子どもが小学校に入学する前にランドセルを選んで購入する「ランドセル活動(通称・ラン活)」。この言葉が広まってから久しいが、ランドセルのデザインや機能、価格などはますます多様化している。
「500円の中古ランドセル」をめぐりXで賛否の声
「我が家のラン活、終了しました。使うのは2027年4月からです。ご縁あって500円。大事に使えればそれで十分。浮いたお金は、経験に回します」
2月上旬、自身の“ラン活終了”を報告した保護者のX投稿に対し、「美品ですね」「考え方が素敵」といった声があったいっぽう、「子どもがかわいそう」など様々な反応が寄せられた。
この投稿をした父親(@free_Newichiro)は、購入した経緯について次のように話した。
「家族でリユースショップに立ち寄った際、税込550円で状態の良いランドセルを見つけました。親としては『必ず6年間使い切らなければならない』という前提は持っておらず、途中で買い替える選択肢も当然あると考えていました。
最終的に『これがいい』と背負って選んだのは子ども本人です。その後に他のランドセルも見せましたが、気持ちは変わらず、今もとても気に入って、入学を心待ちにしている様子です」
続けて、「ラン活」に対する自身の考え方を次のように説明した。
「私自身の経験として、物を一番丁寧に扱うのは“最初の時期”だと感じています。そのため『6年間使い切る前提』で高額な新品を購入するよりも、柔軟に選び直せる余白を残すほうが合理的だと考えました。
今回の価格であれば、仮に数年後に本当に欲しいランドセルが出てきても、その時に改めて購入すれば良い。むしろ、複数を使い分けるという選択肢さえ持てます。
我が家にとって大切なのは“新品か中古か”ではなく、『自分たちで納得して選んだかどうか』です。浮いた分は家族の体験に回す。それもまた、我が家なりの教育投資だと考えています。『正解を選ぶ』のではなく、『納得できる選択を重ねる』ことを大切にしています」
確かに、ラン活をめぐる考え方は人によってさまざまだ。
都内で8歳と6歳の子どもを育てる40代の母親は、安く買う“秘策”があると話す。
「上の子のときは、入学前に大手家具店で現品限りのランドセルを1万円くらいで買いました。子どもは乱暴に扱うし、入学前ぎりぎりだと安くなることがわかったんです。
今年の春に下の子が小学校に上がりますが、同じお店で下見は済ませていて、本人が気に入ったものがあったので、次の三連休には買う予定です」
また小学1年生の子どもを育てる母親は次のように振り返る。
「うちは一人っ子ということもあり、『ラン活』という言葉に乗せられてそれなりにお店を見て回りましたね。まあでもとにかく荷物が重そうで…特にタブレットはどうにかならないものでしょうか。
ちなみに私自身は3姉妹の末っ子だったので、ランドセルは当たり前におさがりでした。特に何も思わなかったし、単純に小学校の楽しい思い出しかないです」
議論の背景にはランドセルの「価格高騰」
増え続ける選択肢のなかで保護者を悩ませる「ラン活」。
リユースショップ「2nd STREET」などを展開するゲオホールディングスの担当者は「ランドセルの取り扱いは極めて少なく、状態のよいものが安価で売られるのは非常に稀なケースだと思います」と話す。
担当者によれば、現在「2nd STREET」は900店舗以上を展開しており、この10~15年で店舗数は右肩上がりで増加。背景には物価高の影響もあるが、2013年以降にメルカリなどが参入したことも大きいという。
「中古のCtoC(個人間取引)のプラットフォームができあがったことで中古品に触れる機会が増え、これまで抵抗を感じていた人も『中古品でも全然いいよね』と考え直すようになった例が増えてきています」
同担当者が話すように、国内のリユース市場は拡大を続けている。環境省の報告書によれば、2023 年におけるリユース市場規模は3 兆1227 億円で、2009 年の1 兆1274 億円から大幅に増加。このほど政府は、2030年に市場規模を24年比で32%拡大させる方針を明らかにしたばかりだ。
そうした背景のもとで起こった今回の“中古ランドセル論争”には、ランドセルの価格高騰も影響している。
「実際に資材費がかなり上がっています」と話すのは、神奈川と東京でランドセル専門店「おりじなるぼっくす」を運営する鈴木茂氏だ。
「私もこのお店を30年近くやっていますが、今までベルトのバックルや自動ロック、ナスカン(フック状の金具)などの部品は昔ながらの金物の工場が作っていました。それがみんなやめてしまって大手が作るようになり、その分価格も上がっています。部品に使われる金も高騰しています」
では、販売店の立場から「中古ランドセル」についてはどう見ているのか。
「基本的にランドセルに使われる人工皮革の耐久性は8年で設計されています。そうすると、中古のランドセルだと生地の摩耗年数を超えてしまい、スニーカーのように加水分解で内部が傷んできます。友達に引っ張られて部品が破損したりすれば、けがにつながる可能性もあります。
また、この6年でもランドセルは大型化しています。6年前はA4クリアファイルが入る大きさでしたが、今はブックファイル、バインダーが入るサイズですし、マチ幅も広くなっています。
タブレットが導入されましたが、教科書は減っていないし荷物も多い。そう考えると、中古ランドセルでは容量が足りないかもしれません」
「それぞれのご家庭でどう考えるかという問題」
鈴木氏によれば、状態のよい中古ランドセルが低価格で販売される裏には、ランドセル業界特有の事情があると話す。
「良い状態のものが低価格で流通する要因は、ひとつには個人の方がきれいな状態のものを売っている場合です。
もうひとつは業者によるケースです。ランドセルは耐生地摩耗年数が想定されているため、倉庫の奥に売れ残ったりしていた場合に保証がつけられなくなるものが出てきます。
それをメーカーが一括で廃棄しますが、その廃棄業者がリユースショップなどに流すケースもあります。
ただ、今はメーカーはほぼ流通在庫は持っていないので、今後は出なくなると思います」
では、今回のラン活をめぐる議論についてはどう捉えているのか。
「正直僕らが答えるべきかどうかわかりません。ただ、個人として言わせてもらえば、それぞれのご家庭でどう考えるかという問題で、他人がとやかく言うことではないとしか思いません」
最後に鈴木氏は、ランドセルが140年の歴史を経て今も使われ続けている背景には、職人やメーカーの努力の積み重ねがあると指摘。「進化と文化という部分を大切にしていけたらいいと思います」と語った。
子どもにとっても親にとっても大きなイベントである「ラン活」。子どもと相談しながら、それぞれにとっての「納得解」を見つけてほしい。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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