昨年12月25日、西武鉄道は一部駅において遠隔対応(インターホンで案内を行なう)駅へと体制を変更することを発表した。新宿線の東伏見・西武柳沢・久米川・入曽駅、西武園線の西武園駅において、2月上旬より実施するという。
西武鉄道の一部駅「遠隔対応駅化」にSNSにはさまざまな声が
「知らなかった! 2/3から東伏見駅も無人になるなんて」
「結構人が多い駅だけど大丈夫なんかいな?」
「なんで西東京市と東村山市に集中しとるん」
さまざまな声があがる西武鉄道の「遠隔対応駅化」。駅係員による「窓口対応」は終了するが、一部時間帯(22時~7時)をのぞいて駅構内に係員は配置される。つまり完全に無人駅になるわけではないという。
駅前に早稲田大学のキャンパスやスケートリンクが建ち、一日の乗降客数が2万人を超えるという東伏見駅を取材班が訪れると、駅改札の横に「重要なお知らせ」という大きなポスターが貼られ、インターホンの設置も進んでいる様子が見られた。
東伏見駅前で古くから営業しているというカメラ店の店主は次のように話した。
「駅係員による手伝いが必要な人は『事前受付制』になるみたいですが、気軽に買い物にも出かけられなくなってしまうのかと懸念しています。私は長くここに住んでいますが、高齢者が増えていますし、体の不自由な方のケアという観点からも心配です。
それに東伏見駅は踏切がいくつかありますが、人身事故が多いんです。そういう事故が発生したときの対応はどうするのでしょうか。踏切付近にカメラを設置するなど、係員の人員が減るぶん、しっかり対策をしてほしいと思います」
また、駅券売機で乗車券を購入する高齢の女性に声をかけると、遠隔対応駅化については知らなかったと話し、「不便になるねえ…」と寂しそうにため息をついていた。
「市民からも多くの声が届いています」と話すのは、西東京市で活動する市議会議員だ。
「先日開催した議会報告会の中で、特に『障がいのある方の利用に制約が生じるのではないか』という懸念の声がありました。
『手伝いが必要な場合は事前に連絡をというが、その日になって外出したいと思うこともある』『事前に予約しても道中で時間がかかり遅れてしまうこともあるが、待ってくれるのか』『インターホンでの対応は聴覚障がい者には困難ではないのか』『市は市民の不安に寄り添って西武鉄道に対し意見すべきなのに、鉄道会社の代弁者になっているのではないか』などです」
同議員がこの問題についてSNSで取り上げた際にも、「池袋線ばかり利便性が良くなり、新宿線ばかりが狙い撃ちされているように思う」「ホームドアなどの安全対策を同時にしてほしい」「子どもたちも使うので、親として不安」「警備会社などへ委託で対応できないのか」「犯罪が起きやすくなりそう」など、懸念する意見が複数届いたという。
障がい者支援団体は「リスクは大きい」と懸念
市民や利用者から不安や懸念の声があがる西武鉄道の遠隔対応駅化。西東京市で活動する障がい者支援団体の担当者は、昨年末に西武鉄道が公表したリリースで遠隔対応駅化について初めて知ったという。
「12月25日のプレスリリースで知ったときは『寝耳に水』という状態でした。年明けに西東京市と西武鉄道に意見書を提出し、西武鉄道へは住民説明会の実施を要望しました。
ですが『実施予定はない』という回答があったため、一つずつ不明点を確認しようと、質問状を送りました」
質問状は、「障がい者割引乗車券の購入・精算に関する質問」「視覚障がい者の駅利用と支援体制」「コミュニケーションが困難な利用者への対応」「車いす利用者・歩行障がい者への対応」「駅選定理由と安全対策」「説明会開催に関すること」の6項目から成り、障がい者やその家族が駅を利用する際に必ず確認しておきたい事項が記されている。
これらの質問に対してまだ回答はないという。
「数年前に、国土交通省から駅の無人駅に関するガイドラインが出ています。その中には地域の障がい者の方々とのコミュニケーションをしっかりとるようにと書いてあるのですが、今回こちらからの問いかけに応じてくれないのは、ガイドラインに抵触するのではないかと感じています」
国土交通省が2022年に策定した「駅の無人化に伴う安全・円滑な駅利用に関するガイドライン」では無人駅の望ましい在り方などを示しており、その中には今回の西武鉄道のように要員配置の見直しによって「一部時間帯を無人化」する駅も含まれる。
西武鉄道の「遠隔対応駅化」はすでに他の駅で先行実施されており、「おそらく過去に問題がなかったのかもしれない」としたうえで、担当者は次のように訴えた。
「健常者の方は今回の夜間無人化と窓口業務の終了でもそれほど困らないのではという感じはします。ただ、高齢者も含めて、社会的な弱者、特に障がい者の方はいろんな障がいがあります。インターホンをつけても全く聞こえない人や聞きづらい人、言語障がい、認知症だとか。
『インターホンで案内する』といいますが、そもそも障がいを持った人がインターホンのところまで行き着けるのか。行き着けたとしても相手の言うことが聞こえない場合もあります。その場合にどう対応するのか。やはりリスクは大きいということは、よく考えればどなたでもわかることです」
また自治体に対しても、「市民の安全を守るべきなのに、市から来た回答を見るとのんびりしているなという印象です」と話す。
「少子化や高齢化などの社会的要因によって、今後もおそらくいろいろな場面で社会的弱者が住みにくい世の中になっていくのではないかと懸念しています。今回のようなケースが安易に起こらないようにしておかないと、世の中が荒んでいくというか、強い人たちだけの世の中になってしまうのではないでしょうか」
「一部時間帯を除き駅構内に係員を配置しております」
一部駅の遠隔対応駅化について西武鉄道に問い合わせると、広報部の担当者は背景や経緯について次のように説明した。
「少子高齢化によって生産年齢人口が減少しており、今後労働力不足がより一層加速していくことが見込まれます。このような中、鉄道事業を安定的に持続させるため、営業体制を一部変更することといたしました。
遠隔対応駅は、駅係員が改札内外に設置されているインターホンにて対応を行っております。そのため、窓口対応を専属的に担う係員は配置しておりませんが、一部時間帯を除き駅構内に係員を配置しており、対象駅または近隣駅の係員が対応しております」
また、多くの懸念が寄せられている緊急事態発生時や介助が必要な利用者への対応については次のように話した。
「窓口対応を専属的に担う係員は配置しておりませんが、異常時等必要に応じて対象駅または近隣駅の係員が対応いたします。そのため、状況によっては直ちに対応できない場合もございます。
なお、駅係員によるお手伝いが必要なお客さまは、ご利用の前日 17 時までにスマートフォンやパソコンから『介助事前受付サービス』にて①来駅予定日時 ②乗車駅 ③降車駅を事前にお申込みいただくことでスムーズなご案内が可能となります。西武鉄道お客さまセンターなどでもお申込みいただけます。
なお、『事前介助受付サービス』は、西武鉄道のすべての駅での乗り降りで利用できるサービスとなっております」
最後に、今後も他駅で実施するかどうかと問うと、「ご利用状況等を勘案し、各駅の最適な営業体制を今後も検討してまいります」と回答した。
少子高齢化や人手不足のなかで鉄道事業の持続可能性が問われるいっぽう、公共交通は誰にとっても安全に利用できるものである必要がある。利用者一人ひとりの事情にどこまで寄り添えるのか。今後も検証と対話が求められている。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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