〈森永卓郎さんが見通した未来〉「米国べったりの外交姿勢は、日本社会にとっても、日本経済にとっても見直していかなければならない時代が来ている」2010年、普天間飛行場の移設問題に切り込む
〈森永卓郎さんが見通した未来〉「米国べったりの外交姿勢は、日本社会にとっても、日本経済にとっても見直していかなければならない時代が来ている」2010年、普天間飛行場の移設問題に切り込む

がん闘病の末、2025年1月に亡くなった経済アナリストの森永卓郎さん。「モリタク」の愛称で親しまれた彼は、生前執筆した連載コラムで普天間飛行場移設問題に切り込んでいた。

そこには16年前から何ひとつ変わらないアメリカに対する日本政府の弱腰外交を批判するモリタク節が垣間見える。

2023年までの18年にわたってウェブ週刊誌「マガジン9」で連載したコラムより38タイトルを選んだ書籍『森永卓郎の戦争と平和講座』より一部を抜粋・再構成して紹介する。

この原稿は2010年3月3日に執筆されたものです。

日米安保体制から考え直そう

普天間飛行場の移設問題に関して、候補地に関する政府案を5月までにとりまとめる必要があることから、政府与党は水面下で移転先を模索している。

しかし、その候補地は米国ではなく、どうやら国内になりそうだ。社民党までが、国内移転の可能性を示唆しているからだ。

報道によると、社民党は、普天間飛行場の移設先として、グアムが困難な場合には、沖縄県外の自衛隊基地や米軍基地に分散移転することを提案する方針を固めたとされる。

具体的な移転先についても、馬毛島(鹿児島県)、東富士演習場(静岡県)、米軍岩国基地(山口県)、米軍横田基地(東京都)、苫小牧東部地区(北海道)、相浦駐屯地(長崎県)、鹿屋基地(鹿児島県)、大村基地(長崎県)、佐賀空港(佐賀県)、築城基地(福岡県)の10か所が候補になっていると伝えられている。

もちろん、最終的な国外移転までの暫定施設という位置づけだが、暫定が何十年も続くというのは、よくある話だ。

そもそも、連立政権を組む時の合意文書には、「沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」と明記されている。

しかし、いま連立政権内で行われているのは、移転先探しであって、米軍再編や在日米軍基地のあり方を見直していない。

1月16日に、私は辺野古を訪ねた。おそらく10年ぶりだが、辺野古はあまり変わっていなかった。

ただ、キャンプ・シュワブとの境界の海岸には、海中に至るまで鉄条網が張られ、そこには色とりどりの布が巻きつけられ、そして新基地建設反対のプラカードがたくさん掲げられていた。

海岸では、波の音と鳥のさえずりしか聞こえない。本当に静かな空間だ。ところが、その静けさを、突然マシンガンの銃声が打ち砕いた。キャンプ・シュワブで実弾演習が始まったのだ。普天間の住民が、米軍基地から大変な被害を受けていることは、間違いのない事実だ。

しかし、辺野古の住民も、すでに十分大きな被害を受けている。普天間基地の辺野古への移転は、さらなる負担を辺野古に押しつけるということだ。

実は、辺野古に作られようとしているのは、普天間飛行場の代替施設ではない。オスプレイと呼ばれる垂直離着陸ができる航空機の滑走路を含む新たな巨大基地だ。

しかもオスプレイは、開発段階で何度も墜落事故を起こしている不安定でリスクの高い航空機だ。そうした航空機を国内で飛ばせば、いつか必ず事故が起き、住民が巻き込まれるだろう。

いま本当に考えなければならないのは、普天間飛行場の移転先をどこにするかということではなく、日本の平和を守るために、世界とどのように付き合っていけばよいのかということだ。

確かにアメリカへの服従をやめたら、何をされるか分からないという主張に根拠がないわけではない。アメリカで、自動車のリコールが数え切れないほど行われているのに、トヨタだけが議会の公聴会に呼ばれて詰問されたのも、政権交代で日本がアメリカの言うことを素直に聞かなくなったということが背景にあるのかもしれない。

しかし、そうした問題を含めても、果たして日本が引き続きアメリカに全面服従することなしには生きていけないのか、他に外交上の選択肢がないのかということを、国民全体で議論していかなければならないと思う。

少なくとも、私は米国べったりの外交姿勢は、日本社会にとっても、日本経済にとっても見直していかなければならない時代が来ているのだと思う。

日米同盟を守るためには、どこかに普天間の代替施設を作らないといけないと、多くの有識者が語っている。そのために政府はどこに代替施設を作るかで右往左往している。

だが、そもそも東西冷戦が終わったいま、引き続き日米同盟が必要なのかという議論はほとんどなされていない。そもそも、もし日米同盟が役割を終えたということになれば、代替施設そのものが必要なくなるのだ。

せっかく政権交代をしたのだから、駐留米軍が、なぜ日本にいて、彼らが日本のために一体何をしてくれるのかというところに立ち返って、冷静で建設的な議論を国民全体ですべきではないだろうか。

森永卓郎の戦争と平和講座

著者:森永 卓郎 解説:古賀 茂明 編者:マガジン9編集部
〈森永卓郎さんが見通した未来〉「米国べったりの外交姿勢は、日本社会にとっても、日本経済にとっても見直していかなければならない時代が来ている」2010年、普天間飛行場の移設問題に切り込む
森永卓郎の戦争と平和講座
2026年1月17日発売1,056円(税込)新書判/256ページISBN: 978-4-08-721396-6

2008~2023年に書かれた、日本政治への警鐘を鳴らす連載コラムを一冊に。
「モリタク」ならではの洞察と大胆な提言が、今の日本にも深く鋭く突き刺さる!

がん闘病の末、2025年に亡くなった経済アナリストの森永卓郎。

「モリタク」の愛称で親しまれた彼が2023年までの18年にわたってウェブ週刊誌「マガジン9」に寄稿した連載コラムより、時の政権に切り込み、経済理論に裏打ちされた国家と政治のありようや平和で平等な社会の実現について提言した、38のタイトルを選んで新書化。
民主党政権の失敗と安倍政権の復活、普天間飛行場移設問題、対米追従と日本の右傾化、新自由主義・グローバル経済の弊害、集団的自衛権と自民党憲法改正草案、消費税増税と日本経済の衰退など、ここ15年ほどの諸問題を森永はリアルタイムでどう考え、いかに対峙したのか。その軌跡には、これからの日本を生きる私たちへのヒントが詰まっている。
解説は、元経済産業省の改革派官僚で政治経済評論家の古賀茂明が担当。森永が危惧し予言した延長線上にある、日本の現状を分析する。

「この本を読んだ方のなかには、10年以上前に書かれたコラムの内容が、
いまの状況を見て書いたのではないかと感じる人が多いでしょう」
(解説――古賀茂明「正真正銘の岐路」より)

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