元男闘呼組の成田昭次の自叙伝、『人生はとんとん―成田昭次自叙伝―』が話題を呼んでいる。幼少期から現在までの半生をつぶさに振り返り、芸能界での活動、突然の逮捕、そして消息不明とされた活動休止期間について自ら赤裸々に明かしたこの1冊。
「別人のように丸くなった」、現在の成田昭次
「波乱万丈であったことは間違いありません。でも、それ以上に人に恵まれてきた人生であることを実感していて、いつでも必ず応援してくれる人がそばにいてくれました。おかげで諦めずに今日までやり続けられたことを、僕自身、とても誇りに思っています」
発売記念イベント前に設けられた取材対応の場で、記者から飛び出した「自分の人生を振り返ると?」という質問に対し、成田昭次は柔らかい口調でそう語った。
愛知県名古屋市で育ち、中学3年生のときに縁あって芸能界の門を叩いた成田は、1988年8月に男闘呼組のボーカル&ギター担当としてレコードデビューを果たした。デビューシングル『DAYBREAK』はオリコンのウィークリーチャートで1位を獲得し、実に69万枚を売り上げる大ヒットを記録している。
同時期に活躍した光GENJIや忍者らといったアイドルグループと比べ、ロックバンドとしてのユニット構成が新鮮で、高橋和也、岡本健一、前田耕陽ら個性的なメンバーの中にあっても、成田の存在感は出色だった。
いかにも不良然としたキャラクターに、ハスキーな歌声。メディアに対する尊大な態度が時に批判を浴びることもあったが、「あの頃は敬語を使わなかったのではなく、そもそも敬語を知らなかったんです」と本人は苦笑交じりに振り返る。
現在の成田は、精悍な顔立ちに当時の匂いを残しているものの、別人のように穏やかだ。現在、57歳。これも人一倍の波乱に塗れた年輪によるものだろう。
「たしかに、別人のように丸くなったとよく言われます。(男闘呼組の)メンバーとメールでやり取りをしているときも、昔は絶対に使わなかった敬語を使うものだから、『本当にあの昭次と同一人物なのか!?』と疑われるくらいです(笑)」
男闘呼組活動休止、逮捕、そして再生への道のり
デビューから瞬く間にスターダムにのし上がった男闘呼組。しかし自叙伝『人生はとんとん―成田昭次自叙伝―』に綴られる当時の活動の裏側には、あの時代ゆえの苦悩が色濃く見て取れる。
80年代後半は第二次バンドブームが起きた年であり、とりわけ首都圏では『三宅裕司のいかすバンド天国』が人気を博していた。さらにTHE BLUE HEARTSやJUN SKY WALKER(S)など、名だたるバンドが登場したことが、ブームをいっそう加熱させた。
アイドル事務所に所属する男闘呼組には、これが逆風となる。「本物ではない」、「偽物のバンドだ」などといわれなき批判を浴び、音楽と真摯に向き合っているからこその辛苦に苛まれた。
それでも「俺たちは“男が闘いを呼ぶグループ”だ」と、逆境を力に変えて前を向き続けた当時の描写には、字面以上の悩みと覚悟、そして決意が窺える。
1993年、事務所が高橋和也を解雇したことを機に男闘呼組の活動がストップすると、自叙伝としての展開もいっそう加速する。それは成田の人生の波乱にブーストがかかったことと同義である。
ソロでの活動。事務所の退所。離婚。
表舞台を去ってからの空白期間はある意味、『人生はとんとん―成田昭次自叙伝―』の最大の見どころと言えるだろう。41歳にして大工として働き始め、その後、材木屋や工場、飲食店での仕事に勤しむ日々は、いわゆる「職を転々」とした虚無な時間ではない。
成田昭次という元芸能人が、ひとりの人間として大きく成長するために必要な糧を得る時間であった様子が、行間からもありありと窺える。
この期間は世間的に、成田が消息不明とされていた時期であるが、本書を一読すれば、これがいかに重要なターニングポイントであったかが理解できるはずだ。記者会見中、本人が再三に渡って周囲への感謝を口にしたのも、まさにこの時間があればこそ、だろう。
ファン歓喜。「自分ではどうにもならない夢が叶った」
1月24日、代官山蔦屋書店では、成田がファンに直接、同書を手渡しするイベントが催された。かつて男闘呼組に熱狂し、2022年の期間限定での活動再開に歓喜し、成田の消息がしれなかった期間もずっと待ち続けたファンたちが、イベント開始前から長蛇の列をなした。
横浜から足を運んだというファンのひとりが、目をうるませながら言う。
「昭ちゃん(成田の愛称)の活動再開は、私たちファンがどんなに切望しても、叶えようのない夢だと思っていました。それがこうしてまた元気な姿を見せてくれるのですから、どうにもならないはずだった夢が叶った気持ちです。
なお、『人生はとんとん―成田昭次自叙伝―』の制作プロセスにおいては、こんな裏話がある。男闘呼組の他のメンバーや成田の母の声まで採録して仕上がった第一稿を読んで、当の成田がダメ出しをしたというのである。
「もっと、“負”の部分をしっかり入れたいです」
成田の半生には、離婚や逮捕などおよそスターのイメージにそぐわないファクトが複数ある。ミュージシャンとしてのイメージを大切にするなら、そうした負の部分をオブラートに包んで表現したり、あるいはまったく触れずにやり過ごすこともできたはずだ。
しかし成田自身が表現したかったのは、そうしたお仕着せの自叙伝ではなく、あくまでこれまでの経験から得たものを、余すことなくすべてぶつけた渾身の一作なのだ。
「現時点での成田昭次のすべてを出し切りました。ここに書いたことに、嘘偽りはありません。僕自身、これからもまだまだ成長していくつもりですし、そのためのバイブルのような一冊が実現できたことは、凄く恵まれたことだと思います。この本に恥じないよう、これからの人生を全うしていきたいですね」
発売後、すぐに大量の重版が決定した『人生はとんとん―成田昭次自叙伝―』。その反響に「信じられない」とはにかむ成田だが、これも人生は何度でもチャレンジできるものであるということを身を以て示し、そこに多くのファンが共感したからこそだろう。
往年のファンはもちろん、ミドルエイジ・クライシスに直面する中年層にとっても、胸に迫る一冊になりそうだ。
文/友清 哲 写真/村上宗一郎
人生はとんとん ―成田昭次自叙伝―
成田 昭次

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