〈72歳で現役レスラー〉藤波辰爾が明かす「体が動き続ける人」の朝習慣…秘訣はベッドの中の5分
〈72歳で現役レスラー〉藤波辰爾が明かす「体が動き続ける人」の朝習慣…秘訣はベッドの中の5分

今年、キャリア55年を迎えるプロレス界の大ベテラン、藤波辰爾。年齢は72歳を迎えたが、若き日に“マッチョ・ドラゴン”と呼ばれた肉体は健在で、70歳すぎとは思えないコンディションを維持している。

そして今回、『マッチョ・ドラ式トレーニング 古希でも闘える体づくり』という中高年のためのストレッチ&トレーニング本を出版した藤波に、長く現役を続けてこられた秘訣と、これまでおこなってきたトレーニングを語ってもらった。

「72歳でも現役」の秘訣は毎朝のストレッチ

——今回、『マッチョ・ドラゴン式トレーニング 古希でも闘える体づくり』という本を出されて、かなり反響があったんじゃないですか?

藤波 ありがたいことに、発売前からSNSなんかも含めて「予約しましたよ」とか言ってくれる人が多いんですよ。みんな興味を持ってくれたみたいで。

――考えてみたら、藤波さんと長州さんの「名勝負数え歌」と言われた一連の闘い(1982~1984年)や、飛龍革命(1988年)に少年時代、熱狂した世代もすでに50代ですからね。

藤波 熱い世代だよね。そして50代っていうのは、まだまだこれからですよ。だから適度な運動を続けて、健康面が大事になってくるだろうね。

――藤波さんは、プロレスラーとしてのキャリアが2026年で55年。年齢は72歳ですけど、これだけ長く現役を続けられた秘訣は、やはりコンディショニングを常に大事にしていたからですか?

藤波 そうですね。やっぱりコンディションが整ってないとリングには立てないんで。ただ、長く続けるためにコンディションを整えるというより、現役として当たり前のことを続けてきたら、この年齢になっていたという感じなんだけどね。もちろん、この年齢になれば身体のいろんなところに痛みは抱えているし、それとの騙し合いなんだけど、自分の中では「リングに上がりたい」という気持ちがいちばんだから。その積み重ねでここまで来た感じかな。



――現役レスラーとしてのルーティンを絶えず続けてきたからこそだと。

藤波 やっぱり継続が大事だね。これは一般の人も同じで、普段運動してなかった人がこれからジムに通って週3回ウェートトレーニングするとか、毎日ランニングを始めて、それを長く続けるっていうのはなかなかハードルが高いと思うんだよね。

でも、朝起きてベッドの上でそのままストレッチをするというくらいなら、今日からでもできるんじゃないかな。僕がいま、毎日欠かさずやっているのはそれだしね。

――この本でも「70歳を超えても現役でいられる秘訣は、毎朝のストレッチ」と書かれてますもんね。

藤波 僕も20代、30代までは強い負荷のトレーニングをしてきたんですよ。でも、40代、50代になると無理しちゃいけない、ハードな運動は逆に控えたほうがよくなる。重いバーベルを挙げるんじゃなく、軽くていいから毎日回数をこなす。こうすると身体に負担がかからず、体調も良くなるんだよね。僕の場合は、35歳の時に重度の椎間板ヘルニアで腰を悪くしたので、それが身体を労わるきっかけになったね。

選手生命の危機ともいえた大けが

――体重180キロのビッグバン・ベイダー戦で腰を痛めて、一時は選手生命の危機だったんですよね。

藤波 そう。

あの時は地獄だったね。あまりの痛みで夜も眠れないし、自力で歩くこともできない。トイレに行くにも妻の補助がなきゃ行けないんだから。

僕は運良く1年3カ月で復帰できたんだけど、あの時、自分の身体の“手入れ”を常日頃からやり続けなきゃいけないんだなということを痛感して、そうして始めたのが起床後のストレッチなんですよ。もう35年以上続けてますけどね。

――そんなに長く続けられてるんですね。

藤波 自分たちのような格闘を生業とする職業は毎日運動するのが当たり前ではあるんだけど、やっぱり僕らも人間だから時には億劫になるし、身体のどこかが痛かったりすると、「今日はジムに行くのはやめておこうかな」「明日やればいいか」と、思ってしまったりするんだよね。でも、これが1日休むだけならいいけど、数日休んじゃったりするとよけいに億劫になるし、トレーニングを再開してもなかなか戻らない。でも、ベッドの上でストレッチをするだけなら、続けるのも容易なんですよ。

――いまみたいな冬の時期だと、目が覚めてもなかなかベッドから出られなかったりしますけど、藤波さんがやられてるストレッチは、そのままベッドの上でできちゃうわけですもんね。

藤波 寒い日だったら、暖かい布団の中でやるんですよ。起きる前にまず、だいたい5分から10分。

まず足首を回して背伸びをして、肩、腰、膝、すべてのジョイントを動かすんだよね。それからベッドを出て、またストレッチをする。そうすると、仕事に出勤してもすぐ活動モードに入れるし、休みの日だったら、そこからウォーキングに行ったり、好きなスポーツをやるのでもいいし、ゆっくり休んだっていいしね。朝ストレッチをすることで、一般の人も日常生活を快適に過ごすことができるんじゃないかな。

――プロスポーツ選手が日々やっている練習って、普通の人はなかなか真似できないじゃないですか。ましてや中高年がやったらケガのリスクもありますけど、藤波さんのような若い時から過酷なトレーニングを積んでる選手が、「ベッドの中でストレッチするだけでいい」って言ってくれると、すごくハードルが下がっていいですね(笑)。

藤波 簡単だけど大事なことなんですよ。そして毎日続けられるように習慣づけることが大事だね。あと僕が年齢を重ねてもトレーニングを欠かさないっていうのは、現役だから当たり前っていうことにプラスして、やっぱりカール・ゴッチさんの影響が大きいね。

カール・ゴッチと動物園に行って…

――藤波さんは20代前半の若い頃、米国フロリダ州の“プロレスの神様”カール・ゴッチさんのもとで数ヶ月間修行してたんですよね。

藤波 あの時、ゴッチさんはもう50代で試合はしてなかったんだけど、トレーニングは毎日欠かさず続けていたからね。

――ゴッチさんは82歳で亡くなる直前までずっとトレーニングを続けて、生涯レスリングを追求していたそうですからね。

藤波 そうでしょ? ゴッチさんは「レスラーにとって最も大事なことはトレーニング、コンディショニングなんだ」っていうことを常に言っていたからね。

技の研究ももちろん熱心なんだけど、それ以前に「まず、自分の身体を常に動ける状態にしておかなきゃいけないよ」と、いっつも言われてましたよ。

――そういうゴッチさんの姿勢が、藤波さんに強い影響を与えたわけですね。

藤波 僕も若かったからね、それをすべて素直に聞いて、フロリダではとにかく毎日練習ばかりでしたよ。ゴッチさんのところは、バーベルとかウェイト器具が一切ないんだもん。器具といえば、コシティとか、ロープ登りとか、体操の吊り輪、それしかないからね。そんな練習ばっかりしてたら、そりゃコンディションはよくなるよ(笑)。

――藤波さんは、1978年にWWWF(現・WWE)ジュニアヘビー級王者として、当時のプロレスラーとしては珍しい脂肪の少ないバキバキな身体をしていましたけど、あれは見栄えのいい身体にしようと思ったわけじゃなく、トレーニングで自然とああいう身体になったんですよね?

藤波 そう。僕は本当は体重を増やしてお腹を出したかったんだから。でも、ゴッチさんのところでずっとトレーニング漬けの日々だったので、太れなかったというだけでね。

――ストイックな生活を強いられていたわけですね。

藤波 ゴッチさんはもともとアマチュアのオリンピック選手だったでしょ?(1948年ロンドン五輪ベルギー代表) プロレスの考え方が、いまの総合格闘技みたいなんだよね。だから、あの人はアメリカンプロレスを観なかったから。


――エンターテインメント的なことではなく、とにかく強さを求めていた、と。

藤波 僕がフロリダのゴッチさんの家にいた時は、日本からプロレス雑誌が送られてくるのが月に一度の楽しみだったんだけど、「こんなの見る必要ない」って全部没収だもん。その代わり、「おまえはこれを読め」って渡された本が分厚い昔のパンクラチオンが載っているような技術書だからね(苦笑)。そんなのばっかりだもん。

――マインドコントロールですね(笑)。

藤波 それで練習休みの日に動物園に連れていってくれたことがあるんだけど、ゴッチさんの場合は動物を見て楽しんだり、癒されたりするために行くんじゃないから。ゴリラとかライオンの檻の前でじーっと観察してね。筋肉の動きを参考にしようとしている。「ああいう筋肉をつけなきゃいけないんだ」って、野生動物と一緒にされちゃうからね(笑)。

昭和の日本の道場は根性論だった

――そういったゴッチ道場での日々が、こんにちの藤波さんのベースになってるわけですね。

藤波 ああいう練習を毎日やっていたから本当にコンディションが良くて、当時は1時間でも2時間でも試合ができそうなくらいだったから。

――今回の本に出てくる「コシティ」のトレーニングも、ゴッチさんが新日本の道場に導入したんですよね?

藤波 そう。あれはインドや中近東のレスリングの選手が昔からやっていたトレーニングで、野球のバットを何倍にも太くしたような棍棒を振り回すんだけど、ゴッチさんが新日本の道場に取り寄せてくれたんだよね。

あれは肩やヒジの柔軟性を養うのに最適だし、グリップも鍛えられる。また、重いコシティを振り回すから、体幹や下半身の強化もできるんだよね。

――コシティのトレーニングは昭和の新日本道場の象徴みたいな感じがありましたけど、当時はコシティなんか手に入らないから、真似したくても真似できなかったんですよね。でも、今回の本ではコシティの代わりに水を入れたペットボトルでも同じようなトレーニングができるって書いてあったので、早速真似したくなりました(笑)。

藤波 本物のコシティはすごく重くてあれを振り回すのは難しいんだけど、一般の人なら500mlのペットボトルでもけっこういい運動になるし、肩のストレッチにもなる。一般の人は、われわれレスラーと同じ運動をする必要はないわけだから。

――昭和のプロレス少年は、「プロレスラーはヒンズースクワットを3000回やる」って聞いて自分でも真似してみて、100回くらいやって筋肉痛になった経験は誰しももってますけどね(笑)。

藤波 ゴッチさんの練習は理にかなったものなんだけど、昭和の日本の道場は根性論だったからね。鍛えたプロレスラーでも屈伸運動を3000回、4000回とやったらヒザを壊しますよ(笑)。だから、今回出した僕の本を読んでくれる人たちには、家でもできるストレッチとか、そういった部分を真似してほしいね。

取材・文/堀江ガンツ 撮影/甲斐啓二郎

マッチョ・ドラゴン式トレーニング 古希でも闘える体づくり

藤波 辰爾
〈72歳で現役レスラー〉藤波辰爾が明かす「体が動き続ける人」の朝習慣…秘訣はベッドの中の5分
マッチョ・ドラゴン式トレーニング 古希でも闘える体づくり
2026/1/262,310円(税込)104ページISBN: 978-4834254136

なぜ70歳を超えても現役でいられるのか? いまだ黒タイツ一枚とシューズだけでリングに上がれる奇跡のプロレスラー、“マッチョ・ドラゴン”藤波辰爾の秘密が丸裸に――。
本書では誰でもできる中高年のためのストレッチ&トレーニングを特別に公開しました。カラーページでリングコスチュームのまま紹介・解説するドラゴンの姿を眺めながら、あなたも一緒に実践してみましょう。
また読み物としても、ドラゴンが行っているプロレスラー用のパーソナルトレーニングの紹介、パーソナルトレーナーが語るその肉体の秘密、そして、これまでのプロレスラー人生をトレーニングや怪我などと共に自ら振り返るコラムなど、プロレスファンにはたまらない内容になっています。

◆目次◆
PART1 ストレッチ
ベッドでのストレッチ/べッドから出た後のストレッチ/ベランダでのストレッチ/プロレスラーのためのストレッチ
PART2 トレーニング
スクワット/腕立て伏せ/腹筋
PART3 コシティ
ペットボトルを使う
PART4 パーソナルトレーニング
PART5 トレーナーが見たマッチョ・ドラゴンの肉体
PART6 古希を迎えたプロレス人生

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