「ぶっちゃけマジで、しんどい」渡辺直美とゆりやん、アメリカでもがく二人の女芸人…テレビで見せた意外な涙の真相とは
「ぶっちゃけマジで、しんどい」渡辺直美とゆりやん、アメリカでもがく二人の女芸人…テレビで見せた意外な涙の真相とは

テレビはまだまだトガっている。心に“刺さった”番組を語るリレー連載「今週のトガりテレビ」。

今回は、テレビウォッチャーの飲用てれびが、海外での挑戦を続ける女性芸人について注目する。

海外挑戦を続ける二人の女性芸人

芸人がアメリカに活動拠点を移す。そんなケースはこれまで複数あった。ただ、そうしたチャレンジに対しては、「どうせ成功しない」「すぐに戻ってくる」といった冷ややかな見方も少なからずあったように思う。

そのたびに私たちは何を見て、何を見落としてきただろうか。

先週は、渡米した芸人のうち、2人の女性が別々の番組で特集されていた。そして、その歩みは別々のリズムで進んでいた。

2月5日の『アメトーーク!』(テレビ朝日系)でピックアップされていたのは渡辺直美。大悟(千鳥)や吉村崇平成ノブシコブシ)、友近といった旧知の芸人たちも交え、渡辺自身が半生や現在の活動などを語る回だった。

渡辺に海外の仕事のオファーが舞い込むようになったのは、2016年ごろ。本人いわく、そのころはまだ日本での活動を続けるつもりだった。しかし、大悟から「いまお前がやってる日本の仕事はワシらでもできる。でも、アメリカの仕事はお前にしかできない」と言われ、背中を押されたのだという。

「そのひとことで、内側にあった、もっと海外で挑戦してみたいっていう気持ちが、ぶわって出てきて」

その後、2021年に渡辺は活動拠点をニューヨークに移した。翌2022年にはビヨンセ側からブランドの広告モデルに指名され、2023年には全米7都市でトークライブを開催した。今年の春からは北米18都市でツアーも開催予定だ。

日本を飛び出し、「拡張」する渡辺直美。日本で活動しているころから華やかだった渡辺は、さらに輝きを増したように映る。

一方、2月7日の『アナザースカイ』(日本テレビ系)で密着されていたのは、ゆりやんレトリィバァだ。彼女がアメリカ・ロサンゼルスに拠点を移したのは2024年。渡米からまだ1年ほどだが、今回の密着で印象的だったのは、テレビカメラを向けられた際の振る舞いの変化だった。

真剣な表情で本音を語るゆりやん

日本にいたころのゆりやんをひと言で表すなら、「ふざけ倒し」だろう。有名なのは、吉本興業のいわゆる「闇営業」問題のときの対応だ。記者からの質問に対して、泣きそうな表情を浮かべながら目頭を押さえてうつむいたゆりやんは、次の瞬間、カメラにいつもの変顔を向けていた。

しかし、今回の『アナザースカイ』では、そうした「ふざけ倒し」はほとんど見られなかった。

たとえば、スタンダップコメディに挑戦する場面では、「難しいです。

やれどもやれども、自分の声が届いてない感じがする」「ちゃんと自分も心からおもしろいって思ってることを、ちゃんと表現できるようにしたいです」と、英語や文化の壁に悪戦苦闘する様子を正面から語っていた。

アメリカに来て、ゆりやんは自分の内面を見つめるようになったという。演技レッスンがひとつのきっかけだったようだ。講師と対話をしながら役の理解を深めていくなかで、それが「自分を知る感じ。ホントの自分を出していく練習」になった。

有名な「HOLLY WOOD」の看板を望む高台でのシーンが象徴的だ。ゆりやんは言う。

「いまこの瞬間は、焦ってはないですね」

その直後、少し時間をおいて考え直し、「なんか、焦ってはないって言って、強がってるのかもしれない、本当は」と言葉を重ねる。そして、感極まったような表情になった。

VTRを見るワイプの今田耕司が「出た、伝家の宝刀」とコメントする。例の「闇営業」問題の対応を思わせる空気が一瞬流れる。が、彼女の表情は変顔ではなかった。

頬を涙が伝う。「ちょっとこれ、心配されますよね(笑)」と笑いながら、ゆりやんは続ける。

「焦ってるのに、焦ってないって言ってた」「がんばってるって人に言えない。でも、ホントはがんばってる、だったんだ、って。でも、何にもつながってないんだ、っていう」

アメリカに拠点を移す。それは、外から見れば自分を「拡張」する選択に映る。だが同時に、個人の文脈が剥がされていく過程でもある。そんな環境のなかで、ゆりやんは自分の内側と対話する。そうして自分の内側に「縮小」し、アメリカに打ち立てる自分の旗をつくろうとする。

それは声を大きくすることではなく、何度も自分の声を聞き直す営みに近い。

「ぶっちゃけマジで、しんどいんすよね」渡辺直美の本音

これはなにも、グローバルに活躍する人たちだけの話ではないだろう。剥き出しの個人として「いま何ができるか」を問われがちな社会のなかで、私たちの多くがいつの間にか選ばされる道でもある。

別の番組で、渡辺もこう語っていたことがある。

「ぶっちゃけマジで、しんどいんすよね。仕事の交渉とかも自分でやってるんで、いくら口でこういうふうなことやりたい、ああいうふうなことやりたいって言っても、やっぱりみんな、その場で見せないと納得してくれないので。(中略)だからやっぱ心折れそうになることもめちゃくちゃいっぱいあって」(『笑いの正体』NHK総合、2022年7月5日)

もし、今回のゆりやんの心の揺れが「弱さ」に見えるのだとしたら、それは彼女が弱いからではない。未完成な状態の揺れを、社会が待てないからだ。人が変わりつつある過程そのものが、評価の外に置かれてしまうからだ。

もちろん、いつまでも待てるわけではない。ゆりやん自身、「自分が好きなことやってても、ウケてなかったら意味ない」と語る。けれど、「いつまでも待てない」という現実を、「すぐに結果をだすべき」と置き換えてしまうのは拙速だ。

その拙速さが、「どうせ成功しない」「すぐに戻ってくる」という評価に私たちを飛びつかせてしまうのだろう。

「(ロサンゼルスで)華やかな生活スタート、みたいに思ってたんですけど、こんなに自分というものに直面させられるか、みたいな。でも、とにかく、答えはわかんないんですけど、自分を紐解いていくみたいなのが、いまは楽しい。

ちょっとずつわかったり気づくこともうれしいです」

結果の手前で揺れながら進む。その姿を、冷ややかに見ることはできなかった。

文/飲用てれび

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