心に“刺さった”番組を語るリレー連載「今週のトガりテレビ」。今回は、テレビウォッチャーの戸部田誠(てれびのスキマ)が、情報過多で刺激にあふれた現代のテレビの中で、痛烈なカウンターを放った番組を取り上げる。
「これでお仕事してるって言えるんだから……」
松重豊と星野源は1月28日放送の『星野源と松重豊のおともだち』(NHK)の中で、こんな会話を交わして微笑んだ。
「これでお仕事してるって言えるんだから……」
「幸せですね」
「ホントにいいのかなあって思う」
『星野源と松重豊のおともだち』は、今年1月から、1クール限定で放送されている番組だ。星野源のNHKの番組といえば、昨年まで『おげんさんといっしょ』を不定期に放送していたが、惜しまれつつも「ファイナル」を迎えた。もう星野の番組はしばらく見られないのかも知れないと思っていたところで発表されたのがこの番組だった。
松重豊は、『おげんさんといっしょ』でも豊豊(ほうほう)さんとして登場。星野と『おげんさんのサブスク堂』というスピンオフ番組も一緒につくった気心の知れた仲。
いや、そんな言葉では足りない。
2人は2019年公開の映画『引っ越し大名!』の撮影現場で出会い、音楽談義を交わすと、その日のうちに意気投合。松重が出会った初日に食事に誘ったのは星野が初めてだという。
大人になって本当の意味での友達を作るのは難しいとよく言われるが、2人は正真正銘の「おともだち」。お互いが「こんなに気が合う人ってなかなかいない」と言い合っている。世代も違う2人がそうした関係になれたのは稀有な例と言えるだろう。
本番組のコンセプトは「音楽と環境を混ぜる」こと。
<原案>としてクレジットされている星野は、「外で音楽を聴くのが好きで、同じ曲でも場所によって聴こえ方が全然違うじゃないですか。外で話をして、あ、この曲を聴きたい、この曲知ってます? とか、なんかそのやりとりがすごい楽しそうだなと思って、松重さんと旅に行きたい」と企画意図を語っている。
「ともだち」との会話の中に「おと」がある。だから「おともだち」なのだと。
初回はNHKの食堂から鎌倉の海を見に行き、第2・3回は、松重の案内で韓国に。
妻・新垣結衣との生活も垣間見える「沖縄の人の温かさに包まれて暮らして」
その行く先々でそれぞれが好きな音楽を紹介し合い、それをただ聴いていく。ゆったり心地良い時間が流れる。確かに音楽はその風景に溶け込み、少し違った味わいで耳に入ってくる。
番組の最後には、「本日のプレイリスト」として流れた曲が一覧で表示されるのも気がきいている。
そして、第4回の舞台は沖縄だった。
星野が何かと「縁がある」と説明するが、松重が「沖縄の人の温かさに包まれて暮らしてるわけだからね」と、星野の妻・新垣結衣を想起させる一言を投げかける。星野は照れながらも、「そうなんですよね」と満面の笑みを浮かべた。
海の見えるカフェや琉球ガラス工房をめぐった2人は、中庭で沖縄料理を味わえる店へ移動。
「マスターが料理作って、僕がお酒作って。で、ラストオーダーを終えると、『源ちゃん、まかない作って』って言われて、僕はゴーヤチャンプルーを作って、マスターはお客さんとこ行って三線弾くんですよ」
このマスターは、2021年に亡くなってしまったが、星野に大きな影響を与えた人物であることが、自身のエッセイ『いのちの車窓から2』につづられている。
まかない作りを任されるようになったのは、バイトを始めて2年ほど経ったころ。しかしマスターは「いつも見てるんだからわかるだろうに」と、作り方を教えてくれなかった。記憶を頼りに作ると「だめだこりゃ!」と爆笑される。改めて手順を見せてもらっても、自分のやり方と同じに見える。違いを問うと、返ってきた答えはこうだった。
「愛だな、愛が足りない」
それ以来、星野はマスターの調理を注意深く観察するようになる。やがて星野の作ったまかないを食べたマスターは、「お、いいじゃん」と認めたという。
「教わったのはチャンプルーの作り方だけではなく、物事を観察する力、人を見る力だった」(『いのちの車窓から2』)
「ご飯食べてしゃべってるだけ」の番組
ちなみにそのお店の名前は「あしびなー」。沖縄の言葉で「遊ぶ庭」を意味している。
番組初回の最後に星野は、チック・コリアとゲイリー・バートンによる「Radio」を流した。1979年に発表された曲であるが、ピアノとヴィブラフォンの2人だけのデュオというのは、当時としても異色だったという。通常であればドラムやベースが入ったりする。
「2人だけでやるっていうのにすごい豊かさがあって。しかも『Radio』っていうタイトルなんですけど、2人でラジオで話しているような感じもする」
この曲の大半はアドリブで構成され、お互いを「観察」し、感じ取りながら展開していく。『星野源と松重豊のおともだち』もそうだ。台本は行く場所が書かれたペライチのみ。
「2人だけでただどっか行ってご飯食べてしゃべってるだけでいいの? って思う人もいると思うんです。ええんじゃい!って」
星野源はそう言い切る。
いま、世の中には刺激的なコンテンツがあふれている。テレビでもゴールデンタイムの番組なら秒単位でギチギチに情報が詰め込まれ、深夜番組ならばお互いが「お前は間違っている、俺が正しい」と“本音っぽい”言葉で主張し合うような番組が少なくない。
けれど、そうでない番組があったっていい。お互いを観察しながら、それぞれを尊重し合って好きな音楽のことをただ語りシェアする。そんなゆったりとした時間を作ることこそが、いまのエンタメの世界ではカウンターになり得る。
星野が「ええんじゃい!」と断言できるのは、そこに「愛」が流れている確信があるからに違いない。
文/戸部田誠(てれびのスキマ)

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