「いじめ対応は学校任せ」に限界? 立川市がいじめ監察課を設置…専門家からは運営リスクを指摘する声、SNSでは「モンペ監察課も」
「いじめ対応は学校任せ」に限界? 立川市がいじめ監察課を設置…専門家からは運営リスクを指摘する声、SNSでは「モンペ監察課も」

東京都立川市が4月から設置する「いじめ監察課」は、学校の外に独立した通報窓口を設け、迅速な事実確認と対応を目指す新たな試みだ。その背景には、昨年5月に立川市の小学校で起きた侵入事件がある。

この事件はいじめを訴えた保護者が学校対応に不信感を抱き、外部に相談したことがトラブルに発展したとされる。学校任せにしない新たな仕組みは、子どもたちを本当に守れるのだろうか。

東京・立川市が「いじめ監察課」を設立

東京都立川市は、今年4月から「いじめ監察課」を設置すると発表した。市役所がいじめの通報窓口となり、学校現場の外から現状を見つめ直すことで、いじめの即時停止を目指す。

立川市立第三小学校では昨年5月、校舎内に男2人が侵入し、教師らを暴行して逮捕された事件が起きている。

当該の小学校に通う娘の母親が、当時学校に娘がいじめられている旨の相談をした。しかし、学校側の対応に納得できず、知人の男2人に相談を持ちかけたことで事件に発展したとされている。

「男2人は泥酔状態で学校に侵入、授業中の教室で持っていた酒ビンを叩き割り担任教師を暴行、止めにきた校長も殴りつけ逮捕、起訴された。昨年12月立川地裁は男に懲役3年(執行猶予5年)の判決をくだしている」(社会部記者)

そのような経緯も踏まえ、市のコンプライアンス推進課は「元々は市長が公約で『子どものいじめをどうにかしたい』と話しており、昨年4月には参考とする大阪府寝屋川市の取り組みを視察し、感銘を受けて設立に至った」と背景を話した。

文部科学省の令和6年度(2024年度)の調査結果(公表:2025年10月)では、小・中・高等学校及び特別支援におけるいじめの認知件数は76万9022件とあり、コロナ禍から増加の一途をたどる。現状の取り組みだけではいじめに歯止めはかからないことが、データとして読み取れる。

立川市教育委員会による市内小中学校のいじめ認知件数は以下の通り。ほぼ横ばいとなってはいるが、減らすことはできていない。

令和3年度 小学校:1641件 中学校:131件
令和4年度 小学校:1521件 中学校:111件
令和5年度 小学校:1586件 中学校:121件
令和6年は現時点で未公表

仕組みでいじめを減らせるか

立川市が手本にする大阪府寝屋川市の取り組みは「寝屋川モデル」として知られている。事案によって弁護士や警察への相談を市がサポートし、弁護士への相談費用も補助する制度などがある。

監察課の担当者は「子どもから相談を受けた場合は、学校を訪問し、どんな状況・被害があるかを直接聞き取りをします。学校や教育委員会の対応だけでは時間がかかる場合があり、その間に問題が複雑化してしまうのです。

学校や行政では対応できない場合、例えば大きな被害に遭って損害を回復したい、責任を追及したい場合は、弁護士や警察への相談をサポートします」と話す。

寝屋川市は市立小学校の3年生と6年生の全クラスを対象とした「暴力防止プログラム」を行なうなど、いじめの未然防止・撲滅に先進的に取り組んでいる。

行政との連携が混乱を招く? 

立川市の取り組みに対しSNSやネットでは「取り組みは立派、全国に広がってほしい」と賞賛する声があるいっぽうで「市職員で対応できるのか?」「モンペ監察課も作るべきでは?」といった声もあがっている。

学校危機管理にまつわる問題解決を専門とする「学校リスクマネジメント推進機構」代表の宮下賢路氏は「教育委員会等との役割分担や相互協力が前提にあるかどうかが重要」と話す。

「(連携が取れていないと)どちらが主導してやるのか、というところで現場が困ってしまい、そうなると両方の機能が弱くなる。被害児童・生徒を助けるという効果が限定的にならないように、役割分担や協力体制が必要ではないかと思う」

学校が調査を行う場合の問題点についても「まず事実確認ができていないというか、甘いというか、そのままスタートしているケースがある。

被害者側、加害者側、学校側で事実確認の結果が共有されていないところからスタートしているので、ボタンを掛け違えたまま対策が進んでしまうと、齟齬が出てきてしまう」と指摘する。

子どもを守るためには、確立された仕組みが重要だと話す。

「被害者を助けるための設計になっているかどうかが大切です。

具体的に細かくやっても色々問題は出てくると思う。相談件数に対して、その人員体制でさばいていけるのか、とか。

そこの見直し、改善をするPDCAを回して、連携・協力して被害者のためにやっていくことが大事。(学校と行政で)対立構造になってはいけない」と述べた。

加えて「ちゃんと機能しているかどうか、利害関係がないような人が評価しないといけない。また成果はどう計るのか。例えば相談件数が増えた減ったみたいなことを目標にすると逆効果になる」として、運営の難しさを指摘した。

いじめにまつわる問題は山積みだ。最近では加害者側のプライバシーがSNSで過剰にさらされ、必要以上の制裁を受ける潮流がある。

宮下氏は「自分の行動が引き起こす将来のリスクについて、ちゃんと教育していかなければ」と話す。

いじめを行なった当人に非があることは間違いないが、対応を巡ってSNSでは不満が爆発し、その矛先が加害者の家族にまで向けられている。余計な被害を生まないために、いじめを未然に防ぎ、的確に対処できる仕組みが望まれる。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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