裏金議員が大量当選→42人がまた国政へ…中道・野田氏「争点が全部かき消された」萩生田氏の支持者は「裏金問題は仕組まれたもの」
裏金議員が大量当選→42人がまた国政へ…中道・野田氏「争点が全部かき消された」萩生田氏の支持者は「裏金問題は仕組まれたもの」

8日に投開票があった衆議院選挙。自民党の旧安倍派を中心とした、政治資金収支報告書に不記載のあった「裏金関係候補」44人が出馬し、うち42人が当選した。

46人の裏金候補の中で18人しか当選しなかった前回2024年の総選挙とは対照的で、高市旋風によって「政治とカネ」の問題が争点から消えたことがうかがえる。

「政治とカネ」の問題を象徴する場所で大勝利した萩生田氏

「与党が前の衆議院選挙でも去年の参議院選挙でも議席を大きく減らした理由はなんですか。政治不信を招いてそれを解決できなかったからじゃありませんか。自民党が起こした問題であります。これを本格的に解決しようという気迫が見られません。それが証拠にこの選挙区でも裏金を2728万円作っていたという人が立候補してるじゃありませんか。おまけに重複立候補までしている」

選挙戦終盤の2月6日、東京・八王子市を中心とする東京24区で中道の新人候補の応援に入った山口那津男元公明党代表は、今回衆院選の裏金議員の中で不記載額が2番目に多い萩生田光一・自民党幹事長代行が出馬している同選挙区は政治とカネの問題を象徴する場所だと強調し、萩生田氏の追い落としを聴衆に求めた。

しかし結果は萩生田氏が中道新人に約1万5千票差をつけて当選。裏金問題で最も逆風が吹いた2024年選挙で自民党の公認を外された時には、萩生田氏は同選挙区で約3万票あると言われる公明票を味方につけながらも次点候補に約7千500票まで追い上げられた。しかし、今回その公明票が逆に“敵”に回ったにもかかわらず、票差を広げ楽々と逃げ切った。

選挙戦初日の1月27日の第一声では「失敗もして、皆さんに不安な思いや不快な思いをさせました」とあいまいな形で自身の不祥事に触れていた萩生田氏は、選挙戦最終日の2月7日午後の街宣ではそのことに一言も言及しなくなった。

街宣には「裏金2728」などと大書きしたプラカードを持ったプロテスターも登場。萩生田氏が「私たちの故郷をこんな人たちに汚させるわけにはいかないじゃないですか」と非難すると、支持者は拍手と歓声を送った。

70代の支持者は「あんなもの(裏金問題)は仕組まれたものだ」と、問題にならないという見解を示した。

高市首相は「裏金議員っていう言い方はやめてください」

前回も勝ち上がった地力のある萩生田氏だけでなく、今回の衆院選では自民党は裏金問題を問わない姿勢を鮮明にした。関係した前議員について、小選挙区38人と比例単独5人の計43人を公認、重複立候補も認めた。さらに勧告を受け離党した世耕弘成・元参院幹事長も和歌山2区から無所属で出馬し、自民県連が支持した。

結果、小選挙区で公認33人と世耕氏が当選し、落選した3人も比例復活。比例単独の5人は全員当選し、合計42人が当選した。

落選したのは大阪5区の元職・杉田水脈氏と、大阪10区の新人・加納陽之助氏だけで、前回落選した下村博文元文部科学相(東京11区)や丸川珠代・元五輪担当相(東京7区)らビッグネームが次々小選挙区で勝ち抜いた。

その要因としては、やはり高市早苗首相の人気が大きかったようだ。高市首相は公示直前のテレビでの党首討論会で令和新選組の大石あきこ共同代表から裏金議員の公認を非難されると、

「裏金議員っていう言い方はやめてください。ご自身でそれ(記載)が対処できなかった、要は秘書同士だったり、派閥の先輩から秘書同士対応できなかった人もいるし、それで結局それ裏金って言って自分で持っていたんじゃなくて派閥に返したり、色んなことを、みんなそれぞれの事情が違うんですよね。

そんな中できちっと説明責任も果たして、支部による対応も終わって。で、本当に落選で辛い目もして、それでも歯を食いしばって、また選挙に出たい(候補者たちだ)」

などと反論。従来からの持論ではあるが、みそぎを済ませたかどうかが問われるのではなく自分は問題視していないとの姿勢を外に向けて明確にしていた。

そして選挙戦に入り高市氏の個人人気は尻上がりに激増。

「24年の衆院選、昨年の東京都議選と参院選。この三つの重要選挙で自民党が三連敗した主因であった『政治とカネ』の問題は今回衆院選で注目を浴びることもなくなりました」と政界関係者は話す。

野田氏は「争点かき消されたんじゃないかな」 

街で話を聞くと、八王子で山口・公明党特別顧問らの街宣を聞いた20代の女性Aさんは、

「私たちが頑張ってバイトとか色々しながらお金を稼いでる中で、国を守っていくっていう立場の方がお金を、よく言えば賢く、でもすごく悪く使っている。それはやはり一生懸命頑張ってる私たちは馬鹿みたいじゃないですか」

と裏金問題に怒っていた。連れ立って来た友人の20代女性Bさんも、

「裏金って言うけど要は脱税なので。そういう犯罪行為が党の中でまかり通ってたのも許せないですし、まだ話が終わってないのに(当人が)また国の中枢に行こうっていう甘い考えが、本当に何を考えてるのかなって感じます」

と憤りを口にした。

ただ、こうした声が結果に現れなかったのが今回選挙の現実だ。

解散時の172議席が49議席に激減した中道改革連合の野田佳彦、斉藤鉄夫両共同代表が自身の引責辞任に触れた9日未明の記者会見で、集英社オンラインは両代表に「有権者はこの問題を今どうみていると選挙戦で感じたか」とたずねてみた。野田氏は「有権者は決して関心がなかったわけではないと思う」と言いながらこう話した。

「政治とカネが争点になるとか、消費税が争点になるとか、物価高が争点になるとか、外交が争点(になるとか)じゃなくて、『そうじゃない(問題じゃないとは思わない)けど高市総理を支持します』というような空気で、全部なんか争点かき消されたんじゃないかなという印象を持ってます」

斉藤氏はこう回答した。

「公明党が(自民との)連立離脱した最大の要因はまさにこの『政治とカネ』の問題でした。

(自民党からは)何ら説明がなかった。今回の総理の解散会見の中でも言及はひとつもありませんでした。そういう意味では大変残念だった。そして実際この問題、選挙戦で大きな関心事にならなかったというのは事実だと思います。そういう意味では残念です」

9日、大勝後初の記者会見で高市首相は、裏金事件に関与した候補が多く当選したことに絡み「政治とカネの問題で国民の理解が得られたと考えるか」と聞かれると、「今回の選挙で国民の皆様の理解を得られたと申し上げる考えはございません」と返答。

しかし「このような問題を2度と起こさないことが大切であります」「新しい事実があった場合には厳正に対処してまいります」と応じ、過去のことは問わない姿勢を改めて明確にした。

裏金を問題視してきた最大野党が壊滅的な敗北を喫したいま、問題はこのまま収束するのだろうか。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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