【織田裕二×反町隆史×亀梨和也】日本ドラマ史上最大級のスケールで描かれる実写版『水滸伝』メインキャストインタビュー
【織田裕二×反町隆史×亀梨和也】日本ドラマ史上最大級のスケールで描かれる実写版『水滸伝』メインキャストインタビュー

シリーズ累計1160万部を誇る北方謙三の大河小説『水滸伝』が、連続ドラマ『北方謙三 水滸伝』としてWOWOWで放送、WOWOWオンデマンド、Leminoにて配信スタート。12世紀初頭の中国を舞台に、腐敗した世に抗うはみ出し者たちの戦いを描いた革命の物語だ。

世直しの書『替天行道』を記す主人公の宋江(そうこう)を演じるのは織田裕二。圧倒的な武勇で悪政を為す国と戦う晁蓋(ちょうがい)を反町隆史、槍術にかけて右に出る者のいない天才武人・林冲(りんちゅう)を亀梨和也が演じた。撮影期間約8ヶ月、総移動距離約2万5千kmという、日本ドラマ史上稀に見るスケールの撮影に臨んだ3人に話を聞いた。

国家という巨大な敵に挑む男たちを熱演

──ご自身が演じられたキャラクターについて、どのように解釈されましたか?

織田裕二(以下、織田) 僕が演じる宋江は、ほぼ剣を持たない人物です。表向きは戸籍係として働く下級役人ですが、腐敗した世の中を憂い、自ら筆を執って『替天行道』という世直しの書物を書き、108人の志ある者たちを集めていく存在です。

言葉で人の心を動かす力はあるけれど、戦場に立てば戦力にならない。いわば「筆が剣の代わり」という存在です。平和で、何気ない小さな幸せを望んでいるのに、その“普通”が通用しない世の中になってしまった。怒りや虚しさ、諦めきれない思いが重なって、あの書物を書くわけです。

だからこそ、彼の中には常に矛盾がある。国を倒すということは人が死ぬということでもあるわけです。「林冲、死なないでくれ……でも危険を冒してスパイとして探ってきてくれ」みたいな感じで、言っていることはめちゃくちゃだけど(笑)、本当は敵も味方も死んでほしくないんです。どこかで周囲に甘えている部分も含めて、宋江は“感謝の人”だと思っています。

反町隆史(以下、反町) 民衆の支持と圧倒的な武勇で“托塔天王”の異名を取る晁蓋のドラマは、「『替天行道』を書いた人物がどんな男なのか」という興味から始まるんです。会う前は警戒心もあるけれど、実際に人格者である宋江と対面したときの喜びは大きい。

そこから新たな道を共に歩むことになるので、晁蓋としては強さだけでなく、人に対する思いやりや懐の深さを持ったリーダーシップに重きを置いて、ひとつひとつのシーンで丁寧に表現しようと思いました。

亀梨和也(以下、亀梨) 林冲は槍の名手で、圧倒的な強さを持っていますが、その中にある細かい心中の揺れや優しさ、柔らかさを大切にしました。

この作品は登場人物が多いのですが、無駄な人がひとりもいない。まさに適材適所で、それぞれが自分の役割を全うしているんですね。林冲自身も、誰かを動かすより自分が前に出て役割を果たすことで、それが生きがいと感じたり、落ち着くタイプ。

役割を与えられるだけじゃなく、自ら切り開いていく十人十色の生き方が描かれていて、その多様さこそが、この時代の強さだと感じながら演じていました。

織田 登場人物はみんな、何かしらの傷を抱えているよね。大きな戦いと、個人個人の戦いがある中で、とにかく宋江は「死ぬなよ」と、(『巨人の星』の)星飛雄馬の姉のように人の心配ばかりしているんです(笑)。

亀梨 そうですね、僕たちはひとりひとり立っているんだけど、互いに思いやりを持って、横のつながりで支え合っている。一方、権力側の人間は大きな国を支えているのに、個々が欲望で動いて自分の利益ばかり考えているから小さく見えてしまう。

その対比がすごく印象的でした。

相手を信じ、思いやることの大切さ

──同じ志を持つ3人ですが、お互いをどのような存在として捉えていますか?

織田 宋江は、ある決意をしてから5年経っても国を倒すことはできなかった。でも、その5年間、何もしなかったわけではなくて、必死に動き続けてきた中で出会えたのが晁蓋でした。彼と出会えなければ、50年経っても何も進まなかったと思います。

林冲とも以前から出会っていますが、彼はひとりで何十人も倒せる強さを持ち、命懸けで動く存在。それでも「国を変える」というスケールの大きな目標は、ひとりではどうにもならないわけで。晁蓋率いるチームとの出会いが、108人へとつながり、一気に流れが変わったと感じています。

反町 宋江とは「見ている目的が同じ」という点が大きいですね。やり方や価値観は違っても、根本にある相手を信じ、思いやることの大切さをわかっているし、それは時代が変わっても変わらないものだと思います。林冲に対しても同じですね。

亀梨 僕にとって宋江は、命を捧げられる存在です。劇中では細かく描かれていませんが、無条件で身を委ねられる人。現実でも、そんな存在にはなかなか出会えないですよね。

 

──撮影前に準備したことはありますか?

亀梨 体づくりですね。乗馬や槍の稽古など、物理的な準備が多かったです。

織田 みんながそういう準備してるって聞いて、「俺、何もないの?」って(笑)。それで書道を少し教えてもらいました。

亀梨 代役なしでしたよね?

織田 それが若松組(笑)*。最初に自分の右手で書いたときに、「今回はやめたほうがいいんじゃないですか?」と言ったんだけど、「お前の字がいい」と。左手で書いた字は、さすがに使われなかったけど。

*若松節朗監督。これまで手がけた作品は映画『ホワイトアウト』(2000)、『沈まぬ太陽』(2009)、『空母いぶき』(2019)、『Fukushima 50』(2020)、『海の沈黙』(2024)など。

反町 僕は、中国の時代劇は衣装の腰位置が高いので、所作や姿勢を意識しました。

織田 日本より少し高い位置で帯を締めるんだよね。日本の時代劇は骨盤矯正かっていうぐらい低い位置で締めるから(笑)。

ほかにも日本に比べると華やかだし、椅子もあれば靴も履く。似ているようでかなり異なる時代劇における文化の違いにも、ぜひ注目していただきたいです。

リアリティを追求した過酷な撮影現場

──撮影中、大変だったことや挑戦は?

織田 いやもう、多すぎちゃって(笑)。まず登場人物が多く、俳優さんの役名や読み方を覚えるところから大変でした。やっと覚えた頃に「次の撮影までに3週間空きます」と言われたりして。「ほかのみんなは京都に行って、別のシーンを撮っています」とか。

反町 そういうことは結構ありましたね。

織田 その間、役に入り込んだままキープするというのも難しいなと。だから途中からは細かい役作りをやめて、「宋江は俺だ!」と思って臨むことにしました。違っていたら周りのプロが教えてくれるだろうと信じて。

そもそも最初に話を聞いて、こんな108人の英雄のそれぞれが主役みたいな話を、どうキャスティングするのかなと思ったよね(笑)。

反町 人数が多いから共演シーンがないとか、劇中で出会わずに亡くなってしまうキャラクターもいますよね。

織田 違う作品の現場で、「実は僕、『水滸伝』に出させていただいてます」と言われて、「ああそうだよ、俺たち今一緒にやってるんだよ」ってなったり(笑)。現代劇になると一瞬、分からないこともある。

反町 僕はやっぱり洞窟のシーンが、すごく思い出深いですね。真っ暗な中での撮影が何日も続いて。初日に撮影した雪山のシーンもきつかったけど、2日目の洞窟はさらにきつかったですね。

織田 ずっと真っ暗な洞窟の中で話をするシーンの撮影は、絶対忘れないな。

反町 でも、最初にそれを乗り越えたことで、チームとしての一体感が生まれたのかなと思いますね。

亀梨 僕はみなさんと交流する前の序盤のシーンがすごく印象に残っていて。事を動かすための重要な任務を林冲自身が担っている中で、雪山や牢獄のシーン、あの一連の解放されるところまでも含めて、後にも先にもなかなかないような経験をともにさせていただいたなと思います。

──映像を拝見しましたが、精神的にもかなりつらそうなシーンが続きました。

亀梨 いやもう、本当にそうでした。自然の厳しさの中で、監督に「叫べ! 叫べ!!」とか言われて、僕は「うわー!」とか叫んだりして……。

織田 何の話だよ(笑)。

亀梨 なんか今、あの時のつらさを思い出しちゃって(笑)。

織田 整理すると、深い新雪の中を、ずっと人を担いで歩かなきゃいけない上に、それを監督が地獄の8分間長回しするんですよ。本編に使われるのは3秒ぐらい?

亀梨 最終的に全カットだったら泣きますけど(笑)。

織田 若松さんは、俳優が本当に苦しくなるまでカメラを回すってことを、たまにやるんですよね。林冲を超えた亀梨さんの限界を見せろ!って感じで(笑)。

亀梨 林冲が何日かぶりに水を飲むシーンでは、雰囲気を出すために実際に塩水を使ってやってくださいと言われて。僕もスタッフさんに「ある程度、塩を感じたい」とお伝えしたのですが、本当にえげつない塩の量で。

あのシーンではリアルにむせているんですよ。多分人生でこれ以上、塩辛いものは口にしないだろうなって。その辺の序盤のシーンは、実際に僕自身の、ほぼドキュメンタリーです(笑)。

織田 小道具ひとつとっても、スタッフはこだわりを持っていて。中国まで買い付けに行ってそろえていたし、カメラマンは毎日がクライマックスの撮影であるかのように気合いが感じられました。食事のシーンでは、実際に食べても美味しい中国の昔の料理が、たとえカメラに映らなくても用意されていて。

本当に細かいところまで目が行き届いていた。ロケーションも含めて、そういったリアリティ、本物志向は映像から伝わるだろうし、お芝居にもすごくいい影響をもたらしていると思います。

取材・文/今祥枝
撮影/石田壮一

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