「あの会社はもうムリだった…」退職代行モームリ社長と妻逮捕…ミスをするとみんなの前でゴン詰め「論破してみろよ!」元従業員が見た恐怖の“パワハラ体質”
「あの会社はもうムリだった…」退職代行モームリ社長と妻逮捕…ミスをするとみんなの前でゴン詰め「論破してみろよ!」元従業員が見た恐怖の“パワハラ体質”

「仕事が辛い、もう無理」――そんな労働者たちの悲痛な叫びを代弁し、退職手続きを代行するサービスとして急成長を遂げていた「モームリ」。都内を走る宣伝トラックやSNSでの発信で知名度を高めていた同社の運営トップが、ついに逮捕される事態となった。

華々しいメディア露出の裏で、「モームリ」では違法な非弁行為が常態化していた疑いがもたれている。さらに集英社オンラインは社長による強烈な「パワハラ」が横行していたという証言を得ていた。

「広告費」を隠れ蓑に

警視庁は3日、退職代行サービス「モームリ」運営会社「アルバトロス」社長・谷本慎二(37)と、妻で同社社員の谷本志織(31)の両容疑者を弁護士法違反(非弁行為)容疑で逮捕した。逮捕容疑は、弁護士資格がないにもかかわらず、報酬を得る目的で、退職を希望する顧客の会社側との交渉などの法律事務を、提携弁護士らにあっせんした疑いである。

捜査関係者によると、社長らは2024年7月から10月にかけて、顧客6人の退職交渉を提携先の弁護士に紹介し、違法に報酬を得ていたとみられている。弁護士法では、弁護士資格を持たない者が報酬目的で法律事務のあっせんをすることを禁じており、これに違反した形だ。

このスキームにおいて、社長が業務全般を仕切り、妻は法律事務所との窓口役を務めていたという。特筆すべきは、その報酬の受け取り方である。同社の口座には、提携先とされる「労働環境改善組合」への賛助金や広告の業務委託費といった名目で、都内の法律事務所から現金が振り込まれていた。

警視庁は、これらの組合や広告業務には実態がなく、金銭のやり取りは実質的な「顧客の紹介料(キックバック)」であったとみており、実態解明を進めている。

2022年にサービスを開始した「モームリ」は、日本初の退職代行会社ではないものの、アドトラックを走らせたり、YouTubeでの動画発信を行なったりと、派手なプロモーションで一気に知名度を上げた。集英社オンラインの取材に対し、同社の広報担当者は若手の早期退職について「第三者を介したスムーズな退職は、本人にとっての前向きな一歩」と、その社会的意義を語っていた。

しかし、その「スムーズな退職」を演出していた社内には、皮肉にも従業員たちが恐怖に震える“ブラック”な実態が広がっていた。

昨年10月、集英社オンラインの取材に応じた元従業員らの証言からは、逮捕された谷本容疑者の苛烈な「パワハラ体質」が浮き彫りになっている。

元従業員が語った「恐怖のミスのPDF」

本来、ブラック企業に苦しむ人々を救うはずの会社で、何が起きていたのか。元従業員A氏は当時、社内の異様な空気をこう証言した。

「われわれ従業員は日々の仕事などを日報として提出するのですが、その日報に谷本社長や部長に就いている谷本社長の奥さんなどから定期的にコメントが書き込まれます。そのコメントが辛辣で、谷本社長は日報を書いた従業員に対し『○○くん居たの?』などというコメントを書き込んだりしていました」

精神的な圧迫は、個別のコメントにとどまらなかった。従業員のミスを可視化し、全員の前でさらし上げる行為が日常化していたという。

「また、従業員の名前を羅列しそれぞれミスの回数と内容を書き込んだ“ミスのPDF”がありグループチャットに送信されてきます。PDFはミスの回数をまとめたものでミスが多い人は赤字になって目立つようになっています。こんなにミスあるのヤバくない?という感じでさらされるので、みなそれに恐怖感を覚え萎縮していました。

PDFに関しては2週間に一度更新されていく感じでしたね。PDFとともに谷本社長が一言LINEを送ってくるのですがきつい言葉が多く、みんなLINEの涙マークでリアクションしていました」

社員同士を競わせるというよりは、社長の「気分」で詰められているように感じたとA氏は振り返った。

「わざわざみんなが見ている前で『ほんとどうしてくれるの?』とミスをした社員を問い詰めたり、『論破してみろよ』と詰問していることもありました。谷本社長はXに『結論ファーストで話さない人は仕事ができない』とか、読む人が読めばどの社員のことを言っているかわかる形で書き込んだりもしますから。

だから『これ私のことかも』と、それを見て傷つく社員もいました」

容疑者は社員に「非弁行為じゃない。安心してね」

こうした谷本社長の言動に対し、社員たちは強烈な皮肉で返答することとなる。あえてライバル会社の退職代行を使って辞める従業員が続出したのだ。

「退職代行を使って辞めた方は5名いましたが、初めて退職代行を使われたとき、谷本社長は『ネタにしよう』と言ってYouTubeで動画にしていました。しかし批判が殺到し、その後は触れなくなりました。1名の方はSNSで度々うちを批判してた退職代行に頼んでいたようです。相当会社を憎んでいたのだと思います」

谷本社長自身は、かつて自身が働いていたのがブラック企業で「そうじゃない会社を作りたい」と語っていたという。しかし、結果として作り上げられたのは、かつて彼が憎んだはずの環境と同じ、あるいはそれ以上の恐怖支配による組織だった。

パワハラだけでなく、今回逮捕容疑となった「非弁行為」についても、社内では巧妙な正当化が行われていた。元従業員によれば、会社としては「非弁行為に当たらないように」という意識を持っているように見せかけていたという。

「会社での会議のときに谷本社長から『非弁行為じゃない。安心してね』と言われていましたので、それを信じていました。

ただ、一方で『弁護士が大丈夫だと思ってやってるんだから大丈夫でしょ』と軽く考えていたような部分も会社から感じられました」

現場の従業員たちが「相談者の助けになりたい」と純粋な使命感を持つ一方で、上層部は退職代行を単なる「お金のための新たなビジネスチャンス」と捉えていた節がある。元従業員は、キックバックについて社長から具体的な指示があったことを明かしている。

「谷本社長は『ワンチャン、キックバックが入るから公務員とか退職代行ができない人はどんどんそっち(弁護士事務所)に流してくれ』と言っていました。退職希望者に弁護士を紹介して正式に弁護士に依頼となった場合、モームリに紹介料として1万6500円程度のキックバックがされていました」

「退職代行のなくなる世の中になってほしい」――それが会社の願いだったと元従業員A氏は当時語っていた。しかし、その実現のためには、まず自らが法を遵守し、従業員を大切にする組織である必要があったはずだ。「それならまず自分たちの会社が『モームリ』と言われないようになっていってほしいですね」。元従業員のこの言葉が、今回の事件の本質を突いている。

※「集英社オンライン」では、今回の事件についての情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(旧Twitter)まで情報をお寄せください。

メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

X(旧Twitter)
@shuon_news  

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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