国民的アニメ『サザエさん』が、ついに日本のお茶の間を飛び出した。テレビアニメ『サザエさん』(フジテレビ系)が、台湾での放送を開始。
『サザエさん』がついに海外進出!
台湾で『サザエさん』を展開するのは、日本アニメの配信・ライセンス事業を専門とする台湾の大手企業、MUSE(木棉花國際股份有限公司)。
MUSEは今回の導入理由について、「台湾ではファミリー向け作品が常に高い人気を誇っており、『クレヨンしんちゃん』や『あたしンち』などは長年にわたり多くの視聴者に親しまれている」としたうえで、テレビ局側にも「家族で安心して視聴できる作品へのニーズが高い」ことを説明。
『サザエさん』は日本で長く愛されてきた定番作品であり、台湾市場にも親和性が高く、安定した展開が期待できると考え購入した、と期待を寄せている。
国内では“日曜夕方の定番”として半世紀以上にわたり放送され、いまなお高い視聴率を誇っている『サザエさん』。しかしこの日本の昭和の日常を描いた世界観が、果たして台湾でどう受け止められるのだろうか。
今回、長年『サザエさん』を観続けてきた視聴者の視点として、評論・情報系同人誌サークル『サザエさんじゃんけん研究所』所長、そしてXで「磯野家のお茶の間」を運営するサザエさん研究家の秋葉隆史氏に話を聞いた。
まず台湾の視聴者に刺さりそうなポイントとして挙がったのは、“暮らしの空気感”だった。
『サザエさんじゃんけん研究所』所長が挙げるのは「現代なのにレトロな生活スタイル」だ。サザエさんの時代観は基本的には昭和を下敷きにしながらも、たまにスカイツリーが登場するなど現代と昭和がミックスされている。
これはファンの間で“サザエさん時空”とも呼ばれている。
さらに、サザエさん研究家の秋葉氏は、『サザエさん』が海外で観られる際の強みとして「原作4コマ漫画の魅力」と「個々のキャラクターの魅力」を挙げる。
海外で「誤解」されそうな『サザエさん』の難しさ
「長谷川町子先生の原作は、一部の歴史的背景やその時世に鑑みたもの以外なら、ギャグやコントとして海外でもウケると思われます。我々が『チャップリン』を観るような感じかも知れません。
だから外国で放送するなら原作を多く使っているエピソードが最適なのですが、今のサザエさんは、少ない原作からドラマを作る形がほとんどなので、個々のキャラの魅力にゆだねる部分が多くなるかと思います」
一方で、海外では誤解されそうな点も具体的に挙がった。
所長が指摘したのは「複雑な家族関係」。たとえばサザエがカツオとワカメの“姉”であり、タラちゃんが二人にとっては“甥”にあたることは、日本の視聴者の中でも勘違いしている人がいる。
年齢だけ見るとタラちゃんは兄弟にも見えるため、初見の海外視聴者にその関係性をしっかり理解してもらう必要性があるだろう。
また、秋葉氏が気にしているのは、作品の魅力のひとつである「サブタイトル」の言葉遊びが、台湾の視聴者にどこまで届くかという点だ。
「剣よりペンの穴子さん」「姉さんの勝負服」「タラちゃんクワバラ」「夫婦ゲンカは誰が食う?」「縁の下のワカメ」「穴子さんの服の神」「父さんの三度笠」といったサブタイトルの数々。
秋葉氏は「サザエさんは日本ならではのサブタイトルが多く、面白さが伝わりきらないかもしれない」と指摘する。確かに日本人なら“なんとなく分かる”ニュアンスでも、翻訳されるとその笑いが100%伝わるとは限らない。翻訳の仕方はとても難しいだろう。
さらに秋葉氏は、日本の季節行事についても指摘する。お花見、鯉のぼり、ゴールデンウィーク、梅雨、七夕、夏休みの宿題、紅葉、焼き芋、年賀状……。日本人の生活に溶け込んだこれらをエピソードのテーマにすることの多い『サザエさん』。
日本人ならもちろん、説明なしに観ても理解できるが、海外の視聴者からすれば「なぜこんな行動を?」となってしまうかもしれない。
そして気になるのが、「海外でバズるとしたらどのキャラか」という問いだ。ここでは二人の見立てが分かれた。
海外で受けそうなキャラクターは…
所長は、変わった行動をしたりやルールからはみ出たりするキャラに可能性があるとし、アナゴ、ノリスケ、堀川、カツオの名前を挙げる。『サザエさん』の世界は基本的に平和だが、時折、視聴者が「今の何!?」とツッコミたくなる人物が現れる。
そうしたエピソードは、最近のSNSとは非常に相性がよく、日本でもバズることが多い。海外でも、同じように“ネタとして”回るかもしれない。
さらに秋葉氏は人気が出るキャラについて、「ズバリ、波平です!」と断言する。
「頑固おやじは日本独特かも知れませんが、愛ある『ばっかもーん!』は、バズると思うのです。
日本人が「当たり前」として観続けてきたアニメが、異なる文化圏で「新作」として放送される瞬間は、きっと面白いことになるはずだ。果たして磯野家の人々の生活は、海の向こうでも受け入れてもらえるだろうか。
取材・文/集英社オンライン編集部

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