家賃滞納のため退去命令の出ていたアパートの住人に立ち退きを求めに来た執行官ら2人が刃物で襲われ、死亡者が出た事件が1月15日に東京都杉並区で発生。逮捕された人物は生活保護を受給していた。
最低限の生活を保障し自立を支えるはずの生活保護制度だが、支援の現場では「働くことでかえって生活が苦しくなる」という矛盾が指摘されている。その実態を取材した。
困窮者支援の現場 20~30代が5割以上?
東京・杉並区のアパートで1月15日、家賃滞納者の立ち退き強制執行のために訪れた執行官と家賃保証会社社員が包丁で襲われ、1人が死亡する事件が発生。
取調べに対し、逮捕された男は「生活保護を受けていたが、スキマバイトをするようになってから生活保護を打ち切られた」と、話している。
もちろん殺傷事件を起こすのは言語道断で、決して許されることではない。しかし、貧困と住居の現状にも課題があることが指摘されている。
東京都認証NPO法人トイミッケの代表理事で、複数の生活困窮者を支援するNPO法人に関わる佐々木大志郎氏のもとには、連日、困窮者が支援相談に訪れるという。
「私たちが2024年度に支援させていただいた方は338人(相談者は1329人)にのぼります。そのうち、20~30代の方が5割以上で40代を含めると7割になります。
相談者に一番多いのは、住み込みで契約した期間仕事をして、また次の寮付きの仕事に移る定住場所を持たない人たちです。
日雇いで即日給与が支払われる“スキマバイト”をしながら、ネットカフェに寝泊まりしている若者も少なくありません。彼らは『今日をしのげれば、明日以降は大丈夫です』と話します。
私たちは、一度公的支援をつかって居を構え定住し、そこから不安定な職業でなく安定雇用を目指し、落ち着いて就職活動をすることを提案しますが、“定住”の選択肢がそもそもない方もいます」
佐々木氏の元へ2年以内に“再”相談にくる人は4割にものぼり、体調不良などで一時的に生活保護に頼る人も少なくないという。
スキマバイトで陥る「家賃が払えない」
保護費の受給で定住先を得られたのもつかの間、別の問題が発生すると佐々木氏はいう。
「生活保護費を11万円もらっている人が、『保護費だけで生活することに罪悪感がある』とスキマバイトを頑張り、1月に10万円を稼いだとします。それを正直に収入申告すると、多くの自治体では『2月も10万円稼ぐだろう』と“見込み収入”として収入認定されます。
すると2月の最初に振り込まれる保護費から10万円が差し引かれます。
勤労控除により、受給者には働いた分の一定額は手元に残る仕組みですが、それは数万円程度。スキマバイトや日雇いの仕事は勤務時間が定まっていないうえに、体調面に問題を抱える人も多く、今月は10万円稼げていても、翌月には2万円しか稼げないことがザラにあります。
保護費の総受給額は変わらないため、後日、見込み収入額に足りない8万円が振り込まれる仕組みですが、即日振り込まれるわけではありません。半月か、それ以上待たされることもあり、その間、固定費である家賃の支払いが滞りやすいのです。
もちろん、受給者が即日支払われたお金を貯蓄していなかった非はありますが、生活にゆとりがない中でやりくりしている人が多いのが現状です。手元に現金がないまま、家賃の滞納をしている状態で心理的に追い詰められる人もいます」
次月の収入認定は、本来は受給者と担当ケースワーカーで話し合い、前月より前の数か月分を参考に決められるが、相談にくる人のなかには“前月の収入額で問答無用に見込み認定された”と頭を抱える人も少なくないという。
“収入認定”について事前に理解せずに、「働きすぎて痛い目を見た」と神奈川県在住のヤマトさん(28)は言う。
「持病が悪化し、働けなくなったので8か月前から生活保護を受給しています。半年前、少し調子が良いときにアプリを利用し、日雇いの仕事をして12万円近く稼ぐことができた月がありましたが、“収入認定”のことを知らなかったため、翌月に振り込まれた保護費が少なくて驚きました。
後にケースワーカーの方から説明を受けましたが、働いても勤労控除でもらえるのは1万5000円程度。結局、働かずに受給する生活保護費の金額とほとんど変わらず、今では働くことがバカらしくなってしまいました」
生活保護は、生活に困窮する者に対し「最低限の生活を保障する」とともに、その「自立を助長する」ことを目的とすると、生活保護法に定められている。
にもかかわらず受給者に「働くことがバカらしい」と思わせるのは、制度の立てつけが間違っていると言わざるを得ない。
生活保護制度、どのような見直しが必要か?
前出の佐々木氏は言う。
「今の日本は、①仕事と収入が安定しているが住まいがない人と②仕事も住まいもない人への支援制度しか選択肢がなく、③働きたいが不安定な就労しか選択肢がない人を支える仕組みがないんです。
①には東京都限定ですがTOKYOチャレンジネットという3か月無償で住まいを提供してもらえる制度があり、②には生活保護制度があります。
③の人たちは『働きたい』と意欲はあるので、生活保護の住宅扶助だけを分離して利用できるような制度を作ってほしいですね」
生活保護制度には、国民の最低限度の生活を保障し自立を助けるために、生活扶助、医療扶助、住宅扶助など8つの扶助がある。
「不安定な働き方をしている人の中には、仕事の能力は高く、スキマバイトや日雇いで短期的には月20~30万円以上を稼いでいる人も少なくありません。
彼らの住まいを安定させるために、条件付き(例えば3か月連続13万円以上の収入があるなど)で住宅扶助単体の制度を作り、入居時の一時金(敷金+礼金+数ヶ月分の家賃)を補助してもらえるだけでも多くの不安定な労働者は救われると思います。
現在、支援を求めやってくる方の8割は単身世帯ですが、この制度の導入で、地域への定着と家族形成にもつながると思います」
問題は他にもある。厚労省のデータによれば、一度受給すると自立・脱却できる人は14.5%と極めて少ない。(厚労省「令和3年度被保護者調査 月次調査(確定値)」結果の概要より)生活保護受給者の脱却率を上げるために必要な仕組みとはなにか。
「生活保護受給者には、長らく社会から断絶されている不安から社会復帰へ前向きになれない方もいます。若年層~40代を中心に、学び直しの機会やスキルアップの場を積極的に提供する支援制度があるとよいのではないでしょうか」
フランスの生活保護(RSA)は単身世帯で650ユーロ(約12万円)の現金支援とともに、スキルアップの伴走支援にも力を入れている。2025年には、週15~20時間の就労・社会活動義務が導入され、職業訓練や社会参加を通じ自立を後押しする。すでに、フランスの一部地域の実験では42%が社会復帰を果たしたという成果が報告されている。
佐々木氏は最後にこう続ける。
「なにより『生活保護を受給した方が働くよりお得』なんて言わせないための、賃金アップと安定した雇用制度を築くことが生活保護者を減らすには欠かせないのでは」
多くの人が安心して働く場を得られるように、雇用制度・福祉制度を本気で見直すことが求められているのではないだろうか。
取材・文/山田千穂 集英社オンライン編集部ニュース班

![【Amazon.co.jp限定】鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 豪華版Blu-ray(描き下ろしアクリルジオラマスタンド&描き下ろしマイクロファイバーミニハンカチ&メーカー特典:谷田部透湖描き下ろしビジュアルカード(A6サイズ)付) [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51Y3-bul73L._SL500_.jpg)
![【Amazon.co.jp限定】ワンピース・オン・アイス ~エピソード・オブ・アラバスタ~ *Blu-ray(特典:主要キャストL判ブロマイド10枚セット *Amazon限定絵柄) [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51Nen9ZSvML._SL500_.jpg)




![VVS (初回盤) (BD) [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51lAumaB-aL._SL500_.jpg)


