「いくら掃除してもクサイ」「2万円でも高くない!」タクシー運転手が悲鳴…年間2500件の車内嘔吐に各社が「賠償金請求」表明…泥酔乗客が嘔吐する時の危険サイン
「いくら掃除してもクサイ」「2万円でも高くない!」タクシー運転手が悲鳴…年間2500件の車内嘔吐に各社が「賠償金請求」表明…泥酔乗客が嘔吐する時の危険サイン

ここ最近、大手タクシー会社が「車内で乗客が嘔吐した場合に損害金を請求する」旨を発表している。これまでタクシーの乗客が車内で嘔吐した場合、損害を賠償する規定が定められていなかったため、会社と乗務員が泣き寝入りするケースがほとんどだった。

各タクシー会社や乗務員にタクシーの嘔吐問題について話を聞いた。

年間2500件ほど起きる嘔吐による損害

いち早く「乗客が嘔吐した場合の損害金請求」に関して告知したのは老舗タクシー会社・日の丸交通グループだった。2024年9月1日に自社のホームページ上で「嘔吐等による営業損害の請求について」というリリースを公表し、車両のクリーニング代及び休車損害に関する請求としてクリーニング代1万2500円、休車損害として7500円の計2万円の賠償金を申し受けると打ち出した。

日の丸に次いで日本交通グループは2025年11月27日に、帝都グループは2026年 1月7日に、国際自動車(km)グループは 1月16日に同様の内容と金額を公表した。この金額設定はタクシー関係者に聞くとかなり印象が変わる。

「まず吐瀉状態を拭き取ることができれば、営業再開できるくらいの軽度なものでしたら、どの会社も請求はしないと思います。今回はシートやフロアマットなどに大量の吐瀉物が広がり、営業が継続できないと乗務員が判断した場合に請求させていただくものです。

吐瀉物はシートから内部に浸透することがほとんどで、専用の消臭剤をかけても3日間ほど臭いが取れずにその車が使えないこともあります。さらにシートの下の機械部分にまで浸透した場合は修理が必要になることさえあるのです。乗務員の勤務時間のロスが生じますし、なにより休車期間が長ければその分の損害も増えますから、決して高い請求額ではありません」

吐瀉物の掃除は乗務員が行なえる場合は乗務員が行ない、自社内で専用のクリーニングにかける際は乗務員が1万円ほどを出費して行なうのだという。また関係者によれば「全国の営業所で年間2500件ほど嘔吐による損害が生じている」そうで、当然の措置とも言えるのかもしれない。国際自動車株式会社(km)の広報担当者は言う。

「当社も一般乗用旅客自動車運送事業標準運送約款第10条に基づき、今年1月16日に車内汚損時による請求の旨のリリースを出させていただきました。

全車に車内清掃の簡易キットを備えておりますので、それで拭き取って営業再開できるようでしたらもちろん請求は致しません。

しかし営業所に戻らないといけないくらいの重度の場合はご請求させていただくというものです。また、吐瀉物により車内設備の修膳が必要となった際は別途ご請求申し上げる場合もあります」

「だいたい、しゃっくりし始めると危ないんですよ」

しかし相手は嘔吐するほどの酩酊状態のケースがほとんどだ。請求に素直に応じない場合はどうするのか。

「基本的に降車時にご請求させていただきますが、もしお客様のお手持ちがないなどでしたら立て替えさせていただき、後日請求などの対処になると思います。トラブルに発展しそうな場合は警察に介入していただくなど、その場の乗務員の判断になります」(km広報担当者)

公表以降、乗務員や消費者からの反響はないか聞くと「今のところありません」とのことだった。

では、今回のリリースを現役タクシー運転手らはどう見ているのか。都内の繁華街を中心に走る女性ドライバーに話を聞いた。

「営業前に毎日朝礼があるのですが、そこで『嘔吐等による営業損害の請求』に関する話は聞きましたが、2万円の内訳の中に乗務員への補償は含まれてないみたいでがっかりです。営業開始して5、6人実乗して、21時頃に乗せたお客さんに吐かれたこともありました。すぐに営業所に戻って掃除しても臭いが取れなかったので別の車で営業しましたけど、その日の売上は過去最低でした。正直、嘔吐するお客様を乗せた時はハズレくじを引いたような感覚です」

だが、明らかに泥酔している客でも乗せないわけにはいかないのだという。

「乗車拒否になってしまいますからね。

乗車後にお客様が『気持ち悪い』と言ってたとしても、口では『大丈夫ですかあ』とか言いながらスピードも控えめにブレーキもいつも以上にゆっくりかけて『どうか吐かないで!』と祈りながら運転してますから」

この女性ドライバーは、長年の経験から泥酔客が吐きそうなタイミングを察知できるようになったという。

「だいたい、しゃっくりし始めると危ないんですよ。以前、最初は寝てたのに急にしゃっくりし始めて、代金を支払って降車した途端、道路にグゥエーッと大量に嘔吐している方がいました。危なかったです…。だからしゃっくりをし始めた人には必ずお声がけして、『吐きそう』と言われた際はお客様に了承いただき停車します。いきなり車内で吐くのだけは本当にやめてほしいです」

汚されたシートを水で洗ったら機械が壊れて廃車になったケースも…

ただ、どうしても避けられないこともある。それが、寝ゲロだ。別のタクシー運転手は言う。

「女性客でイビキをかいて寝ていると思ったら、ゴボッゴボボ…って吐かれて。お客様もそれで起きて『すみません』って泣きそうな顔してましたけど、泣きたいのはこっちですよ。なんとか自宅まで届けましたけどフロアマットに吐瀉物が飛び散り、その後の営業所まで帰る間も臭いがすごくて、その日はその車は使えませんでした」

また、別の男性運転手によれば「まだ新人だった頃に車内で嘔吐されて営業所で車を洗ったら機械部分まで水が浸透してしまい、その車は廃車になってしまった」こともあるという。

「シートにはシーツをつけておらず、シートベルト部分とか穴あきシート部分にも吐瀉物が浸透してしまったので水をぶっかけてしまったんです。

レザーだから大丈夫かなと思って。そしたらその水がシートの下の機械にまで浸透してしまい、機械が壊れてしまって。自分が会社から請求されることはなかったですが、かなり気まずかったです」

各社が損害請求を表明する中で、タクシー大手の大和自動車交通はまだこの件に関してリリースを出していない。方針について聞くと「現時点で嘔吐等による営業損害の請求について運送約款で決めていません。ただ今後もないわけではありません。もしかしたら取り組む可能性もございます」と説明した。

タクシー会社に多大な損害を生じる車内嘔吐。今後、損害の請求における新たなトラブルが起きないことを願いたい。

取材・文/河合桃子 集英社オンライン編集部ニュース班

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