法務省は昨年12月、さいたま地方検察庁の男性検事A(35)を「職務上知り得た前科などを含む捜査情報を交際相手の女性に漏洩した」として懲戒免職処分した。実はこの交際相手の女性は“不倫相手”であり、処分を下された元検事から「独身偽装されていた」と主張する。
「既婚者の方はごめんなさい」それでも近づいてきた独身偽装検事
元検事の男性Aに独身偽装されたのは都内在住の柏木亜美さん(仮名)。
柏木さんに婚歴はなく、2024年初頭に「真面目に際できる人と出会えたらいいな」という思いから独身者向けマッチングアプリを始め、2024年2月にAと出会った。
訴状に記されているが、柏木さんはプロフィールに「既婚者の方はごめんなさい」としっかり明記していたもの、Aは「独身」と偽り接触してきたという。
「Aとのメッセージで『法律関係の公務員』と聞いており、その後、Aから積極的に『通話したい』と迫られてLINE通話をしました。そこで『なんの仕事だと思う?』と聞かれて『裁判官ですか?』って答えたら『検事だよ』と打ち明けられました。
デートに誘われた際も既婚者かどうかを確認すると『独身』だって……。それで3月にAから真剣に交際を申し込まれ、将来を見据えてお付き合いすることにしました。クリスマスにイルミネーション見たり、映画、水族館でデートをしたり、京都旅行にもいきました」
Aが懲戒免職処分になったのは、柏木さんに検察の捜査情報を伝えていたことが原因だといわれている。
「でも情報漏洩は私が望んでいたことではなく、Aが常日頃から話してきた」と柏木さんは言う。
さらにAは検察官の“特権”を使い個人情報も漏洩していた。
「私が仕事上である顧客から理不尽なクレームを受けトラブルになったときでした。
決して私から頼んだことではないのですが、ここまで私にしてくれたということで、自分がAにとって特別な存在だと感じてしまいました。
それ以外にもAは日本中が震撼した強盗殺人事件の捜査にも関わっており『これから大勝負や! ちなみに例の強盗事件、また一人割れたで!』などと逐一私に報告してきました。
よく『他の検事の取り調べで黙秘している被疑者が口を割った』と自慢するなど、取り調べの能力には定評があり、周囲から『割り屋』と呼ばれているとも言ってました」
マンションにお呼ばれ、驚きの提案
自らを「割り屋」と誇ったAの情報漏洩はまだまだある。
「これから放火事件の燃焼実験をするからと動画を送ってきたり、大学病院での解剖に立ち会うなど、聞いているこちらが怖くなるような機密情報を平然と言ってきました。
でも、それもこれから将来家族になる、真剣交際ゆえの好意だと誤認していました。それに性行為する際に『(避妊具を)つけて』と言ってもつけてくれないし、ある時は『俺のDNA欲しいでしょ?』なども言われました。
また、私が『半年経っても結婚する気にならなければ別れないと』と見極め期間を提示した時は『半年後に俺を見極めた結果を教えて』と提示に応じて期待を持たせられました」
Aとの結婚、さらには出産を夢見た柏木さんはすっかり騙されてしまった。さらに驚くことに、Aは妻子が家を不在にしていたと思われる新築マンションに柏木さんを招き入れている。
「単身者の住まいにしては3LDKと広いタワマンに10回ほど泊まりました。後から知りましたが、その住宅はペアローンで組まれた部屋でした。それを彼は単身で購入した部屋だと言っていました」
さらにAは柏木さんこんな提案もしてきた。
「住民専用のルーフトップバーや図書館やカフェにジムなどすべての施設に私を案内しながら、私に同じマンションの別の部屋に住んで部屋を行き来しないかと提案してきました。
仮に私がそのマンションに引っ越したとして、妻子と共にいる所をバッタリ遭遇するといったことは思い浮かばなかったのでしょうか」
人前でキス、「見せつけてやろうぜ」既婚を疑わせなかった演出
それでも柏木さんがAを既婚者だと疑わなかったのには、いくつもの理由があった。
「マンション内の共有スペースに私を招き入れたり、そこで人目もはばからず激しくキスしたり。私が拒むと『見せつけてやろうぜ』と言うこともありました。それにやたら外でキスしてる写真を撮りたがりました。
検察官だし既婚者ならそんな“不倫の証拠”はスマホに残さないだろうと…さらにマンションに私の私物を置いていくようにいわれ、特に下着も複数置いていくよう要求されていました」
そんな柏木さんへの魔法が解けたのは、2025年8月、インターネットでみつけた1枚の写真だった
「Aの本名でネット検索したときです。ある閉館間際のホテルで最後に結婚式を挙げたカップルとしてAとその妻の写真が出てきたのです。そこで初めて奥さんも現役検事で、Aが検察官夫婦だということを知りました」
すでに交際開始から1年5か月が経過していた。訴状には当時の柏木さんの心境についてこう記されていた。
〈原告は激しい動揺と自責感情に陥り、食欲不振、不眠、自殺念慮、倦怠感、仕事への支障が顕著となった。また、家族連れを見ると被告が妻子と歩く姿を想起して嘔気と動悸に襲われるようになった。(略)8月14日、原告は適応障害・うつ状態の診断を受けた〉
同年9月、ショックから立ち直れなかった柏木さんはAに対し内容証明を送付。
「突然のことで何のことかわからないけどありがとう、もう連絡することも会うこともないので安心して下さいなどとLINEが来ました。10月には既婚の事実は認めたものの、とんでもない回答の文書が代理人弁護士から届き、心がズタズタに引き裂かれる思いでした。できれば裁判なんてしたくなかったです…」
12月23日、柏木さんはAに対して550万円の損害賠償を求め提訴した。
後編ではA側の主張をまとめるとともに、柏木さんの近況なども詳報する。
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取材・文/河合桃子 集英社オンライン編集部ニュース班

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