不動産業者は「高齢者の賃借人はクズ」とまで定義…65歳を超えると部屋が借りられなくなる驚くほどたくさんの理由
不動産業者は「高齢者の賃借人はクズ」とまで定義…65歳を超えると部屋が借りられなくなる驚くほどたくさんの理由

マンションに賃貸で暮らしている人も多いだろう。しかし、高齢になってから新しく家を借りようとすると、そこには大きな壁が立ちふさがる。

不動産の専門家の牧野氏は「不動産業者は『高齢者の賃借人はクズ』と定義している」と言い切る。いったいなぜなのか。

牧野氏の新刊『50歳からの不動産』より抜粋・再構成し、その理由を解説する。

収入頭打ち、認知症、火災リスク…高齢者が嫌がられるこれだけの理由

不動産屋は高齢者に対して優しくありません。収入がなくなることを嫌うだけでなく、高齢になることによるリスクに敏感だからです。

たとえば65歳を過ぎたあなたが一人で暮らす前提で賃貸マンションの申し込みに来たとします。十中八九断られます。理由は「高齢者である」からです。いやいや毎日身体を鍛えて健康体だし、毎年の人間ドックの結果もなんの問題もない、頭だってまだまだ大丈夫。どんなに説明し、粘っても徒労に終わります。

高齢者だとなぜ貸してくれないのでしょうか。まず、大家が嫌がります。理由は簡単です。

高齢者は収入がこれから先上がっていく見込みのない人が多いので、賃料の値上がり期待がほぼゼロであることです。前述したように日本の借家法は賃借人にやさしい法律なので、年寄りをいったん入居させると死ぬまで出ていかないことになります。賃料が上がらないわ、出ていかないわの状態になることを嫌うのです。

管理する不動産屋にとっても高齢者は厄介な存在です。認知症を発症すると賃料の滞納が心配です。取り立てようにも会話がうまく成立しない。いったんはわかったつもりになっているだけで実際には支払ってもらえないなど手間が格段にかかります。

また、認知症がすすむと部屋の管理がおろそかになり、ごみ屋敷化するのではないかという心配がでてきます。さらにコンロの火の消し忘れなどによって火災が発生するリスクも高くなります。火災保険に入っているといえども、いったん火災が発生すると大損害です。環境の悪化を嫌ってほかの賃借人に出ていかれると、埋め戻すにもひと苦労です。

そしてもっとも避けたいリスクが室内での孤独死です。

世の中でおひとりさま(ぼっち)が増え続けた結果、今社会問題となっているのが孤独死です。その数は警察庁の推計によれば2024年で年間7万6000人。その76%にあたる5万8000人が65歳以上の高齢者とされます。

高齢者はいったん契約してしまうと、退去する可能性は低く、今がどんなに元気であっても高齢であるためにやがて健康を害する、認知症になるなど管理コストが高くなる。そして最後は部屋内で孤独死する。このパターンを大家も不動産屋も嫌うのです。

近年、孤独死が激増

孤独死の場合、発見が遅れるにしたがって後の処理が大変になります。特殊清掃という仕事があります。一般の清掃では対応できない特殊な出来事に対しての清掃業務を指しますが、孤独死された遺体が搬出されたあとの室内を清掃する業務が近年激増していると言います。

ちなみに人が亡くなった後の部屋の汚れは発見が遅れ、日がたつにつれ、相当悲惨な状況になります。異臭が近隣に漂い、発覚するケースが多いのですが、部屋ごと全面リニューアルする必要が出てくるケースもあります。またこうした状態になると、事故物件として売却する場合も賃貸する場合にも告知義務が発生します。大家にとっては大迷惑なのです。

また処理費用を遺族などに請求できればよいですが、孤独な高齢者ほど家族とは疎遠になっている、そもそも天涯孤独だったりします。もろもろのコストを考えると、とても高齢者を入居させたくないと考えるのも仕方がない側面があります。

私の知り合いのある団地の管理者によれば、団地内が高齢者ばかりになった最近では、当初は珍しかった孤独死が今はごく「普通」の出来事になったそうです。

このようにどんなに元気な高齢者であっても、不動産の賃貸借は長期戦。身体の衰えを見越してリスクをとりたくないという大家や不動産屋の意向が強く働いてしまいます。そのためにも定期的な収入があってまだ高齢者扱いをされないうちに物件をおさえておくことが肝要です。

また実際に住むかどうかは別として子どもと連名で申し込むと、連帯保証などを求められますが、支障なく契約できる場合が多いです。

自分が高齢であることをあまり自覚したくない気持ちはよく理解できますが、逆に家選びを戦略的に考えて早めに実行に移すことで、退職後に思い描くライフスタイルを実現するようにしましょう。

文/牧野知弘

『50歳からの不動産 不動産屋と銀行に煽られないために』(中公新書ラクレ)

牧野知弘
不動産業者は「高齢者の賃借人はクズ」とまで定義…65歳を超えると部屋が借りられなくなる驚くほどたくさんの理由
『50歳からの不動産 不動産屋と銀行に煽られないために』(中公新書ラクレ)
2026/2/91,100円(税込)256ページISBN: 978-4121508577

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