「見たことのない次元」東京のマンション価格はまだ上がるのか? これから起こり得る2つの帰結
「見たことのない次元」東京のマンション価格はまだ上がるのか? これから起こり得る2つの帰結

東京のマンション相場が、いよいよ「心理的な節目」を超えた。国内最大級の不動産データバンク、東京カンテイが発表した2025年の東京23区・中古マンションの平均希望売り出し価格(70㎡換算)は 1億393万円。

集計データがある1997年以降で初めて、平均が1億円の大台に乗ったという。

さらに不動産経済研究所によれば、2025年の東京23区の新築マンション平均価格は 前年比21.8%上昇の1億3613万円。こちらも1億円超は3年連続で、過去最高を更新した。

マンション価格高騰を支える「3つの下支え」

「30年間不動産業界にいますが、東京のマンションの高騰は今までに見たことのない次元に突入しました」

これは都内で不動産業を営む50代男性の声だ。かつて「一部の富裕層の世界」だった億ションが、いまや“相場の中心”に入りつつある。

では、この高騰はどこから来て、どこへ向かうのか。今後の価格は「まだ上がる」のか、それとも「上がり止まる」のか。

まず、「なぜここまで高騰したのか」については、新築高→中古高の連鎖が挙げられる。

今回のポイントは、新築と中古が“同時に”跳ね上がっていることだ。新築は、建設コスト上昇の影響を最も受けやすい。資材高に加え、残業規制や人手不足による人件費増が効き、結果として分譲価格へ転嫁されやすい。 しかも都心部では用地取得が難しく、供給戸数そのものが限られる。希少性が価格を押し上げる構図だ。

そして新築の“高値基準”ができると、中古も引き上げられる。買い手は「新築は高すぎるから中古へ」と流れる一方、売り手側は「新築がこの値段なら、うちもこのくらいで出せる」と強気になる。

実際、東京カンテイの月次データでも、2025年12月の東京23区中古マンション(70㎡換算)は 1億1960万円 と上昇が続いている。 需給の綱引きは、まだ“高値圏で均衡”しているといえる。

では、2026年以降も東京23区のマンション高騰は続くのか。

これからも価格は上がる派のシナリオには、価格を支える「3つの下支え」があるという。

・建設コストの高止まり
新築価格が高いままなら、中古相場の“天井”も押し上げられやすい。コストが目に見えて下がらない限り、デベロッパーは価格を落としにくい。

・都心プレミアムの固定化
リモートワークが定着しても、「駅近」「都心アクセス」「資産性」の評価は落ちにくい。特に再開発エリアやインフラ更新が進むエリアは、限られた立地にマネーが集まりやすい。

・買い手の多層化
実需(共働き世帯・住み替え)に加え、相続対策やインフレ耐性を狙う資産保全需要がある。金利が急騰しない限り、「現金+ローン」の組み合わせで買える層は一定数残る、という見方だ。

このシナリオでは、価格は“急騰”というより“ジワ上げ”になりやすい。都心部は横ばいから微増、外周部は選別色が強まるというのが現実的だ。

上がり止まる派のカギは「供給」「金利」「家計の限界」

一方、上昇が止まる(あるいは調整する)可能性も十分ある。そのシナリオには「供給」「金利」「家計の限界」という3つのポイントが挙がる。

・供給の重心が動く
不動産経済研究所は、2026年は都心の大規模物件供給が一服し、郊外の新築が増えることで「価格上昇を抑える動きになる」とみる。 供給エリアが変われば、平均価格は“統計的に”下がりやすい。平均が下がる=都心が値下がり、とは限らないが、過熱感を冷ます効果はある。

・金利の上向きリスク
住宅ローン金利が上がれば、購入可能額は直撃される。特に「借入額で勝負する」実需層は金利上昇に弱い。買い控えが広がれば、成約が鈍り、売り出し価格は維持できても“値下げ交渉が通りやすい”市場に変わる。

・家計の天井=需要の先細り
平均1億円は、多くの世帯にとって現実的な購買ラインを超える。賃金上昇が追いつかなければ購入者は限られ、売れ行きが鈍る。実際、首都圏の新築市場では契約率が70%を下回る局面も続いており、価格と売れ行きのせめぎ合いが表面化しやすい。

このシナリオで起きやすいのは、値崩れというより「高値での足踏み」だ。売り急ぎの少ない都心は下がりにくい一方、築年数が古い物件、駅から距離のある物件、管理状態が弱い物件などは、価格調整が先に起きやすい。

なお、東京カンテイの「平均希望売り出し価格」は、実際の成約価格とズレが出ることがある。売り出しが強気でも、成約までの期間が延びたり、価格改定(値下げ)が増えたりすれば、市場の温度は下がっているサインだ。

逆に、成約件数が落ちないまま価格だけが上がるなら、需給逼迫は続いているとみてよい。

東京の相場は「二層化」し、帰結は2つに分かれる

結局のところ、今後のマンション価格は一本調子ではなく、エリアと物件で二層化しながら、次の2つの帰結に向かう可能性が高い。

・上昇が続く:都心・駅近・再開発・高品質管理の物件は、供給制約と資産保全需要で底堅く、ゆるやかに上値を試す。

・上がり止まる:平均値は郊外供給の増加や金利上昇、家計の限界にぶつかり、伸びが鈍化。市場は“買い手優位”に近づく。

「平均(売り出し価格)1億円」というニュースは衝撃的だが、次に起きるのは「価格が下がるか」より、どの物件が値段を維持し、どの物件が置いていかれるかという選別だ。冒頭の不動産業界のベテラン男性がいう。

「不動産業界の誰もが経験したことのない次元にきているので、この先の予測を正確にすることは不可能です。

ただし、すべての物件が等しく高騰し続けるということは考えにくい。絶対下がることがないと言われてる港区、中央区、千代田区など主要区でもなかなか売れない中古の億ションは存在するので、物件ごとの状況を精査して見ていくことが大事だと思います」

マンション価格高騰の時代は終わらないかもしれない。しかし、誰にとっても同じように上がるという時代は、すでに終わり始めている。

取材・文/集英社オンライン編集部

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