秋田市のふるさと納税の返礼品の送り状に印字されていた部署名が、SNSで話題になった。その名も、『秋田市 人口減少・移住定住対策課』。
秋田県では今、何が起こっているのか。同課の主席主査の担当者に、課の設置の経緯、危機感、そして日々の業務の中身について話を聞いた。
急激な人口減少
まず気になるのは、この部署がいつからあるのか。いきなり課ができたわけではないという。
「秋田市の総合計画などを定めてる企画調整課という部署があるんですが、平成27(2015)年度にその企画調整課の中に『人口減少対策担当』という担当を置くことになりました」(同課・担当者、以下同)
その部署で、人口減少対策を進めるうえでの“総合戦略”をまとめ、人口減少対策に関する取り組みを進めてきたという。
「人口減少は大きくわけると自然減と社会減の2つがあるのですが、この『人口減少・移住定住対策課』では人口減少対策に関する調整と移住定住といった社会減対策に力を入れて動いています」
秋田県では日本全国でも人口減少スピードが特に速く、毎年、一つの町がなくなるほどの速さで人口が減っている。2025年の1年間では自然減が約1万4000人、社会減が約3400人で、合わせて約1万7400人減った。
「秋田市では、子どもの生まれる数は過去最少を毎年更新し、死亡数が逆に過去最高を毎年更新していっているような状況が続いています」
人口減少によって、担い手不足で商店街は縮小し、交通網は維持が難しくなり、空き家が増える。雪国では除雪も深刻な問題だ。
「温暖化の影響で年によっては雪が一度にたくさん降ることもあり、高齢の方だと雪よせが大変で。空き家が増えてくると、崩壊や近隣への影響もあり危険です」
さらに「今一番の課題」と語るのは、目に見える問題のさらに奥にある感覚だった。
「若い方が流出してしまうと、まちがどんどん元気がなくなっていく。まちにとってのエネルギーや、将来、未来への希望などが薄れてしまうのです」
かといって、少子化による自然減を止めることは、国としても全く達成できていない。だからこそ秋田市では、地域の魅力を高めることで社会減を緩和しようとしている。
秋田市に残りたいけど残れない理由
「市民への意識調査の中で「秋田市に住み続けるために必要なこと」の1位が『雇用の場の確保』という結果がでました。若い方々が将来の進路や暮らしの選択を行なう上で、やりがいある仕事や挑戦できる環境が、一番重要な要素でもあります」
秋田市内には、高校生・大学生だけで約1万6000人おり、国公立大学には県外から来た人が66.2%と多く、秋田に魅力を感じて、卒業後も県内に残ることを希望する学生が多くいる一方で、雇用の問題から、やはり県外に出てしまうという。
そこでこの人口減少・移住定住対策課が、問題解消のために動いている。課には大きく分けて担当が4つ。地方創生担当、移住定住担当、プロモーション担当、ふるさと納税推進担当がある。
ふるさと納税推進担当は、今回の話題の起点にもなった部門だ。寄付の拡大や、寄付を通じた関係の創出に取り組んでいる。。
移住定住担当は、首都圏の移住相談窓口である「移住相談八重洲センター」と連携して、移住者への補助金や仕事・住まい・子育て環境の相談に、ワンストップできめ細かい対応をしているほか、移住相談ツアーや移住者向けのイベントの企画といった業務を日常的に行なっている。
そして地方創生担当は、全庁を横断する調整役。
そして最後が、プロモーション担当だ。
「秋田市の魅力をプロモーションをする業務を行なっています」
プロモーション施策の柱のひとつとして、映像制作を軸にした地域人材育成の取り組みが続けられている。
「今後、秋田市に学生が多くいるまちである個性をフル活用し、若い人たちがチャレンジすることを地域が応援するまちにしていきたいと思っています。その一つが、“映像のまち”です。
だれでも映像が気軽に撮れる時代、市民や観光などで秋田市を訪れた方が、秋田市をスマホなどで映像に撮って発信したくなるまちにしたい。AIに頼りがちな時代でもうまく活用しながら思いを表現できるクリエイターを増やしたい。そして、、“映像制作”をキーワードとして、クリエイターや企業などの人の流れを生みたい、と思っています。実は秋田市ではここ数年、地域の高校生や大学生と映画やCM制作を行なう取り組みをしています」
#学生のまち #映像のまち #若者のチャレンジ応援
「それは、『ミラーライアーフィルムズ秋田』や『高校生CM塾』などです。秋田を舞台にした映像を作ることで、地域の魅力を知ることや秋田のプロモーションにもつながるし、学生たちは映像制作やクリエイティブなスキル、課題解決力が身につくとともに、学生のうちに社会勉強をする機会にもなります。首都圏のプロの方と一緒に行なう取り組みにより、地方でも挑戦できるというマインドを育てています」
こうすることで実際、地方でもクリエイターとして自分の力を発揮できると気づき始める学生が増え、起業したいと考える人も出ているという。
こうした動きの狙いの先にあるのは、秋田に根付くマインドや先入観を変えることだ。
「秋田のマインドとして、『秋田には何もない』と自虐的に口にする県民性があります。でも本当は、一歩踏み出せば、まちを『おもしろくしたい』と活動するいろんな人とのつながりの中から学べるし、自分が動けばやりたいことができる。
秋田には何もないのではなく、“真っ白いキャンバス”みたいに可能性が秘められているまちだというところを、まず若い人や秋田市民にも知ってもらう。そういうところも含めて、この課が動いています」
こうした動きの成果もあり、秋田市は宝島社「田舎暮らしの本」2月号「2026年版第14回「住みたい田舎ベストランキング 人口20万人以上の市ランキング」で、4年連続「若者世代・単身者部門で1位を獲得するなど、若者にとって魅力あるまちへと変化している。
人が集まる場所と、集まらない場所が分かれていく一極集中のなかで、「人口減少・移住定住対策課」は生まれた。その名前は、いまの地方の現実をそのまま表している。
取材・文/集英社オンライン編集部 写真/秋田市 人口減少・移住定住対策課提供

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