お笑いコンビ・ダイアンのユースケが、初著作となるエッセイ『なんなん自分』(KADOKAWA)を上梓した。同エッセイは、日常の出来事や違和感、心に引っかかった瞬間を綴った1冊だ。
コロナ禍で始まった「書いてみようかな」
——そもそも、今回エッセイを出すことになったきっかけは何だったんですか?
ユースケ(以下、同) コロナ禍のときに、noteで記事を書き始めたのが最初ですね。先輩がやっていて、「こんなんあるで」と教えてもらって。もともと文章を書くことには興味があったので、「自分もやってみようかな」と。
そうしたら、すぐに編集さんから書籍のオファーをかけてもらって、「ぜひ出したいです」と返事はしたんですけど、そこから全然書かなくなっちゃって(笑)。偉そうなことを言うつもりはないんですが、やっぱり気持ちが乗らないと書けないというか……。
でもずっと頭の片隅では気になっていて、さすがに待たせすぎだし「ほんまにちゃんとやらなあかんな」と。そこから少しずつメモが溜まってきたタイミングで、「本の話、再開していいですか?」と相談しました。
それからは新幹線での移動中とか、休日に喫茶店へ行ったり、そういう隙間時間を使ってスマホのメモアプリで書いていました。
——すべてスマホで書かれたんですか!?
はい。
たぶん店員さんも「こいつ、めっちゃ来るやん」って思ってたと思います。
——(笑)。文章を書くのは、ツラくなかったですか?
めっちゃ楽しかったですよ。本を出すのも初めてですし、文章を書くこと自体、これまで本格的にやってきたわけでもなくて。というか、そもそも本をあまり読んだことがないんですよ。小説は、1冊も読んだことがなかった。
でも前から、モヤっとした出来事とかをスマホのメモアプリに書き留めてはいたんです。ネタに使えそうなこととか、番組のトークで話せそうなエピソードとか。それでnoteを始めてみたら、読んだ人が感想を書いてくれるようになって、それもすごく嬉しくて。
自分にとっては日記みたいな感覚なので、思ったことをそのまま書ける。そういう自由さも含めて、「文章を書くのって楽しいな」と思えましたね。
——文章を書くうえで、何か意識していたことはありますか?
書いたあとに読み返して、「自分が心地よく読めるかどうか」は、けっこう意識しましたね。この一文、ちょっと気持ちよくないなとか、テンポ悪いなとか。
自分が読んでいて「ここ2文字いらんな」とか「『です』より『ですよ』のほうがええな」とか、そういうところを感覚で調整しているだけですけど(笑)。
あと、ここに書いてあることって、実際に声に出してしゃべっている言葉じゃなくて、心の中で思っていることなんですよね。だから、そういうニュアンスまで含めてちゃんと読む人に伝わるのかな、という点はかなり気にしていました。
——周囲の反応はいかがでした?
スタッフさんに「本、読みましたよ」と声をかけてもらうと、もちろん「ありがとうございます」ってなるんですけど、やっぱりちょっと照れるんですよね。
というのも、ここに書いていることって、自分が思っていることをそのままさらけ出しているようなものなんです。そういうことをするのも、今回のエッセイが初めてで。
その「恥ずかしいな」と思う部分も含めて、かなり正直に書いたので、そのあたりも楽しんでもらえたら嬉しいですね。
「なんであんなことするんやろ」モヤモヤが生まれる瞬間
——エッセイには、普段感じているモヤモヤや違和感を扱ったエピソードも多いですよね。幼少期から、そうした部分に敏感だったんですか?
そうだとは思うんですけど、お笑い芸人として仕事をさせてもらうようになってから、より目につくようになりましたね。
もしかしたら、どこかに「ネタにできるかもな」という気持ちがあるのかもしれないし、単純にイラッとするだけのときもありますけど(笑)。
——最近は何かありましたか?
エッセイにも書いたんですが、よく行くサウナがあるんですよ。この間も入っていたら、途中でネックレスを二連で巻いた、50代後半くらいの人が入ってきて。
たまに見かける人なんですけど、普段はしていないのにその日は二連のネックレスで。まず「二連やな」と。
——(笑)。
で、その人が出ていくとき、サウナの扉をちゃんと閉めなかったんですよ。ちょっと隙間があって、「ドア空いてるやん」と思って……。
そのあと僕もサウナを出て洗い場で体を洗ったんですけど、いつも泡を流すとき椅子に座るのが嫌で、立ってシャワーを浴びるんですね。
そしたらついたて越しに隣の人から注意されて。「かかってるよ。
よく見たら、その人、さっきの二連ネックレスの人やったんですよ。
いつもやったらすぐ「すいません」って言いますけど、「いや、お前さっきドア閉めてなかったやんけ」って思ってしまって。だから、すぐには言えなくて。最後は謝りましたけど、ちょっと引っかかりましたね。
——まずネックレスに目がいっているあたりが、ユースケさんらしいです。
裸なんで、めっちゃ気になるんですよ。時計とかブレスレットをしている人もいますけど、それも気になる。「なんで取らへんの?」って。
——細かいところまで目がいってしまうんですね。毎日かなり疲れそうです(笑)。
たとえば水風呂で潜っていた人のことも、ちゃんと覚えているんですよ。
細かいところが気にならなくなれば、もっと楽やろうな、とも思うんですけどね。
ユースケが考える理想の「これからのダイアン」
——ダイアンは今年、結成26年を迎えます。今や押しも押されもせぬ人気コンビですが、これまでのキャリアの中で、一番しんどかった時期はいつだったんですか?
たとえば、大阪で若手だった頃はほんまに仕事がなかったですし、M-1に向けて根を詰めていた時期も、今振り返るとしんどかったのかなと思いますね。
でも、そのときは意外と何も思っていないというか。あとになって振り返って「あのとき、ちょっとしんどかったんかな」と思うくらいで。
それがあんまり良くないところというか、もっと危機感を持ってやったほうがいいんでしょうけど(笑)。
——コンビにとっての転機は、どこにあったのでしょう?
個人的にはラジオの存在が大きかったですね。転機と呼べるほどではないかもしれないですけど、ラジオをやり始めてから、見られ方が変わった感覚はありました。
それまでも単独ライブは一応完売していたんですが、「よなよな」をやるようになってからは、即完するようになって。そこは、状況が変わるひとつのきっかけやったなと思います。
——エッセイにも、ラジオへの想いが綴られています。ダイアンにとって、ラジオはどんな存在なのでしょう?
ラジオって、本当に2人だけじゃないですか。
だから良くも悪くも、ほかの人が入って薄まることがない。めちゃくちゃ濃い時間になるんですよね。ダイアンが原液のまま、というか。
リスナーさんの中には「ちょっと濃すぎるから薄めてほしい」という人もいると思うんですけど、個人的には2人だけの空気感がそのまま伝わればいいなと思っています。
——コンビの間で流れる空気感のようなものは、変わりましたか?
そこは全然変わらないですね。これもラジオをやっているのが大きいと思います。
僕らは楽屋でめっちゃしゃべるわけではないんですけど、今も「TOKYO STYLE」は毎週ありますし、「ラジオさん」も毎月あって……。ずっと同じようにやってきたので、距離感とか役割みたいな部分も含めて、「変わったな」と感じることはあまりないですね。
若手の頃は、おたがい熱くなってピリつく、みたいなこともありましたけど。
——最近は?
今はもう、ないですね。メモすら取らないです。
——(笑)。ダイアンとして、今後はどのような形で活動を続けていくのが理想でしょうか。
バランスよくできたらいいな、とは思いますね。テレビや劇場だけでなく、YouTubeやSNSなど、昔と比べて活動の幅は広げやすくなっています。
その中で、どこか一方向に偏るのではなくて、これまで通り自分たちの番組をしっかりやらせてもらいながら、漫才も続けて、年に1回の単独ライブもやる。
そのうえで、他の仕事や個人の活動も頑張る。そういう、いいバランスで活動していけたら理想やなと思っています。
『なんなん自分』(KADOKAWA)
ユースケ(ダイアン)
取材・文/毛内達大 撮影/井上たろう

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