AIの普及により、データセンター(インターネットや企業システムの「心臓部」になる大量のコンピューターを集めた専用施設)の需要が急増している。データセンターサービスの国内市場規模は2030年までに3割増加するとの見立てもあり、全国各地で新設が相次ぐ。
住宅街にデータセンター、住民「さすがに乱暴では」
「排熱対策をせずに一般家庭の6万倍の電力を使って空調を回し続ける施設を住宅街のど真ん中に建てて、120万リットルの重油を貯蔵するって、さすがに乱暴じゃないですかね」
東京都江東区、千石。高層マンションの廊下から駐車場を見下ろしながら、「江東区千石のデータセンター建設を考える会」事務局のA氏はこう憤る。
A氏の住むマンションが立地するのは、東京メトロ東西線東陽町駅と都営新宿線住吉駅に挟まれた住宅街。大手町のオフィスビルから30分という好立地ながら親水公園が整備されており、夏になれば水遊びをする子どもたちの声が響く、のどかな風景が広がる。
そんなA氏たちの生活を一変させたのが、隣地の駐車場で立ち上がった、データセンターの建設計画だ。開発主体はシンガポールに本社を置く企業で、アジア各地でデータセンターを開発しているという。
マンションに隣接する土地に高さ50メートルの巨大な建物が突如誕生するという計画が明らかになり、「寝耳に水だ」とA氏は憤る。
かつてデータセンターといえば地盤が硬く、地価が安い郊外のエリアに建てられることが多かった。関東では千葉県印西市や神奈川県相模原市などが「データセンター銀座」と呼ばれ、多くの関連投資を呼び込んできた。
近年では東京都日野市の日野自動車工場跡地や大阪市のシャープ堺工場跡地など、産業構造の転換で使われなくなった工場跡地をデータセンターとして活用する例も相次ぐ。
しかし、A氏の住む江東区千石は事情が異なる。
2010年から20年にかけ、人口は8%増加。2030年代半ばの開業が計画されている東京メトロ有楽町線の延伸ルートの沿線で、千石駅(仮称)の整備も発表した。
湾岸エリアのターミナル駅である豊洲駅まで直通となり、さらなる発展が期待されていた。
「データセンターではなく、マンションであれ、商業施設であれ、街に賑わいを生むような施設ができてほしい」(A氏)という思いは多くの住民が共有しているものだ。
なぜ江東区はデータセンターの適地?
もっとも、住民の願いと経済合理性は別の話だ。まず、このエリアは「準工業地域」に属する。「住居専用地域」と異なり、オフィスや物流施設、軽工業であれば工場の建設も可能だ。つまり法律上、データセンターの建設を止めることはできない。
また、住民にとって不幸だったのが、データセンター建設予定地が借地であることだ。登記簿の情報によると、この土地は中堅ゼネコンが保有している。
「仮に借地でなければ、1億円を超えるような分譲マンションとして事業が成立する可能性は十分にあったのでは」と大手不動産デベロッパーで勤務するBさんは分析する。
しかし、将来の解体を前提とした定期借地権付のマンションであれば、話は別だ。
一方、今回計画されているのは金融機関やIT企業などを顧客とした、都市型データセンターだ。規模や電力の安さが優先される郊外型のデータセンターと比べ、遅延を小さくするために物理的な距離の近さが求められる。
皮肉にも、千代田区や中央区といった大企業の集積地に距離的に近い江東区は適地となるのだ。さらに、都市型データセンターは期限を定めて投資額を回収するビジネスモデルのため、借地と相性が良い。
A氏たち近隣住民は「データセンターのように周辺住民に負担を強いる施設であれば、丁寧に説明を尽くすべきだ」と主張する。しかし、事業者側は木で鼻をくくるような対応に終始した。
マンションの理事会に案内があったのは24年12月。25年2月から任意の説明会が始まったが、登壇したのは代理人で、口調こそ丁寧なものの、淡々と事業方針を説明するだけで、住民側の疑問に対しては最低限の説明で済ませようという態度だという。
A氏たちは行政や議員も巻き込み、詳細な説明を要求したが、誠意がある回答は得られなかったという。
「21世紀の新たな石油」とも呼ばれるデジタルデータ
江東区が25年12月に策定した、大規模なデータセンターを建設する事業者に向けた指導要綱を通じて、はじめて敷地内に120万リットルもの重油が備蓄されることが明らかになった。これは、オリンピックプールのほぼ半分を満たす量だ。
インフラであるデータセンターを非常時にも稼働させるために必要な措置だと事業者側は説明するが、「非常用発電機は騒音規制の対象外なので、実際に災害が発生した際、住民の助けを求める聞こえなくなる声が聞こえなくなるリスクがある」(A氏)。
2月中旬、実際に説明会に足を運んでみたが、入口に「マスコミの方の入室は、お断りいたします」と書かれた紙が貼られるなど、物々しい雰囲気に包まれていた。両者の主張は未だに平行線を辿っており、着工予定の7月までもう半年を切った。
データセンターと住民の軋轢は江東区だけの問題ではない。日野自動車の工場跡地で計画されているデータセンターでは、住民らが市に対し、審査請求を実施。開発許可の撤回を求めていくとしている。印西市でも、駅前の一等地がデータセンターとして利用されることを巡り摩擦が起きている。
こうした事態を重く見た東京都は2月に入り、データセンター建設のためのガイドラインを策定すると明らかにした。事業者に対し、住民になにをいつまでに説明するのかといった情報を目安として示すよう求める。
小池百合子知事は都議会の施政方針演説で「認定制度とガイドライン、(立地に関する)情報を早い段階で把握する都独自の仕組みを三位一体で運用する」と述べた。
もっとも、ガイドラインはあくまで「指導」や「助言」であり、義務化までは踏み込まない。もともと小池知事は東京が国際競争を勝ち抜くためにはデータセンターは必要不可欠だと主張している。
電子情報技術産業協会(JEITA)によると、国内のデータセンターサービスの市場は2030年に5兆6540億円と、25年から3割増加。年5.4%のペースで拡大を続けるとしており、少子高齢化が進む日本経済の中では数少ない成長分野でもある。
三井不動産や三菱地所、ヒューリックといった不動産デベロッパーも相次ぎ参入を表明しており、立地によってはマンションを建てるよりもデータセンターを建てるほうが収益を見込みやすくなっている。
1994年に公開されたアニメ映画「平成狸合戦ぽんぽこ」では、人間の住む場所を確保する乱開発に狸たちが巻き込まれる様子が描かれた。
翻って、30年以上経った令和の日本社会。マンション価格が高騰し都内でも人が住めなくなる一方、「21世紀の新たな石油」とも呼ばれるデジタルデータが次々と一等地を押さえ、人間が外へと押し出されるという光景も十分に有り得そうだ。
文/築地コンフィデンシャル

![【Amazon.co.jp限定】鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 豪華版Blu-ray(描き下ろしアクリルジオラマスタンド&描き下ろしマイクロファイバーミニハンカチ&メーカー特典:谷田部透湖描き下ろしビジュアルカード(A6サイズ)付) [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51Y3-bul73L._SL500_.jpg)
![【Amazon.co.jp限定】ワンピース・オン・アイス ~エピソード・オブ・アラバスタ~ *Blu-ray(特典:主要キャストL判ブロマイド10枚セット *Amazon限定絵柄) [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51Nen9ZSvML._SL500_.jpg)




![VVS (初回盤) (BD) [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51lAumaB-aL._SL500_.jpg)


