「英才教育を受け、推しに沼る」阪神ファンにみる幸福感への近道を、牛窪恵と人気配信者さばかんが分析…キーワードは「期待しすぎない」こと
「英才教育を受け、推しに沼る」阪神ファンにみる幸福感への近道を、牛窪恵と人気配信者さばかんが分析…キーワードは「期待しすぎない」こと

「おひとりさま」「草食系」など数々の流行語を世に広めたマーケッターの牛窪恵さんが、3月5日に刊行する新刊『「幸福感」に満たされたいなら阪神ファンを知りましょう マーケッターが気づいた「効果と法則」』。幸福感と阪神ファンの意外な関係性を、多数の研究論文や阪神ファンの女性約3000人への調査から分析した一冊だ。

今回、熱狂的な阪神ファンでもある牛窪さんに、YouTubeチャンネル「さばかん」 で阪神タイガースの試合実況を中心に動画を発信する、さばかんさんと対談してもらった。

阪神の女性ファンの6割が「英才教育」を受けた?

――(牛窪恵 以下同)いつも阪神タイガースの試合の実況配信を、ありがとうございます。夫と楽しく拝見しています。私が、さばかんさんのチャンネルを知ったのはコロナ禍でしたが、YouTubeを始めたのは、いつから?

さばかん(以下同) 実はYouTube自体は、小学生のときに始めました。ヒカキンさんに憧れて、コンビニスイーツの紹介や駄菓子を凍らせて食べてみる動画などを投稿し始めたんです。

――小学生?さすが、Z世代(現24歳)!動画の編集も、独学で?

はい。そもそも父親がエンジニアだったので、パソコンが身近にあったんです。もっともまだ10年以上前で、YouTube自体が今ほど普及してなかったので、チャンネル登録者は700人ぐらいでした。

――それが、いまや登録者数15.7万人のチャンネルを運営。X(旧Twitter)のフォロワーも、9.2万人いらっしゃる。阪神ファンになったきっかけも、やっぱりお父さん?

いえ、実は「祖父」が阪神ファンで、いわゆる“英才教育”を受けた感じです。物心ついたときには自然と阪神ファンになっていました。祖父は阪神が負けると不機嫌になるタイプで、負け試合の日は、祖母に「今日はおじいちゃんに話しかけないほうがいいよ」と教えられていました(笑)。

――英才教育、恐るべし!拙著では、阪神ファンの女性(TORACO/トラコ)約3000人に調査協力してもらったのですが、「両親の影響でファンになった」と答えた女性が59.0%、ほかに「祖父母の影響で」も11.7%いたんです。

タイガースの女性ファンも、「TORACO」の言葉の定着と共に、裾野が広がってイメージが変わりましたよね。以前は、たとえば全身虎柄で熱狂的に応援する女子、の印象でしたが、今はファッション感覚で縦縞をまとって、「カワイイ」と評される感じ。

――TORACO仕様のグッズも種類が増えて、私もついいろいろと買っちゃいます。イメージチェンジは、SNSの影響もあるでしょうか。

そう思います。一気に間口が広がりましたよね。球団の広報さんも頑張って、試合の裏側などをYouTubeで配信したりされているので、選手個々人のキャラクターが見えるようになった。女性ファンはそうした部分にも共感しやすいのかなぁと。

大山悠輔ドラフト会場に響いた驚きの声

――その通りです。調査では、女性ファンに「好きな選手」についても聞いたのですが、「優しそうだから」「盛り上げ役だから」など、成績以上に“キャラ”に共感する女性が大勢いました。あるファン心理の研究(※1)によると、ファンに共感を得るポイント(変数)の一つは、「親近感」。キャラの打ち出しは大切です。

(※1:今井有里紗氏ほか(2010)「ファン心理と心理的健康に関する検討」)

牛窪さんが“沼って(ハマって)”いる推しは、森下翔太選手ですよね。やはり、あのお祭り男っぽい明るいキャラに惹かれて?

――明るさや、ここ一番の「勝負強さ」なども森下選手の魅力ですが、天然キャラで「野球バカ」っぽいところも好きなんです。2023年、あるテレビの優勝特番でお会いした平田勝男二軍監督(当時ヘッドコーチ)にも、「森下は素直で裏表がない、いい意味で、おバカないい子だよ」とお墨付きをいただきました(笑)

新幹線でも偶然、森下選手にお会いになったんですよね?

――はい、バンテリンドームで、中日ドラゴンズとの試合を観た帰りに偶然、森下くんと同じ車両になって。もう、ドキドキしすぎて心臓が止まるかと。少しだけ喋ったのですが、緊張しすぎて内容はほとんど覚えていません。「推し」といえば、さばかんさんは、大山悠輔選手推しですよね。

中学生ぐらいまでは、特定の選手を強く推すという感じではなく“箱推し”でした。それが16歳のとき、大山選手がドラフト会議で阪神タイガースから1位で指名された際、会場で「えー?」と指名を疑問視する驚きの声が上がったんです。あのときからですね。

――あれは酷かったですよね。大山選手は、あのときの屈辱を糧にして「奮起した」とも言われています。

大山選手は、大学時代にも日本代表のメンバーに選ばれていて、僕もドラフト前から活躍を知っていました。

なので、驚きの声に「ひどい」「可哀そう」と思うとともに、「みてろよ」「(大山選手の実力は)こんなもんじゃないぞ」って。そこからユニフォームを買ったり、グッズを集めたりして、のめり込んでいったんです。

――熱いですねー。今回のTORACOへの調査でも、大山選手は人気ランキングの上位でした。さばかんさんから見て、大山選手の魅力は、ズバリ!

真面目さです。また、ドラフトで指名してくれた金本知憲監督との師弟関係、そこから厳しいウエイトトレーニングをこなして、体もどんどん大きくなっていきました。福留孝介選手とクリーンアップを打っていた頃から、年々パワーアップしていく大山選手の姿を見るのが楽しかったです。

ところで牛窪さんは、毎年どれぐらい、球場で観戦してらっしゃるんですか?

幸福を実感するカギは「期待しすぎない」こと?

――ここ数年は、40試合前後でしょうか。毎日放送「よんチャンTV」で、コメンテーターとしてご一緒する、タイガースOBの掛布雅之さんには、「牛窪さん、僕より多く球場に行ってますよ」と呆れられています(笑)。さばかんさんも、子どもの頃から通算すると、かなりの現地観戦を?

ええ、トータルでは100試合以上は行っていると思います。ただ最近は、配信のほうが楽しくなって、現地より画面で(配信しながら)見る機会が増えました。ファンの皆さんと一緒に試合を共有しながら配信するのが楽しいんです。まあ、チケットも以前に増して取りにくくなりましたし。

――確かに! ほんと、タイガース戦のチケットは毎年、大争奪戦ですよね。現地ではどんな観戦スタイルを?

基本はライトスタンドで、ユニフォームを着て応援歌も歌います。ただ牛窪さんのように、飲み食いもせず必死に応援し続けるというよりは、球場飯を食べたり、スマホのアプリで「一球速報」(スポーツナビ)のデータを見たりしながら楽しむことも多いです。

――ギクッ。確かに、私の観戦スタイルは、ご一緒する方々から「修行僧のようだ」と言われます。とにかく集中して、応援のことしか考えないので。ところで、2023年の優勝の瞬間は、どんな気持ちでしたか?

新鮮な、感動体験でした。僕は2001年生まれなので、2003年や2005年のリーグ優勝のときはまだ幼な過ぎて、正直あまり覚えてなかったんです。もっとも、2023年も終盤まで確信は持てなかったですね。

――分かります。阪神ファンには、よく言われる「優勝のジンクス」がありますからね。

ええ。

「週刊ベースボール」(ベースボール・マガジン社)が優勝に向けて特集すると優勝できないとか、テレビで「優勝スペシャル」をやると流れが変わるとか。なので、努めて「期待しすぎないように」していました(笑)。

――実は、期待しすぎないほうが、幸福感を実感しやすい。まさに、それが本書の序盤で紹介している「報酬の予測誤差」です。脳のドーパミン神経細胞に関わる概念なんですが、阪神ファンは、おそらく自分でも気づかないうちに、こうした幸福感に繋がる行動を多々とっている。それが今回、本を書いたきっかけです。

そうなんですね!?

(#2へつづく)

「幸福感」に満たされたいなら阪神ファンを知りましょう

牛窪 恵
「英才教育を受け、推しに沼る」阪神ファンにみる幸福感への近道を、牛窪恵と人気配信者さばかんが分析…キーワードは「期待しすぎない」こと
「幸福感」に満たされたいなら阪神ファンを知りましょう
2026年3月5日1,760円(税込)四六判/224ページISBN: 978-4-08-790234-1【野球でなく「幸せ」に関する本です!】 ★「おひとりさま」「草食系」など数々の流行語を世に広め、「ホンマでっか!?TV」ほかテレビのコメンテーターでもおなじみのマーケッター・牛窪恵さん。大学教授でMBAホルダーでもある著者が、推し活と行動経済学などの研究を経て導き出した「Well-being(幸福感)」に繋がるキーワード、それが「阪神ファンと熱狂」でした。 ★みずからも熱狂的な阪神ファンで、毎年40試合前後を球場で観戦する著者だからこそ気づいた、彼らの体感的リアリティと行動心理の意外な関係。本書を読むことで、阪神ファン自身も気づいていない「幸福感」に繋がるヒントが、数多く得られるはずです。 ★本書ではそうした実践的ヒントを、著名なマーケティング理論や女性ファン(TORACO)約3000人への調査・取材を通して独自分析し、わかりやすく展開します。

構成/牛窪恵 

編集部おすすめ