「5万円の服は買えないのにホストに100万円は払える」メン地下より“コスパがいい”と女性が断言するホストならではの「キャッシュバック」の幸福
「5万円の服は買えないのにホストに100万円は払える」メン地下より“コスパがいい”と女性が断言するホストならではの「キャッシュバック」の幸福

メンズエステなどの風俗で月250万円を稼いだ「ユミ」は、それでも担当ホストの“エース”にはなれなかった。そんな彼女だが「ホストはコスパがいい」推し活だと断言する。

使った分だけ“返ってくる”と感じる幸福の正体、締め日をめぐるエースの特権と序列のリアルとは。

各界隈の推し活を当事者取材で明らかにした『「推し」という病』(文春新書)より一部抜粋、再編集してお届けする。〈全3回のうち2回目〉

ホストはコスパがいい

「一番稼いだ月で、メンエスが100万、裏引きが100万、AV撮影が50万、みたいな感じですね」

月250万円。途方もない金額だ。

それでも彼女は、担当のエースではなかった。

「私は売れている人が好きだから、もともとエースになろうなんて思ったことはない。私がその時の担当に使っていた金額は100万ぐらいですけど、エースの子は毎月300万から400万円使ってました」

“裏引き”をしても月250万円が稼ぎの上限だった【ユミ】にとって、勝てる相手ではなかった。

「その子は締め日しかお店に来ないんです。あとはずっと地方の風俗に“鬼出勤”して出稼ぎ。1日から10日までは神戸にいて、11日からは九州にいて……みたいな感じ。それで29日か30日に帰ってきて、締め日にホストクラブに来て一晩で300万使って、そのあとは担当と一緒にマンションで過ごして、次の日からまた出稼ぎ」

想像を絶する激務だが、ホス狂いを自称する女性たちは金のためにそこまでするのだ。りりちゃんこと渡辺被告は、金のためにベトナム人男性と偽装結婚もしている。やれることはなんでもやるし、売れるものはなんでも売る。



「でもこの担当はマジでちゃんとしてて、エースの子が出稼ぎ行ってる間もマメに連絡とって、メンタル限界そうだなって思ったら出稼ぎ先にも来てくれてたんだって。やっぱり売れている人は、まず嫌なことをしない。いいことをいっぱいするよりは、嫌なことをしない人が売れると思う」

ホストクラブの締め日には、その月の売上が店内で発表され、その金額がホストのランキング(ナンバー)に反映される。そして、この発表を「担当の横で聞く」権利はエースの栄誉とされている。“ホス狂い”女性が「締め日に呼ばれた」と言えば、それは誇示的なマウンティングであり、「いっしょに発表を聞く」行為は大きなステータスだ。

なお、2025年6月28日から施行された改正風営法により、ランキング制度や「億超え」などの営業成績を示す文言は規制の対象となった。

「キャッシュバック」が一番幸せ

それにしても、締め日ともなれば、カブり客同士が店で鉢合わせたりはしないのだろうか。

「私はその頃、メン地下にも通っていたんです。ホストクラブの締め日って、メン地下のオールナイトライブの日とだいたいカブるんですよね。そっちのオールナイトライブに行くにはホストクラブを22時半には出ないといけないので、その子とはちょうど入れ違いだったんです。締め日にお金使ってシャンコの準備とかされても、『そういうのいいから。お金だけおいていくから』って断ってました」

「シャンコ」とは「シャンパンコール」の略称で、高額なシャンパンやボトルを注文した客に対し、ホストたちがパフォーマンスで場を盛り上げる演出のことを指す。

金払いがよく、ランキングに貢献し、自分の序列を受け入れて身を引くところは引く。

そうしてホストを立て、彼女は「いい客」であり続けた。だが、エースになれるわけではないのに、なぜそこまでの金額を投じる必要があったのだろうか。

単純な疑問として、1回5万円程度の支払いで、楽しく飲むだけではダメなのだろうか。彼女はホスト遊びに、どのような楽しみを見出していたのかが気になる。

「ホストって、使った分だけプレゼントしてくれるんです。あれ、一番いい。2人で5万円ぐらいするような高いご飯に連れてってくれたり、旅行に行っても高い宿に泊めてくれたり。ホストに100万円使えば、10万円の宿が返ってくる。キャッシュバックみたいなもんすね。それが一番幸せな瞬間」

ホストとの店外デートでは、旧来型の「男性がエスコートするデート」が演出されるので、費用はすべてホストが出す。男性がリードして、女性を“姫”扱いする。デート代金は男がオゴるものであり、そうしたジェンダーバイアスに則った疑似恋愛を提供するのが習わしとなっている。

ただ、ホストがオゴると言っても、もともとは女性客が支払った金である。

「キャッシュバック」、【ユミ】はそれを「一番幸せ」と言う。

「私、自分にお金を使うのがすごい苦手なんです。服だったりエステだったりに、お金を払いたくない……っていうか、興味ないことに1万、2万ましてや10万円とか払えないですよ」

月に331本の指名のうち180本は【ユミ】

金銭感覚が歪んでいるように感じるが、こうした認知は何も【ユミ】に限った話ではない。ホストにハマる女性の多くは、5万円の服は躊躇して購入できないが、ホストクラブには100万円を支払える、と語る。

ホストクラブで散財したあと、終電後のタクシー代がなく徒歩で家路につき、安アパートでカップラーメンをすする。1万円でも2万円でも残しておけばいいのに、と思うのだが、彼女たちはその手のエピソードを「あるある」と笑い飛ばす。

「自分は本当に、他人にしか大金を使えない。自分にお金を使いたいと思えないから、ホストクラブに行ってる時だけ、ちょっと贅沢してる気持ちになれる。

メン地下なんて、タチの悪い運営のところはポイントカード制にしてて、しかもカードの有効期限が1カ月しかなくて、その間に100万円使ったらデート、300万円使ったらユニバ(USJでデート)とかでしょ。でもホストは100万円使えばユニバに行けるし、全部払ってくれる。メン地下はコスパ悪いけど、それに比べればホストはコスパいいですよ」

ホストはコスパがいい──。

それは、彼女だけでなく、多くのホス狂い女性たちが口にするセリフだ。

私は他の子よりコスパよく遊んでいる、と。決して【ユミ】だけが特別なのではない。

「推し」のエースではなかったものの、つねにナンバー2やナンバー3の地位にいた【ユミ】は、別の方法で担当に貢献する。

「その頃って、指名本数はあんまり注目されてなかったんです。だから担当を指名本数でトップにしたんです」

指名本数に着目したのは、彼女の「推し活」遍歴によるものだった。

「ホストに行くようになる前はメン地下に行っていて、そこに招待特典ってのがあったんです」

メン地下の招待制度とは、特定の客が、ほかの客の分のチケット代金を支払う制度を意味する。仮にある女性が4人を招待した場合、彼女は自分の分と合わせて5人分の代金を支払う。そのかわりに、彼女は招待人数に応じた特典(握手や撮影など)を得られるのだ。

「メン地下にはこういうシステムがあったよ、という話を担当にしたら、『じゃあ俺が指名を何百本つけたいって言って、特典があったらお前やるの?』と聞かれて、おもしろそうだったから『やる!』って答えたの。

それで私ががんばれるように、担当にはポイントカード作ってもらいました。30人呼んだら『プリ同』(プリクラ同伴=一緒にプリクラを撮りにいくこと)、50人呼んだらいっしょに焼肉、とか」

そうして彼女の担当は、その月には331本もの指名を獲得した。そのうち180本は【ユミ】によるものだった。


「友だちにお金渡してホストクラブに来てもらったり、あらかじめキャッシャーに私のお金を預けておいてそれで飲んでもらったり。それで足が出た分は入金日までに払いましたけど。でも、この当時はホストに指名本数を何本つける、みたいなことは流行っていなかったから、『月間指名本数331本』って新記録を作ったら、すごく話題になりました」

いわば「推し活」メソッドをホスト業界に流用することで、担当に「指名本数トップ」というトピックを作ってあげたわけである。

文/加山竜司 写真/Shutterstock

#3に続く

「推し」という病

加山 竜司
「5万円の服は買えないのにホストに100万円は払える」メン地下より“コスパがいい”と女性が断言するホストならではの「キャッシュバック」の幸福
「推し」という病
2026/1/161,320円(税込)288ページISBN: 978-4166615193

なぜ彼らは苦しくても「推し」続けるのか
AKB、ホスト、VTuber、アニメキャラ、ゲーム、地下アイドル、AV女優、ビジュアル系バンド…

当事者への取材を重ねた「推し活」の現在地

「推し」という言葉は、「好きなものを応援する」ポジティブな言葉として使われることが多い。
だが、アニメグッズを購入したり、アイドルのコンサートに参加したりすることだけでなく、たとえば地下アイドルライブでのチェキの大量購入、ホストクラブやメンズ・コンセプトカフェでの過激な売り掛けなどを表す際にもこの言葉は使われている。
少なくとも、言葉のうえでは、学生のささやかな「推し」と、身を滅ぼすほどの出費をともなう「推し」は地続きだ。

「高田馬場ライバー刺殺事件」をはじめ、「推し」を端緒とした刑事事件も発生している。その精神性の根が同じであるならば、私たちは「推し」とは何かを慎重に見極める必要がある。
実際に「推し」によって人生を大きく変える選択をした人々の言葉に耳を傾けることで、「推し」の何が人々を病的なまでにエスカレートさせていくのかを探る。

第一章 「結婚するなら、もちろんアイドル」
“「推し」のためにマンションを売った”トップオタ

第二章 「ホストはコスパがいい“推し活”」
“ホス狂い”風俗嬢のコスト意識

第三章 「二次元は“恋愛対象”になるか」
アニメ、VTuber、2.5次元、声優…オタクたち「推し活」

第四章 「結婚できなかったのはアノ子のせいじゃない」
女性アイドルを14年間推し続ける中年女性の憂鬱

第五章 「AV女優に求める純潔」
秩序を守るAV女優アイドル・トップオタの女子校教師

第六章 「“運営”は搾取をしているのか」
元ジャニーズJr. 地下アイドル運営の見果てぬ夢

第七章 「推しがいないこの世界に、生きる意味はない」
「推し」の後追いで「自殺未遂」した納棺師

第八章 「オタクとアイドルは運命を捻じ曲げて共に生きる」
オタクでアイドルだった彼女は、今日もSNSで未練を語る

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