〈武蔵小山・地上げ〉「次は…あなたの番です」立ち退き目的でガソリンまいて放火、現場は地価爆上がりの“億の住宅地”逮捕された不動産会社の男ら6人「実行役には100万円」
〈武蔵小山・地上げ〉「次は…あなたの番です」立ち退き目的でガソリンまいて放火、現場は地価爆上がりの“億の住宅地”逮捕された不動産会社の男ら6人「実行役には100万円」

武蔵小山駅周辺の再開発が進む東京都品川区小山で、地上げ交渉を有利に進めるために住宅やアパートにガソリンをまいて放火したとして、警視庁捜査1課と荏原署は20日までに、現住建造物等放火未遂などの疑いで不動産会社員の男ら計6人を逮捕した。土地価格が高騰する一等地を舞台とした、立ち退き工作の実態が捜査で浮かび上がっている。

強い恐怖心を植え付けるために放火という手段を…

逮捕されたのは、港区赤坂2丁目の不動産会社員・内藤寛己容疑者(31)を筆頭に、沖本瑠介容疑者(30)、直井駿太容疑者(29)、山上龍太朗容疑者(28)、千布魁容疑者(28)、柴崎勇雅容疑者(26)の計6名。

内藤容疑者は、知人関係にあった他の5名に指示を出し、実行役、運転役、用具の準備などを分担させていたとみられる。調べに対し内藤容疑者は「間違いない」と容疑を認めており、一部の共犯者も関与を認める供述をしている。

犯行は昨年10月から11月にかけて2回行われた。

「まず1件目ですが、グループは昨年10月31日午前5時すぎ、品川区小山2丁目の木造平屋建て住宅の外壁にガソリンを散布して火をつけました。この家には当時65歳の男性が就寝中でしたが、男性が異変に気づいて自ら消火したため、建物の一部が焦げるにとどまりました。しかし、そのわずか20日後となる11月18日の未明に、グループは2件目の犯行に及んでいます。

今度は、同じ男性宅に隣接する2階建てアパートの1階室内に侵入し、再びガソリンを撒いて放火しました。この火災でアパートの室内数カ所が燃える被害が出たのですが、実はこのアパート、すでに内藤容疑者らが立ち退きを完了させており、中は無人だったのです」(社会部記者)

内藤容疑者は、ターゲットとなった一帯の土地取得を担当する「地上げ」の責任者であった。1件目はターゲットの住宅そのものを、2件目はその隣接建物を狙った点に、犯行の特異性があるという。

「内藤容疑者は、立ち退き交渉が思うように進まない中で、男性に対して強い恐怖心を植え付けるために放火という手段を選んだようです。特に捜査当局が注目しているのが、内藤容疑者が勤める不動産会社で管理し、自ら鍵も持っていた隣のアパートに火をつけたという点です。

これは単なる放火という以上に、隣接する男性宅に向けて『次に立ち退くのはあなたの番です』と突きつける、強烈なメッセージを込めた嫌がらせだったと分析されています」(同前)

 6階建てのファミリー向けのマンションを建設する話も

現場周辺は近年、タワーマンションの建設が相次ぎ、地価が劇的に上昇しているエリアである。

地元の事情に精通する近隣住民は、近年の変化と事件に至る経緯を次のように語る。

「ここは目黒駅へのアクセスも良く、新横浜方面も直通。古くからの住民同士、町会の絆も強くて、本当に穏やかで住みやすい街だったんです。それが武蔵小山の再開発で、一気に『億』の街に変わってしまった。

今や60平米で1億円超え、3LDKなら1億5000万円も珍しくない。(土地の)坪単価はこの10年で2倍の400万から500万円に高騰し、特に駅に近い今回の現場周辺は、つい最近も坪単価660万円で取引があったと聞いて驚きました。地元の不動産業者も『あの区画は誰もが喉から手が出るほど欲しがる一等地』と断言しています」

地元の事情に詳しい別の近隣住民は、今回の事件に至るまでの経緯を次のように明かす。

「地上げ屋が動いたのは、まさにあの区画だけでした。事の発端は2年半前、築60年以上の古いマンションが売却されたことから始まりました。そのマンションの裏手には5、6軒の一戸建てと古いアパートが建っていましたが、ポストのボヤ騒動があったあのお宅を除いて、周辺はすでに住人が退去している。

地元の業者の間でも『交渉してもどいてくれないから、嫌がらせ的に火をつけたのではないか』と噂になっていました。嫌がらせを受けていた男性は、長く地元に住んでいる寡黙なかたで、あまり地域との交流はないですね。

事件後、ほとんど見てない。よほど怖かったんでしょうね」

かつてのバブル期のような「乱暴な立ち退き工作」をしていた内藤容疑者。勤務先である不動産会社のA社が管理する当該区画では、すでに古いマンションを解体して駐車場にするなど開発の準備が進んでいた。

前出の住民によると、計画では当該区画には6階建てのファミリー向けのマンションを建設する話が進んでいたという。

警視庁捜査1課は、防犯カメラ映像の解析から内藤容疑者自身も現場を訪れていたことを特定。実行役らには約100万円の報酬が支払われていたことも判明しており、今後は内藤容疑者の独断か、あるいは組織的な関与がなかったかについても慎重に解明を進める方針だ。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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