長男が語った本音〈探偵!ナイトスクープ・ヤングケアラー騒動〉「お父さんやお母さんが悪く言われるのはすごく嫌だ…」「大丈夫なの?って毎日聞かれるのがつらい」
長男が語った本音〈探偵!ナイトスクープ・ヤングケアラー騒動〉「お父さんやお母さんが悪く言われるのはすごく嫌だ…」「大丈夫なの?って毎日聞かれるのがつらい」

ABCテレビは『探偵!ナイトスクープ』の1月23日放送回後に異例の2回にわたり声明を発表し、出演した家族への誹謗中傷を控えるよう訴えた。さらに1月30日に同社の今村俊昭社長が会見を開き冒頭で「取材者の家族に大きなご負担をおかけしている状況を大変重く受け止めている。

視聴者の皆様にもご心配おかけしています」と語った。今回の調査依頼をした長男は現在どんな心境なのか、阿部夫妻の許可をとり取材、さらに近隣住民にも話を聞き阿部家の長男が本当にヤングケアラーではないのか検証した。

同級生の親がみた阿部家は…

炎上した阿部夫妻は、探偵を依頼した長男のことを「お手伝いをよくしてくれる優しい子」とこれまでの取材で語っていた。

実際に対面すると、礼儀正しい少年で身長は探偵のせいやよりも高く、どこか大人びていた。番組内でも家事や育児に奮闘する“演出”から「可哀想すぎる」「ヤングケアラーだ」といった印象が残ってしまった。

本当はどんな少年なのか。阿部家の近隣住民に聞いた。

長男と同じ小学校に通う同級生の母親の木藤さん(仮名)は「なんでこんなことに…」と動揺を隠しきれなかった。

「彼はこれからおこなわれる試験に向けて頑張っているから最近はウチには遊びに来ませんが、昨年は週に2、3回は遊びに来ていましたよ。

学校終わりに次男くんを連れて一緒に来たりして。面倒見の良さや人望もあるから生徒会長になって積極的に学校での活動もしていたし、ヤングケアラーで勉強したり遊ぶ時間もないだなんて誰も思っていませんよ」(木藤さん)

また番組が放送されたことで母親の美佳さんのInstagramが特定され、その投稿内容も踏まえて「育児放棄する酷い母親」だというショート動画や誹謗中傷も広まった。木藤さんは言う。

「美佳さん、すごい食にこだわっててお料理もとても上手なんですよ。

自家製の味噌とか塩麹を作ったりして。腸活に良い食事作りとかたまに教えてもらうこともあるくらいです。うちは夫が会社員で私はパートだけど、阿部さんとこは自営業だしそれは夫婦で役割分担するのは当たり前のことだと思います」

木藤さんは今回の“炎上事件”を受けて「阿部さんには申し訳ないが、ある意味自分の息子にとっては勉強の機会だと思ってます」と話す。どういうことか?

「息子に『長男くんはネットで色々と書かれてるみたいに“親に奴隷扱いされてる可哀想な少年”だって思う?』と聞きました。

すると息子は『そうは思わない』と言いました。だから私は『そうだよね。ネットで書かれていることすべてが正しいわけではないんだよ。自分で見たり聞いたりしたことが事実だしネットで書かれていることは間違いの場合もあるんだよ』と話しました。そして、もし学校で長男くんを悪く言う子がいたら注意するんだよとも言いました」(木藤さん)

「あー! ヤングケアラーのお父さんじゃ」

木藤さんの息子は母からの教えを素直に受け取った。だが学校には阿部一家と交流がない家庭も多い。

取材中、父の恭宏さんと共に学校へ長男のお迎えに付き添ったのだが、人懐っこそうな男児が恭宏さんにからんできた。

「あー! ヤングケアラーのお父さんじゃ」

「なんでそんなことを言うの?」と聞くと、とその男児はこう答えた。

「TikTokでヤングケアラーって流れてきたけえ、おかんにヤングケアラーってなんじゃって聞いた。

そしたら勉強とか遊んだりする時間がなく家の手伝いさせられてる子どものことっだて聞いた。僕はまあ勉強せんでええんじゃったら羨ましい」

男児に悪意はないようにみえる。長男の周囲には多くの友達が集まっており、さすが生徒会長をしているだけあって慕われているようだった。

だが、長男は1月29日は学校には登校したものの保健室で1日を過ごした。何があったのか。

「教室に行くとみんなが『大丈夫なの』って聞いてくるし、先生まで23日から毎日『変化はあるか』とかって聞いてくるから、そうやって聞かれるのが嫌だなって。心配されてるのがやだなって。大丈夫なのって聞かれると俺は大丈夫じゃないんかって思っちゃう」

長男に「今回の炎上で一番嫌なことは何か?」とも聞いた。

「お父さんとお母さんが炎上夫婦って言われたりするのがすごく嫌だ」

撮影自体は楽しかったのかと聞くと「楽しかった」と一言。せいやの印象について聞くと、いかにも子供らしい素直なコメントが返ってきた。

「せいやさんは忙しいから、ずっと疲れてそうに見えた。『大人になんなよ』って言葉の意味もよくわかんなかった。

抱っこされたのも恥ずかしかった。撮影は楽しかったけど…」

また、番組内では次男や長女が「兄だけでなく僕らも手伝いやってますけど」というようなアピールをしたとも言えるシーンがあった。次男は「ご飯ができて配膳するのは僕やるし」と言い、長女は「お兄ちゃんよりも私の方がミルクを作るのが上手いよ!」と記者に訴えた。

記者も目撃したが、実際に阿部家は長男だけでなく兄弟が競って家のお手伝いをしていた。

「今後も番組は続けていく」という発表を聞き、夫婦や長男は…

実は、阿部家では「手伝いをしたらお小遣いは●円」というルールがあり、お手伝い帳が存在する。ノルマなどはなく、子どもたちの自己申告制で「0歳児の妹のオムツを替えたら10円」「配膳をしたら10円」などとお手伝い帳には子どもたちの名前とともに、お手伝いの内容や金額が細かく記帳されている。これは父の恭宏さんが導入したものだ。

「労働の対価としてお金を得る仕組みや感謝される喜びを学べるいい教育機会だと思っています。ウチだけでなくこれは他の家庭でもやってるようなことだと思うんですよね。手伝いを強制してもないし、子供達の自主性を高めたいので、やっているだけなんですけどね…」

長男に将来何になりたいかと問うと「なりたい仕事は別にない……あ、でもTikTokerになりたい」と、いまどきの子どもならではのことを言った。どんな発信をしたいのかと問うと「わかんない」とあっさり返された。

「番組もテレビに出たかったからだし、生徒会長になったのもみんなの前に立ちたかったから。

テレビに出られたのはよかったけど、お父さんやお母さんが悪く言われるのはすごく嫌だ」(長男)

30日に行なわれたABCテレビの今村社長の会見で「今後も番組は続けていく」という発表を聞き、阿部さん夫婦や長男は「よかった…!!」と安堵していた。

ネット社会である昨今、拡散された情報はデジタルタトゥーとして残り「人の噂も七十五日」ではなくなってしまった。それならあえて明記しよう。取材班がみた阿部家は、ヤングケアラーや育児放棄とは程遠い、互いに協力しあう温かみのある大家族だった。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

 

 

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