衆院選で自民党が単独316議席という歴史的圧勝を果たし、日本政治は未踏の局面に突入した。与党勢力は全体の約76%を占める異常なパワーバランスだ。
「もはや、高市総理には誰も逆らえない」
「勝ちすぎなくらいの大勝ですからね。国民の皆様に『調子に乗っている』という反感を買わないよう、あえて表情を引き締めて臨もうと、事前に周辺と話し合っていたのです」
党幹部の一人は、その舞台裏をそう打ち明けた。この言葉こそが、今回もたらされた「316議席」という数字の持つ衝撃の大きさを物語っている。
中曽根康弘、小泉純一郎、そして安倍晋三。かつて衆院選で圧倒的な勝利を収め、長期政権を築き上げた歴代の宰相たちでさえ、ついには到達できなかった高み。それが、自民党単独での「3分の2(310議席)」を突破する316議席という未踏の領域だ。
連立政権を組む日本維新の会の36議席を合わせれば、与党勢力は352議席に達する。衆議院の全465議席に占める占有率は約76%。実に4分の3を超える巨大与党の誕生である。
自民党は今回の選挙で、公示前の198議席から一気に118議席も上積みした。この数字が意味する政治的インパクトは計り知れない。
参議院で野党が法案を否決しても、衆議院で「再可決」して成立させることが可能な力を持っただけでなく、憲法改正の発議に必要な3分の2の壁を、自民党単独でいとも容易く突き崩したのである。
「もはや、高市総理には誰も逆らえない。多くの議員が『誰のおかげで当選できたと思っているんだ』という無言の圧力にさらされることになる」(前同)
米メディア「小泉、安倍と肩を並べる存在に」
ある自民党のベテラン議員は、自嘲気味にそう漏らした。この衝撃は国内に留まらない。海外メディアも、日本の政治地図が塗り替えられた瞬間を敏感に報じた。
米ブルームバーグ通信は、小泉氏や安倍氏といった過去の長期政権を引き合いに出し、「高市総理は日本の政治史における伝説的な指導者と肩を並べる存在になるだろう」と速報。
英誌エコノミスト最新号(2月14日~20日号)は、高市氏を「世界で最も強力な女性(The World's Most Powerful Woman)」として特集し、表紙には富士山を背に、力強く右手を挙げる高市氏の姿を掲載した。
名実ともに「女王」として君臨することとなった高市氏。「女王」の誕生は、日本政治の風景をどう変えていくのだろうか。
萩生田と梶山が思わず顔を見合わせた瞬間
真っ先に突きつけられる課題は、2026年度予算の成立時期だ。本来、通常国会は1月に召集され、4月から始まる新年度予算を3月31日までに成立させるのが通例である。
「予算の年度内成立は、時の政権にとっての絶対的な至上命題だ」
与党国対幹部がそう強調するのは、これが単なる政治日程の問題ではないからだ。年金や生活保護の支給、公務員の給与支払い、公共事業の執行など、国民生活の隅々にまで直結する。
しかし、その至上命題は、高市総理自らが「通常国会冒頭解散」という勝負に出たことで、物理的に絶望的な状況に追い込まれていた。
選挙戦の終盤、与党国対幹部は「どんなに急いでも、5月の大型連休(ゴールデンウィーク)明けの成立が関の山だろう」と周囲に漏らしていた。
ところが、勝利の余韻も冷めやらぬ2月13日。高市総理は国会運営を担う自民党幹部を官邸に呼びつけ、こう言い放ったという。
「予算の年度内成立をあきらめていません」
呼び出された萩生田光一幹事長代行や梶山弘志国会対策委員長は、思わず顔を見合わせたという。衆院選後の日程として、政府・与党内では2月18日の国会招集が内定していたが、総理側はさらなる前倒しや、予算委員会の審議時間の大幅な短縮を要求しているのだ。
総理側近「抜本的に見直すべき時期に来ている」
総理側近の一人は、旧来の国会慣習をこう切り捨てる。
「そもそも、日本の総理大臣の国会拘束時間は、欧米諸国と比較しても異常なほど長い。これほどの大勝を収めた今こそ、その非効率なシステムを抜本的に見直すべき時期に来ているのではないか」
だが、現時点で年度内成立を強行しようとすれば、衆参それぞれの審議時間を例年の半分程度、わずか2週間ほどに圧縮しなければならない。
圧倒的な議席数を誇る衆院では「数の力」による押し切りが可能かもしれないが、参院では自民・維新の連立与党をもってしても、依然として過半数に5議席足りない「ねじれ」状況が続いている。参院立憲の幹部は「やれるものならやってみろ。審議を軽視する暴挙には、参院の誇りにかけて徹底抗戦するのみだ」と激しく反発している。
スパイ防止法、旧姓使用法制化、そして憲法改正
予算委員会は、単に予算を精査する場ではない。
総理以下、全閣僚が出席し、NHKのテレビ中継が入る中、外交・安全保障から物価高対策、エネルギー政策、さらには政権のスキャンダルまでが俎上に載せられる「国政のショーケース」だ。
自民党内からも「熟議を欠いた予算成立は、後に国民の不信を招く」との懸念が出ており、高市総理が掲げる「年度内成立」は、事実上の不可能を強いる「無理筋」な指示とも言える。
それでもなお、高市氏がこの不可能に挑戦しようとする背景には、選挙で得た強力な民意というバックボーンを背景に、自身の「こだわり」である保守本流の政策を一気に推し進めたいという執念がある。
「総理は『公約に掲げたことは、すべて実現したい』と公言しています」と、周辺は語る。 予算という大きなハードルを早々にクリアできれば、7月15日までの会期中に、いわゆる「高市銘柄」と呼ばれる重要法案に次々と着手できる。
スパイ防止法の制定、旧姓使用の法制化、そして政治家としての究極の目標である「憲法改正」という本丸への突入だ。
高市氏はすでに、そのための布石を冷徹に打ち始めている。圧倒的な勝利を力の源泉に、これまでは少数与党だったため野党側に配分されていた予算委員長や憲法審査会長、法務委員長といった主要なポストを、軒並み野党から「奪還」することに成功したのだ。
巨大化した自民党の足元にも不安要素
仮に審議時間が例年通り確保されたとしても、野党側の陣容は心もとない。
今回の選挙では、官房長官経験者の枝野幸男氏、外務大臣経験者の岡田克也氏、玄葉光一郎氏といった、論戦の重石となるべきベテランが軒並み落選した。危機管理や外交安全保障において、政府の隙を突くような厚みのある質問ができる人材は、野党から急速に失われている。
一方、巨大化した自民党の足元にも不安要素はある。今回、党内には実に66人もの新人が誕生した。これまでの新人教育において「実地研修」の場となってきた派閥は、麻生派を除いてすべて解散しており、若手を指導する仕組みが消失している。
8日夜、高市氏は党幹部に対し「新人教育が最重要課題ですね」と釘を刺した。これを受け、党幹事長室が主導し、比例ブロックごとに政治資金規正法の遵守やSNSでの発信術を指南するというが、現場の危機感は強い。
党のベテラン職員は、頭を抱えながらこう語る。
党ベテラン「SNSの不適切発言一発で政権を揺るがしかねない」
「2005年の『郵政解散』の際も80人以上の新人が当選して対応に追われましたが、今は当時と違ってSNSがある。不適切な発言一つが瞬時に拡散され、政権全体を揺るがしかねない。派閥の目も届かない中、彼らをどう統率すればいいのか……」
新人のスキャンダルや失言による「炎上」は、政権支持率に直結する。
「もはや野党は脅威ではないでしょう。むしろ、300人以上に膨張した党内のガバナンスをどう維持するか。その内部マネジメントの方が、対野党の攻防よりも遥かに困難なミッションになるだろう」
このベテラン職員の言葉は、独裁的な力を持った巨大与党が抱える、内なるジレンマという最大の弱点を突いている。
対する野党の惨状は、目を覆わんばかりだ。
公示前に167議席を誇り、比較第一党への躍進を掲げた野党第一党「中道改革連合」は、見る影もなく瓦解した。野田佳彦共同代表は「この結果は万死に値する」と述べ、引責辞任を表明。
合流の目玉であった旧公明党側こそ、比例名簿上位の優遇措置により28人全員が当選を果たしたが、旧立憲民主党側は148議席から21議席へと激減。
党内リベラル層の逆鱗に触れた中道・小川代表
かろうじて野党第一党の地位こそ死守したものの、単独では内閣不信任決議案の提出に必要な51議席にすら届かない。野党第一党がこれほどまでに無力化したのは、戦後の憲政史上、初めての事態だ。
漂流を始めた「中道」は、2月13日に代表選を実施し、小川淳也氏を新たなリーダーに選出した。しかし、その船出は初日から荒れ模様となった。
小川氏は就任会見で、自民党が掲げる「憲法9条への自衛隊明記」について問われ、「あり得ないことではない」と言及。文脈を辿れば「思考停止せず議論に応じる」という実務的なスタンスを示したに過ぎないが、これが党内のリベラル層の逆鱗に触れたようだ。
小川氏は、その日の夜に自身のSNSで「9条護憲派の方々をも納得させる、冷静かつ実務的な議論が必要だというのが真意だ」と釈明動画を投稿する事態に追い込まれた。
さらに、沖縄の米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡っても、党内の足並みは揃わない。中道の衆院議員・有田芳生氏が、沖縄の立憲県連による「辺野古移設反対」の要請書を代表選候補に手渡すなど、移設容認へと舵を切りたい現実派を牽制する。
「中道と銘打ってはみたものの、中身はバラバラ」
「中道と銘打ってはみたものの、中身はバラバラ。内政の小事では一致できても、外交・安保や憲法、基地問題といったイデオロギーが絡む国家の根幹では、融合への道筋さえ見えない。こんな体質で、強大な高市自民と対峙できるのか」
内部からも、そんな諦念にも似た声が漏れる。
国民民主党の玉木雄一郎代表は、今回の選挙結果を冷徹にこう総括した。
「旧民主党政権の幹部や閣僚経験者が軒並み議席を失った。これで、本当の意味で『民主党時代』の呪縛が解け、一つの区切りを迎えたのだと思う」
小沢一郎、安住淳、玄葉光一郎、岡田克也、海江田万里、枝野幸男……。民主党政権で中枢を担い、下野後も野党共闘の象徴として君臨し続けてきたベテランたちが、一斉に「強制退場」させられた。
本来であれば、ここで一気に世代交代が進むはずだが、その受け皿となるべき期待の若手や中堅までもが落選の波に飲み込まれた。100人以上の落選者を出し、組織としての再生能力さえ疑われる状況にある。
早くも離党を表明した者も
中道の落選者の中には、早くも離党を表明したものもいれば、玉木氏のもとへ合流を打診する電話をかける者が後を絶たないという。
今後の野党は、小川淳也氏(香川1区)と玉木雄一郎氏(香川2区)という、奇しくも同郷の「香川コンビ」が手を取り合い、灰の中から再生の道を探るのか。それとも、圧倒的な物量と政治技術を持つ高市自民の波に呑み込まれ、さらなる分裂へと向かうのか。
安倍政権時代を凌駕するような、苛烈な「一強多弱」の政治。世代交代を余儀なくされた野党が、どのようにしてこの巨大な権力と対峙していくのか。その過程と結果を見極めるまで、今回の総選挙が持つ歴史的な意味は確定しないだろう。
2月18日。招集される国会を舞台に、「決戦の150日間」が幕を開ける。
取材・文/今野忍

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