「420万人の声を無視するのか」――。参政党の神谷宗幣代表が、高市首相の設ける「国民会議」に招かれていないことを痛烈に批判した。
参政党「小さな声をしっかり聞くとか言いながら、我々は呼ばれてない」
「小さな声をしっかり聞くとか言いながら、我々は呼ばれてない。(衆院選での比例獲得票)420万人の声を無視するのかというところは強く言っていきたいと思いますし、結局、減税を本気でやる気がないな、と思う」
参政党の神谷宗幣代表は2月20日、高市首相が設置する「国民会議」に参政党が呼びかけられていない点を痛烈に批判した。
参政党と言えば、保守色の強い高市首相とは政策・思想が近いと見られてきただけに、同党が“門前払い”されたことに違和感を覚える人もいるだろう。
ただ、首相が設ける「国民会議」は衆院選公約に基づき、食料品の2年間消費税ゼロ化と、所得税減税と現金給付を組み合わせる「給付付き税額控除」について議論する場となる。
自民党の小林鷹之政調会長は2月21日の「X」(旧ツイッター)で、参加の条件として①給付付き税額控除の導入に前向き②消費税は社会保障の貴重な財源との認識を持つ―を挙げ、「特定の政党を排除する意図は全くない」と理解を求めた。
高市首相は国会で「超党派で構成される『国民会議』において検討を進め、結論を得る」と消費税減税に向けたスケジュールを説明してきた。
ただ、自民党は「給付付き税額控除」の導入に賛同する党に限定して参加を要請し、そもそも消費税廃止を主張する政党には声をかけていない。
これが一部の政党に対する「排除」なのかを論じる前に、改めて衆院選で主要政党が掲げた公約を振り返りたい。
中道改革連合は恒久的に食料品の消費税率をゼロにすると主張
自民党と連立政権を組む日本維新の会は、食料品の消費税率を2年間ゼロにすると掲げ、高市首相は補助金と租税特別措置の見直し、税外収入で減税分の財源を確保すると訴えた。
立憲民主党と公明党の衆院議員で結成した中道改革連合は恒久的に食料品の消費税率をゼロにすると主張し、国民会議への参加要請を受けた国民民主党は賃上げが定着するまで消費税率を一律5%に軽減するとした。
先の衆院選においては、チームみらいを除く主要政党が「減税」を訴えた。
国民民主党は「まず与党案を示してほしい」「国民会議と名乗る以上、できるだけ幅広い参加を募った方が良いものができる」との立場で、中道改革連合の小川淳也代表は「(政府・与党の)アリバイづくりに付き合うつもりはない」と距離を置く。
それぞれの政党には「政策論」と「政局論」の2つがあるのかもしれない。しかし、筆者が感じるのは、その2つを包含した上で「公約とは何なのか」に重きを置いたスタンスであるべきではないかということだ。
まず、「政策論」を踏まえた場合に高市首相や自民党が衆院選で国民に約束したのは「2年間の食料品の消費税ゼロ化」である。
実現に向けたプロセスとして「国民会議」で議論するとした上で、その後は「給付付き税額控除」を導入するということだった。この点は、全くブレていない。
高市首相の本丸は「給付付き税額控除」の導入
たしかに衆院選ではチームみらいを除く主要政党が「減税」を訴えた。「廃止」を掲げた政党もある。
だが、具体的な制度設計を国民会議で詰めるとしてきた以上、首相が2年間の食料品の消費税ゼロ化や給付付き税額控除の導入に反対の政党とも議論するとなれば、スピーディーな「公約実現」が難しくなる可能性が高まる。それは、ひいては国民への「背信」につながるはずだ。
消費税減税だけを議論するならば良いかもしれないが、高市首相の“本丸”は「給付付き税額控除」の導入と言える。2年間の食料品の消費税ゼロ化はあくまでも「つなぎ」的な意味合いがある点を忘れてはならないだろう。
首相は2月18日の記者会見で「中所得、低所得の方々の負担を減らす」とし、控除と給付を組み合わせながら支援していく考えを重ねて強調している。
こうしたプロセスで首相や自民党が総選挙での圧倒的な民意を得た以上、「公約実現」を最優先するのは当たり前のことだろう。高市首相は衆院選において年間5兆円近いとされる減税分の財源は「2年間限定」で確保できると説明した。
給付付き税額控除の導入は制度設計に年単位の時間を要するとみられており、それまでは物価高に苦しむ国民生活を消費税減税で手当てするという意味だ。
首相の政権基盤が安定化したことで成長産業への投資も本格化する。期待先行といわれたマーケットも長期的な投資が計画的に実行に移されていけば、国内外の投資家がさらに「日本」に注目を寄せるだろう。
単なるバラマキや一時しのぎの政策がなくなっていく1つの解として「給付付き税額控除」は考えられても良いはずだ。
誰の「実績」になろうが国民にはどうでもいい
その上で「政局論」的な観点からも論じておきたい。忘れてはならないのは、昨年9月に自民党と公明党、立憲民主党は「給付付き税額控除」の制度設計について3党の代表が会談し、協議入りで合意した事実だ。昨年末には日本維新の会も含めた与野党4党で実務者協議を開いている。
報道においては、立憲民主党と公明党の衆院議員が合流した中道改革連合の中には「政権側の実績作りに利用されるだけだ」と警戒感があるということだが、立憲民主党として合意した協議入りの事実は何だったのか。
もっと言えば、誰の「実績」になろうとも国民にとって良い政策ならば、どうでも良いことなのではないか。
加えて、立憲民主党の野田佳彦前代表は民主党政権時代、自民党や公明党と「社会保障・税一体改革」で合意した。
与党から野党に立場が変わったとは言え、公明党はどのように整理しているのか。その点を一度クリアにしてもらいたい。
国民民主党の玉木雄一郎代表は昨年9月、給付付き税額控除について「制度としては優れているが、最大のネックは、今から議論を始めても当面の物価高対策としては間に合わないということだ」と説明した。
その時、高市首相がどのような判断を下すか
玉木氏の指摘する通り、導入には年単位の時間がかかるとしても、制度自体には玉木氏も前向きであることがうかがえる。
ならば、国民会議でより良い「国民民主党案」を提示し、長期的な観点から国民生活を向上させるプランにしていくべきだ。そこに国民民主党の価値がある。
一部には、高市首相が財務省などの抵抗に遭って公約を実現できないのではないかとの言説もみられる。だが、野党も含めて「減税」を衆院選で掲げた以上、いまさら財務省の抵抗で潰れることは考えにくい。
むしろ、不安材料があるとすれば、食料品の消費税ゼロ化を2年限定で実行した場合、その後に再び消費税率を元に戻すことが可能なのかということだ。給付付き税額控除が導入されたとしても、消費税率を改めて「正常」に戻すには政治的体力が必要になるだろう。その時、高市首相がどのような判断を下すかにも注目が集まる。
ひとまず、首相が設ける「国民会議」は6月中にも一定の方向性を出す予定だ。ただ、給付付き税額控除に伴う財源はどう捻出するのか。そこから「先」の議論も国民会議においては詰める必要がある。
政治家・政党の「公約」は言うは易く行うは難し、である。選挙で掲げた政策を実現しないで良いならば、単に「言ったもん勝ち」を許してしまう。
政策論としても、政局論としても議論に参加しないのでは、国民からソッポを向かれるのではないか。仮に「国民会議」という名称が不評を招いているならば、高市首相は「与野党協議」などと名を変えれば良い。すべての政治家・政党は「公約」を守るか否かが問われている。
文/竹橋大吉

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