「1人は気楽。でも寂しい」──両親を亡くし、きょうだいもいない医療系営業の49歳男性。
新刊『モテない中年 恋愛格差と孤独を超えて』より一部抜粋・再構成してお届けする。
「誰かと生きる」ことへの憧れ
まさに茨の道であり、困難しかない40代以降の婚活。それでも「結婚したい」という気持ちが湧いてくる背景には、何があるのだろうか。
医療関係の会社で営業の仕事をしている春日修一さん(仮名、49歳)40歳を過ぎてから婚活を始めた。現在に至るまで6年ほど、婚活パーティやイベント、コミュニティへの参加を続けている春日さんがいう。
「結婚したい理由を改めて考えると、『誰かと一緒に生きてみたい』『新しい価値観を取り入れたい』という気持ちに尽きます。僕は一度も結婚したことがなく、誰かと一緒に暮らした経験もありません。両親も既に亡くなっており、きょうだいもいない。
好きな時間に寝て、好きなものを食べて、好きな場所に行ける、という1人の生活は、確かに気楽です。でも、どこかで寂しさがある。30代の頃に比べれば、友人と飲みに行く機会もだいぶ減りました。
毎日を誰かと共有することでしか生まれない新しい価値観とか、生活のリズムとか、そういうものを味わってみたいんです。相手から学ぶことも多いでしょうし、きっと、自分の世界が広がると思う。
もちろん、将来への不安もあります。歳を取るにつれて、健康や仕事のことも考えるようになる。そんなとき、『1人で大丈夫かな』と思う瞬間が増えてきました。
周りを見渡せば、独身を貫いている友人もいます。彼らは『1人の方が気楽だ』と言い切る。中には、『情熱を傾けられるものがあるので独身でいたい』という人もいます。そうした潔さが、少し羨ましくもあります。彼らは『結婚しない』ことを自分で選び取っている。僕は『結婚したいけど、できない』。そこが決定的に違うんです」
信頼できる相手と穏やかに暮らしたい
「独身者に対するサポート等、何か社会に望むことはあるか」という質問に対して、春日さんはしばらく考えた後、「独身手当」のようなものがあればありがたい、と答えた。
「婚活の費用など、出会いのための活動やサービス利用に使途を限定して使える独身手当のような制度があれば良いなと思います。
独身であることは自己責任のように言われていますが、恋愛や結婚に至るような関係性は、学校のクラスや部活、職場や趣味のサークルのような、お互いに時間・空間・目的を共有できる何らかのコミュニティがないと、そもそも発生・発展しづらいのではないでしょうか。
そうしたコミュニティがない状態で、いきなり婚活パーティのようなことをやって男女をマッチングしても、関係性は深まらないし、お互いに見た目や年齢だけで相手を表面的にジャッジして終わってしまう。
出会いが発生し、関係が発展する可能性のあるコミュニティに参加するための費用を独身手当として支給する、という制度があれば、今の倍くらいは、そうしたコミュニティのイベントなどに参加したいですね。そのうえで、1人の女性だけにお金を使って、信頼関係を積み重ねていきたいです。あちこちのイベントで参加費を浪費しても、誰とも関係性を積み上げることはできないので」
相手への信頼と関係性の積み上げを重視する春日さんとしては、異性と付き合ううえで本当に大事なのは「一緒に過ごす時間の心地よさ」だと考えている。
「婚活を続けていると、年齢や条件といった数字ばかりが前に出てきます。でも、この年齢になると、恋愛の駆け引きよりも、信頼できる相手と穏やかに暮らすことの方が魅力的に感じますね。
たとえ現実が厳しくても、やっぱり僕は結婚したい。それは、ただ『1人が寂しいから』ではなくて、『誰かと一緒に生きることで、自分の人生をもう一度新しくしたい』という思いなんです。婚活はうまくいかないことの方が多い。
今僕は49歳ですが、50代になっても、まだパートナーを探し続けているかもしれません。でも、それでもいい。『誰かと出会いたい』という気持ちは、年齢とは関係なく、人としての自然な願いだと思うので」
年齢の壁は努力では越えられない
春日さんは、安定した仕事と収入があり、社交性も高く、異性とのコミュニケーション能力もスムーズに行うことができる男性である。そして結婚願望もある。しかし、どれだけ努力を重ね、婚活に時間を費やしても、パートナーが見つからない。
40歳を過ぎてから、一度も女性と交際に至ったことがない。春日さんと同じような状況に追い込まれ、同じ悩みを抱えている40代の中年男性は、日本全国に数え切れないほどいるはずだ。
年齢の壁は、努力では越えられない。婚活については、スポーツと同様で、ある一定の年齢を越えてしまうと、どれだけ努力しても、それに見合った成果が得られなくなってしまう。
高校まで野球を一切したことがない人が、高校から硬式野球部に入って甲子園を目指すこと自体は可能である。しかし、実際に甲子園にレギュラーで出場できる可能性は、限りなくゼロに近い。
ゴールデンエイジと呼ばれる小学校中学年~高学年の間に始めないと、後から挽回することは難しい。
結婚の時期に関しては、「個人の価値観やライフスタイルに合わせて、柔軟に検討されるべき」という考え方が広まり、他人の結婚の時期についてあれこれ言及すること自体がハラスメントになっているが、「年齢的に結婚しやすい時期を逃すと、結婚は極めて難しくなる」という当たり前の事実は、今も昔も変わっていない。おそらく、これからも変わらないだろう。
これは事実の問題であり、善悪の問題でもなければ、政治的に正しい/間違っている、という問題でもない。誰かや何かのせいにしても、「年齢の壁は努力では越えられない」という問題は、決して解決しない。
文/坂爪真吾
『モテない中年 恋愛格差と孤独を超えて』(PHP研究所)
坂爪真吾
中年はつらいよ!
なぜ私たちは何歳になっても「モテる/モテない」の呪縛から逃れられないのか。
異性と関わることができない苦しみ、独身を謳歌していても訪れる寂しさ、既婚者の脳裏をよぎる不倫やパパ活への欲求。
そうした呪いに縛られるのはあなたのせいではない。
性と孤独をめぐる問題に最前線で向き合い続けてきた著者による、5人の中年男性へのインタビューを通して浮かび上がってきたリアルとは。
【本書の要点】
●「モテる/モテない」の呪いは何歳になっても残る
●未婚男性がマジョリティになる時代の到来?
●婚活で「年齢の壁」は越えられない
●「人の話を聞く力」がますます大切になる
●「モテる力」よりも必要な「同居力」
●自分が選べない不自由なものを探す
【目次】
はじめに
第1章:なぜ私たちは「モテる/モテない」に踊らされるのか
第2章:日本の恋愛をめぐる150年史
第3章:バツイチのシングルファザーの孤独
第4章:孤独だった少年が孤独を楽しめる大人になるまで
第5章:ギャンブル依存と満たされない性
第6章:結婚相談所代表が離婚した理由
終 章:「モテる/モテない」という呪縛からの解放
おわりに

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