「宗教法人は株でいくら稼いでも非課税」に高市内閣のメスは入るか? 10兆円にものぼる運用マネーの実態
「宗教法人は株でいくら稼いでも非課税」に高市内閣のメスは入るか? 10兆円にものぼる運用マネーの実態

公明党との関係を断ち切った自民党が衆院選で大勝したことにより、「宗教法人に課税する動きが強まるのではないか」という観測が2月12日のデイリー新潮の記事をきっかけにSNSで話題となっている。しかし、檀家の減少で経営難に陥る寺院が多いことや、大規模な宗教法人は積極的なロビー活動を行なっていることを考えると、現実的なのは課税方法の部分的な見直しだ。

宗教法人はお布施などで集めた資金を原資とし、そこから得られる投資益には課税がされないという税制上の論点がある。

大規模な宗教法人の配当収入は1.9億円

宗教法人の金銭貸付業は収益事業と見なされ、課税対象である。しかし、株式や投資信託の売却益・配当金は原則として非収益事業だ。

文化庁の「宗教関連統計に関する資料集」によると、50人以上の規模の大きい宗教法人の配当収入は1.9億円で、収入全体の12.4%にものぼる。上場企業の売上に占める配当収入は1%程度だから、宗教法人は資産運用をアテにしているというわけだ。

実際、宗教法人が上場企業の上位10位以内の株主に名を連ねることも珍しくない。その原資が駐車場経営などから得られた収益事業の場合は課税対象だが、非収益事業であれば非課税だ。大手金融機関で投資商品を販売する営業部のマネージャーがその実態について話す。

「大手の証券会社であれば、宗教法人を含む公益法人専門の営業チームがあります。地方の支店にとって宗教法人は上客ですよ」

住職の多くは資金繰りに窮しており、金融や経済の知識が乏しいケースが少なくないため、営業担当者による運用で稼ごうという提案は響きやすいという。

「一昔前は個別株の売買を積極的に勧めていましたが、今は堅実な分散投資で投資信託を提案することが多いようです」(大手金融機関・営業部マネージャー)

実は宗教法人の資産運用については手痛い過去がある。宗教法人高野山真言宗が投資した仕組債が、リーマンショックによる株価の暴落で2013年に21億円もの含み損を発生させたのだ。寺の予算を決める宗会の解散を招くなど、責任問題へと発展した。

資産運用の負の側面が表面化したのだ。

小規模法人の住職であっても、お布施や寄付金を原資に多額の投資をして損失を出せば檀家の反発は必至だ。逆に大きなリターンを出せば収益事業として国税庁から調査対象となり得る可能性もあり、今は堅実投資がトレンドだという。

しかし、投資信託の販売は証券会社側にとってメリットが大きい。大手証券会社が扱う投資信託は、手数料が高額なものが多い。一般的な投資家は手数料に加えて配当金・分配金などにかかる税金も支払っているが、宗教法人は基本的に手数料を支払うだけになる。税金がない分、証券会社に支払う手数料の影響が小さく見える。

そして投資信託は長期投資がベースとなるため、証券会社は中長期的な手数料収入が見込めるというわけだ。まさにWin-Winの関係である。

いっぽう、課税されている一般の投資家からすれば、宗教法人が非課税であることの納得感は少なく、証券会社が儲けるスキームを提供しているように見えるのではないだろうか。

多数の収益事業が認められている宗教法人

寺院は葬儀の簡素化や戒名料、お布施の減少が深刻化している。昨今は法事を行なわないケースも多い。後世に残す墓の文化も消えつつあり、樹木葬を選択する人も多くなった。

入檀料、墓地の管理収入も細くなる寺院には頭の痛い問題だ。

宗教関連専門メディアの中外日報によると、1983年から2022年までで消滅した寺院の数は703。このうち2013年から2022年までの期間で279、全体の4割が消滅したという。寺院の統廃合、廃寺が加速しているのだ。

寺院の建物を維持管理する費用負担は重い。建物が老朽化してリフォームを検討しても、特殊な構造をしているために多額の改修費用がかかる。檀家の減少で寄付金を集めようにも難航するという話はよく耳にする。

地域が寺院を守るというシステムは崩壊してしまったのだ。

しかし、だからこそ宗教法人には収益事業が認められている。不動産賃貸や駐車場、宿泊施設の運営、結婚式の取り扱い、保育所の運営、お守りやおみくじの販売で利益を得、税金を払っている法人は多い。規模に関係なく宗教法人も生き残りをかけて勝負に出る時代になったのだ。

それにも関わらず、株取引には課税がされないという優遇措置が今もとられているのだ。

宗教法人の運用総額は10兆円

公明党が離れ、衆院選で単独3分の2議席を獲得した高市政権が宗教法人の課税に取り組みやすくなったのは事実だ。

しかし、高市首相は「神道政治連盟国会議員懇談会」の会員である。この議員連盟は神社本庁の関係団体である「神道政治連盟」の理念に賛同する議員で構成されている。神社本庁は7万8000以上が加盟する神道系の宗教団体で規模が大きい。

宗教団体は熱心なロビー活動をすることでも知られている。議論を深めず拙速に宗教法人に対して課税するという方針は打ち出しづらいはずだ。

しかし、投資益に課税するなど、一部であれば手を入れやすいだろう。宗教法人に限らず公益法人は税制優遇されているが、税金対策として悪用されるケースも少なくなかった。大幅な見直しを図るチャンスでもある。

日本経済新聞によると、宗教法人の資産運用総額は10兆円規模にものぼるという。その運用益に課税する効果は大きいはずだ。

取材・文/不破聡   写真/shutterstock

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