけられている。

では、なぜ「いじめ」は可視化されるのか。SNSでのいじめ可視化は、単なる「情報技術の進歩」によるものではない。その背景には複合的な要因が存在する。

多くのいじめはこれまで学校内で処理され、外部には表に出にくかった。

しかし、スマホの普及により、誰でも簡単に撮影・投稿できるようになった。

さらに映像やコメントが瞬時に広範囲に拡散されることで、社会の関心が高まる一方で、誤情報や過激な批判が加熱しやすい構造もある。法的リスクを知らないユーザーが投稿を繰り返すことも、問題を深刻化させる一因となっている。

自治体レベルでも、いじめ対策に関する議論や取り組みが進む。学校内での信頼関係づくり、相談体制の強化、教職員への研修が重要とされている。

具体例として、「生徒・保護者向けの情報モラル教育」「いじめ発覚時の迅速な対応体制」「学校内でのカウンセリング強化」などが検討されている。

可視化された問題と社会の責任

社会学者や教育専門家は共通して、「いじめをなくすには学校だけでなく地域・家庭・社会全体での支援が必要」と指摘する。また、SNSの悪用を防ぐためにプラットフォーム側との協力やAIによる危険投稿の検出技術の活用も期待されている。

人々の目が向いているのは、単なる「映像の削除」ではなく、再発防止につながる本質的な対策だ。SNSの可視性が問題を露呈させる一方で、それが社会全体を動かす契機にもなっている。

SNSに投稿されるいじめ・暴力動画は、可視化された学校内の問題そのものだ。それは単なる「炎上ネタ」ではなく、子どもたちの安全と成長を守る社会全体の課題でもある。



行政、教育現場、保護者、そしてユーザー一人ひとりが、表面的な感情に流されることなく、根本的な原因に向き合う必要がある。

子どもたちが安心して学び、生活できる社会には、互いの尊厳を守る文化と適切な支援・監視の仕組みが求められている。

〇こどもの人権110番℡0120・007・110(全国共通・無料)(平日朝8時30分~夕方5時15分まで)
〇こころの健康相談統一ダイヤル ℡0570・064・556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)

取材・文/集英社オンライン編集部

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