企業にとってSNSにおけるプロモーションは当たり前になっている。企業のSNSアカウントによっては単なる広報マシーンではなく、どこか人格を持ったようなものある。
*本稿は『タイトルから考えよう』(星海社新書)の一部を抜粋、再構成したものです。
「バズ」と「炎上」の違いとは何なのでしょうか
読者の感情を揺さぶるコンテンツはクリック後のアクションを促し、継続的な関係性を生み出します。しかし、感情の揺さぶりは、時として意図せぬ形で大きな波紋を呼びます。それが、多くのクリエイターが恐れる「炎上」です。
この「バズ」と「炎上」の違いとは何なのでしょうか。
実は、学術的な研究においては、バズと炎上の明確な定義がなされていないことがほとんどです。
英国リバプール大学マネジメントスクールのアナトリ・コリセフ教授らによる研究(The spillover effects of positive and negative buzz on brand attitudes, 2023)や現米国・エモリー大学のレネー・ダイ准教授が2000年当時に発表した研究(The Buzz on Buzz)などでは、バズを「口コミによるブランドの興奮」と広義に捉え、その中にはネガティブな口コミも含まれると説明しています。
彼らの研究では、このネガティブなバズが競合ブランドにまで影響を及ぼす可能性も指摘されていますが、「批判殺到」の状態をバズから明確に切り分ける、理論的・経験的な定義は提示されていません。
炎上を回避する「実務的な」感性を磨く
しかし、現場でコンテンツを生み出し、その結果に責任を持つ私たちにとって、この曖昧さは通用しません。ポジティブな議論が生まれる「バズ」と、ブランドを毀損する「炎上」は、天と地ほどの違いがあるからです。
だからこそ、私たちが実践すべきは、この両者を明確に区別し、意図的にバズを生み出し、炎上を回避する「実務的な」感性を磨くことです。
そんな中で私としては可能な限りバズと炎上の定義をつける作業をしたいと思っています。結論から言えば、バズは「賛否両論」の状態、炎上は「批判殺到」の状態です。
炎上にはいくつかの段階がある
バズが生まれるとき、そこには賛成派と反対派、両者の意見が活発に飛び交う、バランスの取れた議論が存在します。特に、賛否の比率が5:5に近ければ近いほど、議論は過熱し、コンテンツの拡散力はさらに強まります。
これは、人々が「自分の意見はどちらだろう?」「なぜこの人はこう考えるのだろう?」と、能動的に思考し、議論に参加しようとするからです。
一方、炎上はそうではありません。炎上は、特定のコンテンツに対して、大多数の人々から否定的な意見や批判が殺到している状態です。そこには議論の余地がなく、ただひたすらに叩かれるという、一方的な構図が生まれます。
では、なぜ炎上は起きるのでしょうか? 炎上にはいくつかの段階がありますが、まず最低限避けなければならないのは、社会的・倫理的に間違っているもの、あるいは法的に違反しているものです。
例えば、差別的な発言や、他者のプライバシーを侵害する行為、虚偽の情報を発信するといったケースです。これらは問答無用で批判にさらされ、炎上するのは当然のことです。
『持たざる者』や『マジョリティ』にとって不快な情報
しかし、この説明だと、わかったような、わからないような、モヤモヤした気分にならないでしょうか。私は、「炎上は、なんらかの『持たざる者』や『マジョリティ』にとって不快な情報が流れると起きる」と考えています。
例えば、高年収の人が「節約術」と称して、低年収の人々にとっては当たり前の生活をひけらかすような内容を発信すれば、それはたちまち炎上します。独身者が子育ての苦労について内実を知らずに語ったり、男性が女性のキャリア選択について断定的に語ったりするのも、同様です。
これは、情報を受け取る側が「この人は私の苦労をわかっていない!」「この発言は、私の立場を軽視している!」と感じることで、強い不快感と怒りを呼び起こすからです。
これは、マスコミが報じるニュースにも同じことが言えます。例えば、テレビ番組で有名人が高級ブランド品を買い漁る様子を放送すれば、多くの視聴者は「羨ましい」という感情を抱くかもしれません。
しかし、もしそれが、視聴者の多くが経済的な不安を抱えているような状況下であれば、その「羨ましい」という感情は、瞬時に「不公平だ」「なぜこんな時に」という怒りの感情へと反転するでしょう。
「タブー」の境界線
これが、多くの人が抱える「モヤモヤ」を刺激し、炎上へと発展するのです。
そこで、ここ数年で起きた具体的な炎上事例を振り返ってみましょう。今から挙げる事例は、世の中の「モヤモヤ」や「持たざる者」の感情を、いかに安易に刺激してしまったかを示しています。
▼コンビニ弁当の「上げ底」問題
ある大手コンビニチェーンの商品に関して、「パッケージの底に隠された空間があり、見た目より内容量が少ない」という疑惑がSNSで拡散されました。これに対し、企業のトップが「そんなアコギなことはできない」と反論したところ、さらに多くの消費者から「いや、それは虚偽だ」「消費者を馬鹿にしている」といった批判が殺到し、炎上しました。
このケースは、消費者が「企業に騙されているのではないか」という不信感、つまり「持たざる者」である消費者と「持つ者」である企業との間に存在する潜在的な不満を刺激してしまった典型例です。
▼有名フィットネスクラブの広告
あるフィットネスクラブの広告が、「お手伝い」という名目でジムの清掃や業務を会員に募り、その報酬が通販サイトのギフト券だったため、「労働に対する報酬が不適切だ」と批判を浴びました。
これは、低賃金労働や経済的搾取に対する社会的な不満が背景にあり、「お手伝い」という言葉の裏に隠された「安く労働力を確保したい」という企業の思惑が透けて見え、多くの人々の怒りを買ったのです。
品川駅ディストピア事件「今日の仕事は、楽しみですか」
▼品川駅のデジタルサイネージ広告
「今日の仕事は、楽しみですか。」というメッセージを掲げたデジタル広告が、SNSで大喜利化し、炎上した事例です。特に月曜日の朝に通勤するビジネスパーソンからは、「心がえぐられる」「ディストピアのようだ」といった声が相次ぎました。
この広告は、人々の仕事に対するストレスや、満たされない現状という「持たざる者」の感情を意図せず刺激してしまった結果、炎上へと発展したのです。広告主の意図は「仕事を楽しむというポジティブなメッセージ」だったかもしれませんが、受け取る側の状況や感情を想像できなかった典型的な失敗例です。
これらの事例からわかるように、炎上は特定の誰かを攻撃する意図がなくても、受け取る側の感情を逆撫でしてしまうことで、一瞬にして起きるという恐ろしさがあります。
コンプレックスや不満を、安易に刺激しない
つまり、コンテンツ制作は、もはや「伝えたいこと」を伝えるだけでなく、「伝えたことが、どう受け止められるか」までを徹底的に想像する力が問われているのです。
相手の立場に立つ「感性」を磨く
炎上防止策の核心は、「読者の抱えるコンプレックスや不満を、安易に刺激しないこと」です。もし、あなたがコンテンツを作るときは、受け手のどんな感情に触れる可能性があるのか、その「感性」を想像する力を養うことが不可欠です。
言葉が持つ「光と影」の両面を理解し、読者の感情をデザインする力を養いましょう。その具体的な方法は第5章で書いていきます。
バズと炎上は紙一重です。しかし、その違いを理解し、読者の心に寄り添う「感性」を磨くことで、炎上を避け、真に価値のあるバズを生み出すことができるのです。
文/鈴木俊之
タイトルから考えよう
鈴木 俊之
「いい記事を書いたのに、誰も読んでくれない」「うちのプレスリリースはなぜ無視されるのか」。その原因は、あなたの文章力ではなく、入口の設計ミスにある。AIが書く「無難で正確な文章」が溢れる今、読者は「読むのが面倒だ」と感じている。あなたのコンテンツが生き残るには、読者の心拍数を一瞬で変える「衝動」を仕掛けるしかない。元『週刊SPA!』の名物編集者であり、ヤフーニュースで数百万PVを叩き出した著者が、AI時代に必須の哲学を初公開。「納品主義」を捨て、読者の「感情のジェットコースター」を設計する具体的な思考法を「エアポート投稿おじさん」生みの親が伝授する。

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