自民党が衆議院選挙の候補を公認する過程で物議を醸したのが元職の杉田水脈氏(58)を大阪5区の小選挙区候補に立てたことだ。マイノリティへの差別的な言動で法務局から人権侵犯と認定された上、安倍派の派閥裏金事件で処分を受けた杉田氏だが、比例重複立候補も許され“復権”を果たした形に。
人権侵犯、役職停止した杉田水脈氏に高市首相が用意した復活の道
「杉田水脈は大阪5区の淀川区の皆さんの生活を守って守って守って守って、守り抜きます。どうか皆さんのために仕事させてください」
選挙戦2日目の1月28日朝、寒風の中地下鉄駅前で演説した杉田氏は高市早苗首相を真似し、守るを5回連呼してみせた。前日の出発式ではヤジを浴びたが、通勤客の中からは時折握手を求めて近づく人もいた。
兵庫県出身で西宮市役所勤務などを経た杉田氏は日本維新の会公認で2012年の衆院選比例近畿ブロックで初当選。その後、自民党に移り2017年と2021年の衆院選比例中国ブロックで当選。
2024年に1500万円余りの裏金が問題になって党から役職停止6か月の処分を受け、同年10月の衆院選出馬を辞退。昨年は参院選比例代表で出馬したが落選していた。
「その間に2016年には自身のブログに在日コリアンやアイヌの女性らの写真をアップして『コスプレおばさん』『日本国の恥晒し』と書き込んだり、2018年には月刊誌で同性カップルを念頭に『生産性がない』と表現したりし、何度も問題になりました。ブログの書き込みでは2023年に人権侵犯の事実があったと法務局が認めています」(社会部記者)
そんな杉田氏に高市首相は復活の道を用意した。公示5日前の1月22日、杉田氏はXで大阪5区からの出馬を公表。
〈この度の衆院選に大阪5区から出馬することとなりました。一昨日、党本部に呼ばれて、その場で打診されました。
SNSでは、比例重複立候補も許した高市執行部を批判する声であふれた一方、杉田氏の支持者の歓迎の声もあった。
大阪市北部の5区は長年公明党が候補者を出し、連立を組んだ自民党は候補を立ててこなかった。
今回、この選挙区には他に維新の前職・梅村聡氏(50)とれいわ新選組の共同代表の前職・大石晃子氏(48)、さらに国民、共産、参政の新人が立候補している。
不祥事への言及はなし 演説で語った高市総理との近さ
演説で杉田氏は土地に縁のない「落下傘候補」と認めながら、その弱みを高市首相との近さでカバーできると訴える。
「私は高市早苗総理が1回目の総裁選に挑戦したときからずっとそばで支えて一緒にやってまいりました。でも去年の秋、待望の高市内閣ができたとき、私はその場にいませんでした。ほんとに悔しかった。もう1回国政に送っていただきたい。ここでは新人ですけれども3期9年、衆議院議員としてやってきました。即戦力です」(杉田氏)
そんな杉田氏の地域に絡む政策の訴えの中心は、外国人絡みだ。
「インバウンドでたくさん外国人の方が来てくださって儲かってるかもしれませんが、(特区)民泊の問題、いろいろルールを守らない人がいる。治安が悪くなっている。なんとかしたいという声もたくさんいただいています」
そう述べて自民党なら迅速に対策がとれると強調した。
過去の不祥事への言及や謝罪はなく、自身の経歴に絡めてかつて所属した維新のキャッチフレーズを否定したことが印象的だ。
「国会議員になる前は市役所の職員をやってました。そのとき、1番最後に携わっていたのが児童福祉です。さまざまな現場を見てきました。児童虐待、ネグレクト。必要な支援が届いていない。人が手を差し伸べて寄り添っていかないと本当に必要な人に支援が届かないんです。
そのためにはどうしたらいいのか。『身を切る改革』ではないんです。身を切る改革で皆さんの生活、良くなりましたか。行政サービスが切り捨てられて、本当にサービスが必要な人のところに届かなくなっている」(杉田氏)
「あんまり維新を攻撃するつもりはないんですけれども…」
2024年の衆院選で小選挙区で当選した維新・梅村氏と、比例復活当選のれいわ・大石氏の2人の前職が立ちふさがる中、「大石さんは眼中にないので維新との戦いだと思っています」と杉田氏は言う。
連立相手でもある維新をどう見るのか、演説後に聞いてみた。
――大阪5区での出馬は「維新から議席を奪ってこい」と言われ送り出されたんですか?
杉田水脈(以下同) 「維新との関係は高市さんがどう考えていらっしゃるか、私はイマイチよくわかってなくてですね」
――でも「身を切る改革ではダメだ」とおっしゃった。
「あんまり維新を攻撃するつもりはないんですけれども、ただ行政マンとして感じていたことなのでそれを率直に申し上げただけです」
市役所勤務の経験に話が及ぶと、これまでに見たことのない顔をのぞかせた。
「(自分には)右翼のイメージはあるかもしれないけど、そもそも私本当に児童福祉からやってましたし、そっちのほうが自分のやりたいことでもあるので、やっとそういうことも訴えられるかなと思ってあんまり安全保障とかの話はせずに、そっちの話をさせていただいてます」(杉田氏)
イメージを変えるつもりなのかどうかはうかがえないが、落下傘で降り立つ選挙区が大阪5区になった事情をたずねると、こんな話も飛び出した。
「なんで(大阪5区か)っていうのは言われてないです。ただ、ぶっちゃけた話『杉田はキワモノやからここに立てたら話題になるぞ』って言われたこともあります。だいぶ前ですけどね(笑)。
やっぱり今回は公明さんとの連立が外れて、公明の(候補がこれまで出ていた)選挙区にも自民党が立てるってなったという意味では非常に象徴的なところなんじゃないかと思います」(杉田氏)
公明と立憲民主党が一緒になった中道改革連合は、大阪5区で候補者擁立を見送った。
自民党票の後押しがなければ、維新に勝つ見込みはないとサジを投げたのか。最大野党の本気度に疑いを持たせる大阪5区の「奇妙な選挙構図」は杉田氏の立候補でさらに際立つことになった。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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