キンタロー。一瞬で空気を支配する唯一無二の破壊力
どうせSNSの話題だから、放っておけばすぐに流れていくのだろう。だが、今回のキンタロー。の炎上は、ものまねという芸の“いま”を考えるうえで、少し立ち止まって見ておきたい出来事でもある。
2月21日、キンタロー。が自身のXでミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート・ペアで金メダルを獲得した、りくりゅうペア(三浦璃来、木原龍一)のものまねを披露し、その偉業達成を祝福した。
これまでもスピード感を持ってさまざまな旬のものまねに挑戦してきたキンタロー。だが、2025年10月に公開した高市早苗首相のネタが物議を醸すなど、批判を浴びることも少なくなかった。今回も公開にあたって、「色々規制が厳しく成る中、表現の自由が奪われつつあった昨今、正直…我慢していた」と葛藤を明かしている。
「これはものまね芸人として 生を受けてしまった私のプライドです お願いです。みなさん 温かい目で見てください 絶対に叩かないでください 私も人の子です ちゃんと傷つきます」「そこに似てる人がいたから どうしてもやりたかった」と投稿していたが、その不安通り、「リスペクトがない」「不快」といった声も広がっていった。
ネタの好き嫌いはあるにせよ、その反応の大きさは単なる賛否を超え、「そもそも、ものまねってなんで許されてるの?」という、ものまね芸の根幹を揺るがしかねない空気すら漂わせた。
前提として、キンタロー。は一流のものまね芸人である。その魅力は「やりすぎ」と言いたくなるほどの過剰性にある。
ブレイクのきっかけになった『博士と助手~細かすぎて伝わらないモノマネ選手権~』(フジテレビ系)での前田敦子や、再ブレイクを導いた『水曜日のダウンタウン』(TBS系)の「30-1グランプリ」(30秒以内のショートネタで競い合う小規模賞レース)で披露した北京五輪の天才子どもトランペッターなど、一瞬で空気を支配する破壊力は唯一無二だ。
尊敬するふたりのカリスマ芸人
キンタロー。のものまねにおいて、声や仕草の再現度も高いのだが、どうしても前面に出るのは“顔面の強度”。一般的な形態模写が「どれだけ本人に寄せられるか」を競うのに対して、彼女の場合は、どちらかというと巧みなメイク技術でご本人をキンタロー。のキャンバスに投影すると言ったほうが近いかもしれない。
だからこそ、そこにズレが生じて「ヒドい顔芸なのに、なぜか似ている」という奇妙な説得力が生まれる。
最近の作品として、『ねぶた祭り』や『シャイニング(ジャック・ニコルソン)』などは、精密な再現というより、顔の強度をどこまで上げられるかという発想から導かれたネタだろう。彼女は計算ではなく、衝動で突き抜けるタイプの芸人であり、そこにはものまねの批評性よりも、純粋な衝動のエネルギーがある。それこそがキンタロー。の面白さなのである。
キンタロー。には、尊敬するふたりのカリスマがいる。ひとりはものまねレジェンドのコロッケ。彼女は女版コロッケを目指し、ものまねのレパートリーにもしている。もうひとりがハリウッドザコシショウで、「しつこいところを活かせ」「もっとクレイジーになれる」と助言をもらったことが、いまにつながっていると語る。
ハリウッドザコシショウの「誇張ものまね」も、ものまねか否かの賛否はあるものの、『オールスター後夜祭』(TBS系)の「誇張ものまねクイズ」では、ほとんど原形をとどめないにもかかわらず、わずかな要素からの正解に納得させられる瞬間がある。あれもまた、ものまねの系譜に連なる表現に違いない。
ものまね四天王時代にコロッケや清水アキラがスターたちのクセをパロディ化し、ハリウッドザコシショウが極限まで解体、再構築したものまね芸における誇張。
キンタロー。も間違いなく、その系譜にあるだろう。彼女の場合は自らの顔の強度を武器に独自の壊し方を発見した。それは決して緻密な計算によるものではなく、純粋な「やりたい」という衝動からくるものだ。
こうした破壊と再構築は、ものまねの歴史の延長線上にある進化の形だ。ただ、破壊の要素がある以上、万人に受け入れられる芸ではない。
今回の炎上の大きな要因は、やはりSNSという“場所”にある。高市総理のものまねが炎上したのも同様で、世間の好感度や祝福ムードが絶頂にあるタイミングで、キンタロー。特有の“強い顔”が出てくれば、それを冷や水と感じる人は少なからずいる。
ものまねという文化はSNS時代にどう生きていくか
ここで思い出されるのが、2025年2月に放送された『X年後の関係者たちあのムーブメントの舞台裏』(BS-TBS)の「ものまねブーム編」だ。世代を代表して、コロッケ、原口あきまさ、レッツゴーよしまさ、松浦航大が集結し、ものまねの歴史を振り返った。
その番組終盤でMCのカズレーザーが「(いままでは)『本人が(NOを)言うのは無粋だから許された』があったけど、本人側が『権利を侵害されたら困ります』とはっきり言う時代になると、ものまねはどうなるのか」という問いを投げかけたとき、スタジオの面々はどこかピンときていないように見えた。
発言のきっかけは、より精度を高める昨今の歌まねブームやAI時代の到来を受けてのものだったが、カズレーザーの視線は、もっと先を見ていたように思う。ものまね協会や組合の必要性なども軽く語られたが、最終的には「無粋な人が増えたら(ものまねは)終わりです」と笑いにして番組は終了した。だが、それこそが、まさにいまを取り巻く状況の変化を示唆していたように思う。
今回のケースでは、りくりゅうペア本人は現時点で何もコメントを出していない。それでも、ファンの側から強い拒否の声が広がった。お笑いコンビ・スリムクラブの真栄田賢は自身のXで「りくりゅうペアご本人達が『最高、好きです』って言ったらどうなるんかな」とポツリつぶやいたが、もし本人が“公認”すれば空気は変わるだろうか。
だが、今回の騒動は、公認の有無というよりも、黙認を前提にしてきたものまね文化が、SNS時代には成立しにくくなっていることを暗示している。いまは、本人が何も言わなくとも、ファンの声が瞬時に可視化される時代なのである。
テレビやステージであれば、この炎上は起きなかった可能性が高い。今回の騒動は、一芸人の炎上にとどまらず、ものまねという文化が、SNS時代にどう生きていくか。その難しさを浮き彫りにした出来事だった。
文/森野広明

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