〈でっちあげ神奈川県警〉くり返される大規模不正は「県警の警察官が足りていないから起きる」交通違反の約2700件取消、数億円の損害レベルか
〈でっちあげ神奈川県警〉くり返される大規模不正は「県警の警察官が足りていないから起きる」交通違反の約2700件取消、数億円の損害レベルか

神奈川県警第2交通機動隊(2交機)において、交通違反の取り締まりを巡る前代未聞の大規模な不正が発覚した。2月14日の読売新聞の報道によると、速度超過や車間距離不保持の取り締まりにおいて、必要な追尾距離を確保せずに違反を認定し、公文書である反則切符に虚偽の記載を繰り返していたという組織ぐるみのものだった。

 

県警は適正な証明ができない約2700件の違反を取り消し、納付済みの反則金約3000万円以上を還付する方針を固めた。この事態は、単なる個人の逸脱ではなく、警察組織の根底に横たわる問題を改めて浮き彫りにした。

不正の手口と「小隊ぐるみ」の常態化

今回の不正の核心は、組織的な「書類の偽造」にある。パトカーや白バイによる追尾測定には、警察内部の内規で定められた厳格な手順が存在する。

例えば、一般道では約30メートルの車間で約100メートル、高速道では約50メートルの車間を保ちながら約300メートルを並走し、速度を測定しなければならないといわれている。

しかし、不正の中心にいた第2中隊第4小隊の巡査部長らは、これらの手順を大幅に省略した短距離追尾で違反を決めつけ、書類上は「適正な距離を確保した」と虚偽の内容を記載していた。

さらに悪質なのは、刑事処分に必要な「実況見分調書」の偽造である。本来、警察官が現場に赴き状況を記録すべき公文書を、巡査部長らは「図面があるから現場に行かなくていい」と主張し、インターネットの地図を流用するなどして作成していたという。

こうした不正に対し、同僚や上司の警部補らも「誰も気付かなかった」として黙認・追従しており、小隊全体で虚偽が日常の業務に組み込まれていた実態が判明している。

市民への深刻な実害と証拠の重要性

今回、取り消し処分する約2700件という不正の規模は、過去の他県警における事例(北海道警47件、沖縄県警269件)と比較しても桁違いである。その規模の大きさだけでなく、個々の問題も反則金の還付や点数の抹消だけで解決する問題ではない。

不当な取り締まりの結果、優良運転者の資格(ゴールド免許)を失い保険料が上がったり、免許停止・取り消し処分を受けて仕事を失うなど、生活に甚大な支障をきたした運転者が含まれている可能性がある。

こうした損害に対して多くの訴訟が起きた場合、「数億円単位の損害になる」と元警視庁捜査一課で“伝説の落とし屋”と呼ばれた警察OBの佐藤誠氏は指摘する。

「今回の神奈川県警の不正の損害レベルは、軽微な交通違反で5~20万円、免許停止で30~150万円、免許取消しによる仕事への影響で300~1000万円が見込まれます。

職業ドライバーが受けた損害次第では訴訟件数が甚大に膨れ上がり、数億~20億円単位の損害になる可能性があります」

また、今回の大規模不正が発覚したきっかけは、車間距離不保持で取り締まりを受けた運転者から2024年に相談があり、県警が内部調査を進めたことによるものであると読売新聞は報じている。

この事実は、現代の交通社会において、警察側の主張が必ずしも真実ではない可能性を示唆しており、客観的な証拠としてドライブレコーダーの重要性を改めて知らしめることとなった。

「不祥事のデパート」と呼ばれる歴史的背景

さらに神奈川県警が「また不祥事か」という冷ややかな視線を浴びるのには、長い負の歴史がある。

1999年には、現職警察官の覚醒剤使用を組織ぐるみで隠蔽した、戦後最悪とも称される不祥事が発覚した。当時の警察本部長が犯人隠避で有罪判決を受けるという、日本の警察史上類を見ない異常事態であった。

その後も、神奈川県警の汚職は枚挙に暇がない。

•裏金問題: 2003~2008年にかけて、総額11億円余りの公金の不正流用。

• 性犯罪・盗撮:署内トイレでの盗撮、電車内での痴漢、さらには当直勤務中の交番内でくり返された性行為。

• 捜査の放置と怠慢:2012年に逗子、2024~2025年に川崎で発生したストーカー殺人事件で警察が危険性を把握しながら有効な捜査を行なわず、犠牲者を出す結果を招いた。

• 証拠の捏造と誤認逮捕:2012年、パソコン遠隔操作事件における自白の強要や誤認逮捕、交通事故の供述調書を捏造。

2024年上半期には、わずか半年間で前年通期を超える逮捕者を出し、2025年にも懲戒処分件数が全国上位を維持するなど、組織の自浄作用が機能していないことが明確である。

腐敗を生む構造的要因は「ノルマ」と「予算」

なぜ神奈川県警では、こうした不祥事がくり返されるのか。前出の佐藤氏が解説する。

「今回の不祥事の核心は個人の問題ではなく、神奈川県警の構造的な欠陥にあります。


神奈川県は日本最大級の国際港湾の横浜・川崎の大都市圏に加え、観光地も多く、外国人犯罪、暴力団事案、密輸、ストーカー対応など、治安需要が警視庁級に及びます。

一方で県警の体制・人員はこれに見合わず、警視庁が約4万4000人の人員構成に対して、神奈川県警はその半分以下の約1万7000人しかいません。現場の一人当たりの負担が過大になりやすい。

その結果、事故抑止よりも検挙数や反則切符枚数といった『点数』で実績を求める圧力が強まり、安易な成果追求に傾いて違反の取り消しや隠蔽、帳尻合わせが起きやすくなります」

実際、巡査部長は動機を「実績を上げたかった」と供述している。警察内部には「努力目標」という名目の実質的なノルマが存在し、それが現場に強い同調圧力を生んでいるという。

信頼回復への厳しい道のり

さらに、制度的な背景として「交通安全対策特別交付金」の存在が指摘されている。交通違反の反則金(交通反則者納金)は、年間約500億円にものぼり、これが道路整備などの予算として都道府県に分配される仕組みになっている。

反則金収入を原資として予算が組まれる以上、警察組織全体として一定の検挙数を維持しなければならないという構造が、現場の「実績稼ぎ」を助長し、ひいては拡大解釈や捏造といった不正を誘発する一因となっている。

「2023年にも福岡県警で約1600件の交通違反の取り消し、交通反則金など計約1500万円の返還手続きが発表されました。その際、男性警部補(57・当時)が停職6か月の懲戒処分になり、同日付で依願退職しました。

しかし、こうした処分は個人に責任を押し付ける『トカゲの尻尾切り』でしかなく、黙認の風土は残ったままになり、再発防止も形骸化しやすくなる。やはり組織の構造改革がなければ、問題はくり返されるでしょう」(前出・佐藤氏)

神奈川県警が引き起こした今回の事件は、警察という「法の番人」が、自らの実績のために罪のない市民を陥れたという点において、公権力による重大な裏切り行為だ。

失われた信頼を取り戻すためには、専従チームによる被害者救済の徹底はもちろんのこと、第三者による監視体制の導入や、適切な人員配置、実績評価システムの抜本的な見直しが不可欠である。

警察が自らの非を認め、隠蔽体質を脱ぎ捨てない限り、市民が安心して道路を走り、警察を信頼できる日は遠いだろう。今回の2700件もの不正を、単なる一小隊の暴走として片付けることは決して許されない。

取材・文/集英社オンライン編集部

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