『THE W』で辛口評価の粗品へ意外なアンサー…「“下ネタの神様”に愛されているのかも」紺野ぶるまという才能の正体
『THE W』で辛口評価の粗品へ意外なアンサー…「“下ネタの神様”に愛されているのかも」紺野ぶるまという才能の正体

大胆な下ネタを軽やかに笑いとして提供し、人気を集める女性芸人がいる。松竹芸能所属の紺野ぶるまだ。

『R-1ぐらんぷり』(現・R-1グランプリ)、『女芸人No.1決定戦 THE W』といった賞レースで決勝に進むなど、その実力は折り紙つき。さらには、ラップやエッセイなど表現の場も広げている。“キワモノ”とも捉えられかねない下ネタと、彼女はどのように向き合っているのか。(前後編の前編)

驚異的!ショート動画で62万いいね

「芽吹きました」

カウンターベルを“チーン”と鳴らしながら、すべてのお題を男性の股間で解いていく――。これが紺野ぶるまの持ちネタ「下ネタなぞかけ」の決まり文句だ。

このほかにも様々な下ネタのバリエーションがあり、2025年12月10日にテレビ朝日公式YouTubeチャンネル『動画、はじめてみました』で公開された漢字ネタは、2月5日時点で視聴回数が3968万回、高評価の「いいね」は62万を超えている。(同チャンネルのショート動画では1位)

――『動画、はじめてみました』の人気企画「まいにち賞レース 神速49秒」内で披露した漢字ネタは、いいね数が60万を超えています。動画を見ただけではなく、リアクションを起こした人がこれだけいるのはすごいことですね。

紺野ぶるま(以下、同) そうなんですか! いいねの数は注目してなかったんですよ。60万人って想像つかないですが、嬉しいです。

――60万人ともなると、年齢・性別問わず幅広い層から支持を得ていそうですね。

紺野 YouTubeだといろんな世代の方が時間に縛られず見てもらえますもんね。字幕もいろんな国の言語で翻訳できるみたいですし、台湾の方から「彼女は必ずや台湾でも人気が出る」みたいなコメントを見て驚きました(笑)。

私は個人的には、あまりYouTubeをそんなに活発にやってこなかったんです。テレビが好きで、テレビに出たいと思って始めた芸人なので。でも最近、やっぱりSNSやネットもすごいなと感じます。

それと、女性の中には周りに人がいると下ネタって笑いづらいと思う人もいると思うんですけど、YouTube動画なら気軽に見てもらえるのでありがたいです。

紺野が芸人を目指したのは、21歳のとき。当時の彼女は、下ネタではなく、まったくテイストの違うネタを行なっていたという。

――松竹芸能には当初モデルなどを目指して入られたそうですが、そこから芸人を目指すようになったきっかけを教えてください。

紺野 くまだまさしさんとハイキングウォーキングさんがやられていた「ブルマパーティー」っていうネタを見て、“こんな大人になりたいな”と思ったのがきっかけです(笑)。地元の友達とコンビを組んでいたのですが、友達が就職したのでピンでやっていくことにしました。

最初の頃は、くまだまさしさんみたいに紺色のブルマを履いて、思いっきり元気よくやれば笑ってもらえると思っていました。でも21歳の女の人がブルマで、しかも生足だったので生々しいというか。“ちょっと違うのかもしれない…”という感触がありました。

――女性らしさを活かそうと考えていたんですか?

紺野 いえいえ、むしろ逆です。女性らしさを捨てることで笑ってもらえると思ったんです。でも、どんなに“女を捨てたネタ”であろうが、舞台に出た瞬間の客席からの第一印象は、女性。それは拭えないんだなって思って、5年目ぐらいで自分のやりたかったお笑いの形は諦めたみたいな感じです。

伊集院光の言葉で変わった道

――言葉が難しいのですが、紺野さんはおきれいじゃないですか? だからこそ、身体を張ったネタが生々しく見えてしまう可能性はありますか?

紺野 (髪をかき上げながら)そうですね、きれいですね。

というのは置いておいて(笑)。“誰がやっても”じゃないかなと思います。ああいうネタってビジュアルより人を選ぶんです。みんながみんな、自分がやりたいお笑いスタイルをできるわけじゃない。私には向いてないジャンルだと思いました。

ちょうどその頃、お芝居の舞台に2回くらい出させてもらったんですが、演技をするためには台本をなぞるじゃないですか。そこで“あ、こうやってお話って書くんだ”と理解して、私もコントを書いてみたらしっくりきて。それから、台本(シナリオ)を作るコントを始めたんです。

――そのときから下ネタは取り入れていたんですか?

紺野 当時はフックでほんのちょっと入っていたくらいで、基本的には普通のコントでした。

下ネタを始めたのは、ねづっちさんが主催する「なぞかけライブ企画」です。ただ、松竹芸能は「下ネタはよくない。ちゃんと台本を作るお笑いをすべき」という会社なので、下ネタはどちらかというとライブでこっそり会場に足を運んでくれたお客さんを盛り上げるためにやるネタ(笑)。

長く続くと思わなかったし、そもそもテレビで披露できるとも思っていなかったです。

――下ネタを堂々とできると感じたのはいつでしたか?

紺野 下ネタを始めてから2年後くらいだったと思うんですけど、「お願い!ランキング」で初めて私の下ネタが放送されたんです。それまではやっぱり落ちたお笑いだとか批判的な声が多かったのですが、その後すぐに、伊集院光さんがラジオ番組で、「紺野ぶるまはすごく難しい芸事をしている」と言ってくださって。

そうしたら、親も会社も友達もみんな寝返って、「あの子は難しい芸事をしている」っていう認識になりました(笑)。

――下ネタで笑う人は多いけれど、人前で堂々と笑っていいのか迷うときもある。難しいフィールドではないかと感じます。

紺野 たぶんみんなが嫌いな下ネタは、「つまらない下ネタ」ですよね。下品なだけだったり、ただそのワードを使っているだけだったり、自分の体験談を語るだけだったり、生々しすぎて笑えなかったり。

そういったものをひとくくりに「下ネタ」と言っちゃっている。

私もそういうワードは使うけど、「面白い」が上回るようにしているんです。そもそも始めたころは下ネタっていう感覚もなくて、「このお題でなぞかけをするなら、いろんな言葉がある中でこのワードが面白い」と考えてました。「ちゃんと面白い」と思ってもらえて、笑ってくれたらうれしいですね。

甘さを見逃さない人がいることは大事

紺野のネタは、下ネタだけではない。2025年12月に行われた『THE W』では下ネタを封印しながらも準優勝となった。ただし、紺野自身は今でも「私は下ネタに向いている」と感じているという。

――紺野さんの下ネタは、年齢や性別を問わず広く受けています。なぜ、紺野さんは下ネタがハマったと思いますか。

紺野 すごく向いているんだと思います。下ネタの神様がついているというか(笑)。

下ネタを封印して4分間のネタを作れって言われたら、ノート1冊を使い切るくらい考えてやっとできましたという感じ。

『THE W』の1本目で披露した落語のネタも8年くらい前、いやもっと前からやっていて、「やっといい感じになったかも」という感じです。

でも下ネタで4分と言われたら、多分4分半ぐらいで作れる(笑)。じゃあ、蕎麦なら「コシが強い・弱い…硬い・柔らかい…細い・太い…あなたの『そば』にいます…とか」ポンポンと頭に浮かぶんです。自分でも「なんだ、この力は」みたいな(笑)。

あとは、汁っけを出さないように、生々しくしないようにしています。やっぱりカラッとしていて、みんなが笑えることが大事だと思うので。

去年の『THE W』では、初めて審査員を務めた霜降り明星の粗品による辛口な審査や、「賞金1000万円にしてはレベルの低い大会だった」と大会そのものへの言及が物議をかもした。この一連の騒動を、現場にいた紺野はどのように捉えているのだろうか。

――今回の『THE W』は、粗品さんの発言にも注目が集まりました。紺野さんはどのように見ていますか。

紺野 わたしは、めっちゃいいと思っていました。まず、「THE W」の参加者は1000組くらいで、決勝に出るのは8人ほど。

他の賞レースと比べて一番分母が少ない大会なので、レベル感は仕方ないかなと。もちろん上げたい気持ちはあります。

ただ変な話、粗品くんのコメントが注目されて、TVerの視聴ランキングでも1位になった。私、今までで一番ネタについての感想をもらったんです。

もちろん私はあの日にネタがハマったからそう思えるけど、もし万が一、やりきれていない日だったら辛かったと思います。でもやっぱり、見てもらわないことには始まらないですから。

来年は出場者が粗品くんを意識してネタを作るから、レベルが上がるはず。もちろんみんな、いろんなお客さんの前でやっているけど、甘さを見逃さない人がいるって大事なこと。そういった人がいることを意識することによって絶対面白くなると思うので、私は結果的にプラスになると思います。

お笑いに対して語る紺野の眼差しは真剣そのものであった。それは自身のお笑いスタイルを揶揄された経験があるからこそ、「面白さ」に対して考え抜くことをやめないからだ。「テレビ向きではない笑い」そう周りに言われても、「それでも誰かに笑ってもらいたい」と笑った彼女は、まさにお笑い芸人だ。(#2へつづく)

取材・文/羽田健治 
(撮影/矢島泰輔)

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