〈現役最年長レースクイーン〉「25歳で卒業」の空気に抗い続けた40歳が年齢公表を決めた本当の理由
〈現役最年長レースクイーン〉「25歳で卒業」の空気に抗い続けた40歳が年齢公表を決めた本当の理由

レースクイーンといえば若い女性が中心というイメージがあるが、40歳で現役を続ける人物がいる。全日本モトクロス選手権で10年にわたりレースクイーンを務める片瀬亜乃だ。

高校生のレースクイーンが現場に立つこともある中、現役最年長として第一線に立ち続けている。

 

そんな片瀬は20代後半から10年以上、年齢を非公表にして活動してきたが、40歳を迎えた今、自ら公表した。暗黙の「年齢リミット」がある業界であえて公表に踏み切ったワケとは。

週4の専門学校、軽い気持ちではじまった

——モデルの仕事を目指したきっかけを教えてください。もともと芸能界を目指していたのですか?

片瀬亜乃(以下同) 全然そんなことはなくて(笑)。高校のころは普通のギャルで、やりたいことも特にありませんでした。大学に行かないと決めたとき、母がニートになるのではと心配し、「モデルの専門学校なら週4日だけ通えばいい」と勧めてくれました。軽い気持ちで入学したのがきっかけです。

——強い夢があったわけではなかったのですね。

どうせ23歳くらいで結婚するのだろう、と思っていました。でも学校がとにかく厳しかった。身長169cmにもかかわらず8kgの減量を指導され、歯も上下2本ずつ抜くことになりました。だんだん「ここまでやったのだから絶対にものにしたい」と気持ちが切り替わりました。

あの1年で本気になれたのだと思います。

——20代後半に年齢を非公表にした理由は何ですか。

レースクイーンは27歳あたりから“卒業感”が出てきます。誰かに直接言われるわけではありませんが、業界の空気として伝わってきます。自分も若いころ、先輩を見てそう感じていましたし、30歳をすぎたら仕事がなくなると同業者の多くが悩んでいました。

——仮に年齢を明らかにして、仕事を続けていたら影響はあったと思いますか。

あったと思います。オーディションには年齢制限があることも多く、公表すれば応募できない案件が出てきます。そこでデメリットを減らす意味で非公表にしました。その判断は結果的にメリットが大きかったです。年齢を聞かれたときは「1万歳」と答えていました(笑)。人間と悪魔とのハーフという設定にしていたので。

——内心はつらくなかったですか。

業界には若い子が次々と入ってきます。30歳をすぎて水着撮影があると、「大丈夫かな」「ファンの方はどう思うかな」と考えていました。ただ、それは誰かに言われたのではなく、自分で自分を追い込んでいた部分が大きかったと思います。

——同世代が離れていく中で、続けられた理由は何でしょう。

やるしかなかった、というのが正直なところです(笑)。私には、ほかにできる仕事がありませんでした。ただ、1回1回の仕事を全力で取り組むことは意識してきました。慣れると気が緩みがちですが、年齢を重ねているからこそスキルで勝負する必要があると考えていました。

毎回の現場でそのときを楽しみながら、精一杯に自分のできることを出し切ることでリピートにつながり、新規オーディションに頼らずに済んだのは大きかったです。

——具体的なスキルとは。

挨拶やスタッフ、企業担当者への対応、そしてチームの空気づくりです。

レースクイーンは若さだけでなく、企業のイメージを担う存在です。現場での立ち居振る舞いも重要な仕事の1つだと考えています。

所属タレントの悩みが背中を押した

——逆に今回、40歳を機に改めて年齢公表を決断した理由は何ですか。

3年前に芸能事務所を立ち上げたことが大きかったです。所属タレントの相談を受ける中で、20代後半の子たちが「次の仕事をどうしよう」「在宅でできる仕事はないか」と悩んでいる姿を見ました。自分が同じ年齢のときと変わらない状況に、愕然としました。

オーディション書類を見る立場になり、年齢制限の現実も改めて知りました。適任だと思っても、3、4歳違うだけで応募できないこともある。面接では「何歳までできますか」「学生のうちだけですよね」と聞かれることもあり、将来性のない仕事と思われている現実を感じましたね。

——それで公表に踏み切ったのですね。

はい。40歳でも現役で活動していると知ってもらえれば、20代後半はまだ引退には早いと伝えられるのではないかと思いました。自分の仕事が減る可能性もありましたが、後輩たちのためになるならそのほうがいいかなと。

若い世代に「まだ続けていい」と示したかったです。

——スポンサーの反応はいかがでしたか。

事前に仕事先へ相談しました。返ってきたのは想像以上に前向きな言葉でした。ある企業からは「年齢は関係ない」と直接言っていただき、うれしかったです。

——公表後の反響は?

同業者から「まだ頑張ろうと思えた」「やめるのを思いとどまった」と言われたことが印象的でした。会社員や専業主婦の方からも反応があり、年齢に悩む女性が多いことを改めて実感しました。

——否定的な声はありましたか。

覚悟はしていましたが、実際には想像より応援の声のほうが多く救われました。しばらくは会う人ごとに声をかけてもらいました。ただ、これまでタメ口だった人たちが、40歳だと知って急に敬語になりました。それは少し寂しかったですね(笑)。

やめる理由よりも「続けたい理由」

——体型維持で意識していることは。

姿勢と正しい歩き方です。幼少期にバレエで培った体幹を生かし、日常でも姿勢を意識しています。それが代謝や見た目にも影響します。あとはメンタルです。どれだけ外見を整えても、暗い感情は表情に出ます。人の良い面を見ることと、今を楽しむことを大切にしています。

——年齢を理由に迷う女性へメッセージを。

年齢だけで諦めないでほしい。それが1番です。確かに制限はありますが、多くは自分自身が先にブレーキをかけています。仕事が好きなら、やめる理由よりも続けたい理由のほうが多いはずです。

選ばれることは肯定されているということ。私はその感覚を大事にしています。

レース関係者からは「あと10年いてほしい」と言われています。50歳まで現役を目標に、姿を見せ続けることが1番のメッセージになると思っています。あくまで続けるかどうかを決めるのは、年齢ではなく自分自身だと思います。

取材・文/全夏潤 写真/本人提供

<プロフィール>
片瀬亜乃(かたせ あーの)
埼玉県浦和出身。19歳でファッションモデルとして活動を開始。その後コンパニオン、レースクイーン、MC、レポーターへと活動の幅を広げる。全日本モトクロス選手権の会場イメージレースクイーンを10年務める。2022年3月に芸能事務所を設立し代表に就任。約90人のタレントが所属。

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