「シルバニアは私の“精神安定剤”」大人が癒やされる理由とは?  40代女性が語る“シル活”のリアル
「シルバニアは私の“精神安定剤”」大人が癒やされる理由とは? 40代女性が語る“シル活”のリアル

手のひらサイズの人形や精巧な家具などを展開する玩具の「シルバニアファミリー」は、2025年に発売から40年を迎えた。そんなシルバニアはここ数年、人形とともに出かけたり、思い出の写真を一緒に撮ったりする“シル活”に夢中になる大人が増えている。

一部の人形は生産が追いつかないほどの人気ぶりだ。なぜ今、シルバニアなのか。当事者や関係者に取材した。

不安やストレスの多い現代に反し“最も平和な理想の世界”

「私にとって、シルバニアは“薬”のような存在です」

そう話すのは、関西在住のモモさん(40代後半)だ。

「精神安定剤のような役割を担ってくれており、シルバニアを見つめたり、触ったりしているとホッとして穏やかに眠れるんです。

以前、パニック障害を患い薬を服用していた時代がありました。今はもう飲んでいないのですが、歯科医や電車内など苦手な場所で不安になったときには、カバンに忍ばせているシルバニアを覗き込んだり触れたりすると乗り越えられるんです。

イライラしたときにも、お気に入りのシルバニアを愛でていると、不思議と心が落ち着いていきます」(モモさん)

モモさんだけではない。今回取材をした中で複数の大人(20代前半~50代前半)が同様のことを述べていた。社会心理学者の碓井真史氏はこう分析する。

「先行きの見えない不安な現代に反し、シルバニアファミリーには、病気も喧嘩も、偏差値争いもリストラも心配することはありません。ある意味で、最も平和で、完璧な理想の世界なんです。

おままごとの世界や人間の人形だと、メイク・洋服が『古臭くない?』と言われる懸念があったり、ごっこ遊びの中での言い争いが生まれることもありますが、キャラクター自体が“動物”であるがゆえに理想像を追求しやすいんです」(碓井氏)

シルバニアファミリーを開発するエポック社の担当者に話を聞くと、40年間積み上げてきた細部へのこだわりも見えてくる。

「3歳以上のお子さまが安全に楽しく遊べることを大前提に、大人の目にも十分にかなう丁寧で細やかな“本物志向”のものづくりを大切にしています。

ここ5~6年ほどは、おもちゃ売り場のみならずコンビニや雑貨屋にて“赤ちゃんコレクション”シリーズを展開。SNSとの相性の良さもあり、みなさんの目に触れやすくなったことが人気を支えてくれています」

遊ぶから“愛でる”へ…大人がハマるシルバニアの世界

XやInstagramなどのSNSには、「#シルバニアファミリー」「#シル活」などのワードとともにお気に入りの人形とカフェでお茶をする写真がアップされていたり、部屋中をシルバニアで飾っている人も少なくない。

前出のモモさんは、5年ほど前に手芸店を訪れた際、店内の一角に見つけた“シマネコの赤ちゃん”に懐かしさを覚え購入。今も一番のお気に入りのその人形は、ケースに入れて頻繁に持ち歩くほか、部屋にある“シルバニアビルディング”は日に日に巨大化している。

「幼少期、グレーウサギのファミリーを買ってもらい、何かを頑張るとひとつ、またひとつと買ってもらっていました。しかし、実家を離れたあとに近所のお子さんたちに譲ってしまったようで、その寂しさの反動と、懐かしい温かな気持ちから買い集めています。

ビルディングは高くなりすぎて不安定になってきたため、今は箱庭療法(砂を入れた箱にミニチュアの人・動物・乗り物などを置き自由に表現したり、心の深部を知る心理療法)のように並べて眺めたり着せ替えたり、お洋服を作ったりしています」

発売当初のファミリーの中には少し大きめだったものもあるが、遊びやすさが追求され、徐々にサイズが統一されていったシルバニアファミリー。着せ替えもしやすくなり、現在では多くのフリマサイトでハンドメイドの洋服の売買も行なわれている。(※売買について。エポック社では玩具としての安全上の観点も含め、推奨はしていないhttps://epoch.jp/support/important-notice/article/20241216.php)

月日を重ね、幼少時代にシルバニアで遊んでいた女性が母になり、子どもたちに譲り渡したあとに再燃するケースも少なくない。

子どもも大人も楽しめるシルバニアファミリーだが、子どもと大人では楽しみ方が異なるようだ。前出の碓井氏はいう。

「大人は“静的”に楽しむ方がほとんどです。時々、冒険をさせるように旅に伴って一体感を高めることはありますが、基本的には自宅の一角に飾り、その世界観を眺めてはノスタルジーに浸ったりします。友人と出かければ、本当は食べたくないご飯にお金を遣ったり、時には文句を言われたりしますが、シルバニアのお人形ならばそれがないのも魅力なのでしょう。

シルバニアファミリーのお人形はぬいぐるみや他のものよりもサイズが小さいため、大人も抵抗感なく持ち運びやすいのもよいのでは」

ごっこ遊びが育てる、想像力とやさしさ

もちろん、子どもの教育にもよさそうだ。

「子どもはごっこ遊びとして“動的”な遊び方をするのが一般的です。食卓があって、お風呂があって、お父さん・お母さんがいて。子どもたちは脳内で想像してその人の役を演じます。ママ役になれば『好き嫌いはよくないでしょう』『お注射頑張ろうね』などと言い、母親に普段言われていることを言いながら一人芝居をします。

それは、実生活で注射を打つときに『私、頑張らなくちゃ』という意識をもつことにつながりますし、人の気持ちの痛みや喜びを感じとることができます。豊かな心を育て、互いを理解し、助け合うごっこ遊びは情操教育にふさわしい玩具のひとつなのです」(前出・碓井氏)

時代が変わり、玩具も多種多様になってきた。シルバニアファミリーも、少しずつ変容を遂げている。

「自然・家族・愛という世代や文化を超えて共有されるコンセプトは変わらずに、時代の流れに合わせて家具(二層式洗濯機→ドラム式洗濯機など)は進化させています。

『子どもたちに自由に遊んでほしい』という思いから、当初国内ではお人形に名前をつけていませんでしたが、国や文化を超えて思い出を共有してほしいという願いを込め、近年名前の世界共通化をはかりました。

一方で、代表的な人形の顔の原型は発売当初から変わっていません。あえて固定の表情をつけずに、シンプルな黒目にすることで、見た人や気持ちに寄り添った表情を読みとりやすくしています」(エポック社の担当者)

人気が加熱する中、“ニセモノ”も流通している。「お客さまに安全に遊んでいただくためにも、商品は全国のおもちゃ売り場、またはシルバニアファミリー専門店でお買い求めいただきたい」とエポック社の担当者はいう。

シルバニファミリーは奥が深い。

取材・文/山田千穂 集英社オンライン編集部ニュース班

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