2026年2月下旬。立憲民主党と公明党による「中道改革連合」は、早くも正念場を迎えている。
立民議員は「錯覚」を見ていた
2月17日に公開されたあるYouTube動画は、非常に興味深いものだった。
西東京市の議員であり、かつてはお笑いの世界で活躍した長井秀和氏が、自らの経験をもとに政治の裏側を語ったものである(※出典〈減税TV 番外編:気になる人を呼んでみた!〉異質な存在【創価学会】なぜ公明党と立憲民主党は手を組んだのか?)。
長井氏は、自身が特殊な背景の中で育った経験から、現在は創価学会という組織に対して非常に厳しい考えを持っている。
かくいう私は、自由や現実を大切にする保守という立場から、これまで公明党が示してきた政策の手腕を高く評価してきた。特に昨年、「年収の壁」をなくすという減税政策を実現すべく公明党が必死に動いた姿は、実に頼もしいものだった。
長年、自民党とともに政権を担ってきた彼らの政策は、現実的で安心感があり、十分に受け入れられるものだ。
今回の総選挙の始まりに、市民運動から出てきた立憲民主党の議員たちが掲げる空想のような政策(反原発、反辺野古、反安保法制)が、公明党の現実的な議論によって次々と形を変え、呑み込まれていく様子を見たときは、思わず喝采を送った。ようやくまともな政治が、2大政党制が始まると期待したからだ。
しかし、長井氏が動画の中で振り返る選挙での中道の様子は、私の期待とは裏腹に、迷走の色を強めていった。
この選挙では、立憲民主党と公明党が手を結び「中道改革連合」という新しい勢力をつくりあげた。現場では、応援する人々が名前入りのうちわを振り、アイドルのコンサートのような熱狂に包まれていた。
立憲民主党の議員たちは、その熱い空気を感じて、勝利を確信していたのではないかと、長井氏は指摘する。立民議員は「錯覚」を見ていたのだと。
ただ選挙に受かりたいという目的だけの集まり
多くの無党派層や立憲のコアな支持者は、昨日まで自民党と協力していた公明党と、それを厳しく批判していた立憲民主党が突然一つになる姿を見て、不自然さを感じていた。
それは理想を共にする結びつきではなく、ただ選挙に受かりたいという目的だけの集まりに見えていたのである。
実際に、産経新聞などの合同世論調査(2月14~15日実施)によると、この新しい連合を支持した人の半分以上は70歳以上の高齢者であり、30代や40代といった若い世代の支持はわずか4.1%や4.9%という低いものだった。身内の盛り上がりに酔いしれてしまったために、世間一般の冷ややかな反応に気づけなかった姿は、政治の難しさを物語っている。
さらに、立憲民主党の議員たちは、選挙の最中であっても自分たちの空想めいたこだわりを捨てきれず、せっかく公明党と調整して決まりかけた方針を自分たちで壊そうとした。これには、現実的な政治を望む者として、筆者は強い怒りを覚えずにはいられなかった。
公明党という組織が持つ「生き残るための知恵」
一方で、公明党という組織が持つ「生き残るための知恵」は、驚くほど高い水準にある。長井氏は、公明党が60年あまりの歴史の中で培ってきた技術を、「あざとい」という言葉を使って表現している。
過去に自民党と協力した多くの政党は、数年のうちに勢いを失い、歴史の表舞台から消えていった。しかし公明党だけは、26年もの間、政権を支え続けてきた。
公明党は、自分たちが単独で一番になることは難しいと冷静に判断した上で、どの党と組めば自分たちの掲げる約束を実現できるかを計算し続けてきたのである。
では、なぜこのリベラル連合は、期待されたほどの成果を出せず、今も迷走しているのだろうか。
政治を運営するには、膨大な資金が必要だ。立憲民主党は、今回の選挙で多くの議席を失い、落選した元議員やその秘書たちを養っていく余裕がなくなっている。
一方で公明党は、独自の強力な基盤を持っている。ここで注目すべきは、公明新聞という存在だ。
公明党には、創価学会の聖教新聞とは別に、政治活動のための公明新聞がある。この新聞を発行する記者や編集者の給料は、公明党が自分たちの資金から出している。
お金に関しては別々で行こうという姿勢
実は、30年前の新進党の時代にも、似たような出来事があった。当時の小沢一郎氏らが率いる大きな政党に衆議院の議員たちは合流したが、参議院の公明党系議員たちは「新党平和」という別の名前を維持して、参議院では一つにならなかった。
その理由は、お金の流れを一つにすることの難しさにあったと、当事者から聞いたことがある。
新進党という大きな財布の中に、公明新聞の発行費用まで組み込んでしまうと、誰がそのお金を出すのかという点などで無理が生じるからだ。結局、政治の基盤となるメディアや資金の出しどころを別に保つことは、組織を守るための知恵でもあった。
今回の中道改革連合においても、公明党はお金に関しては別々で行こうという姿勢を崩していないと言われている。
一見、協力しているように見えても、一番大切な生活の基盤となる資金の部分では、互いに壁を作っているのだ。立憲民主党側には、公明党のこうした慎重な動きや、政治のプロとしての計算を理解できないまま、ただ表面的な協力に期待を寄せている議員が少なくない。
遅かれ早かれ、この無理な合体は解消される
政治という営みは、心を通わせるだけでは成り立たない。毎日発行される新聞の印刷費をどう払うか、選挙のたびに動く数万人という組織をどう維持するか。そうした極めて現実的な問題を解決できて初めて、政策という実を結ぶことができる。
公明党は、この現実を嫌というほど知っている組織だ。だからこそ、相手が理想ばかりを語り、現実のお金の問題や組織の維持に疎い立憲民主党であれば、その協力関係はどこまでも脆いものになる。
市民運動の出身である立憲民主党の議員たちが、選挙中に何度も意見を変えようとし、公明党が決めてきた現実的な合意を壊そうとした姿は、政治のアマチュアと言わざるを得ない。組織を支える責任感や、一度決めた約束を守る重みを軽んじているように見えた。
二つの組織が本当に一つになるためには、単に名前を合わせるだけでなく、将来に対する同じ責任を背負わなければならない。
しかし、今の状況は「無理ゲー」という言葉がふさわしい。
公明党という高い技術を持つ組織がどれだけ努力しても、協力する相手が地に足の着いていない理想ばかりを追いかけていては、船は目的地に着く前に沈んでしまう。
「単なる票の足し算だけで、新党の主張・理念が曖昧模糊(もこ)として分からない。それが国民から見放された」との見方を示した小沢一郎前衆院議員
この状況を見ていると、遅かれ早かれ、この無理な合体は解消される時が来るのではないかと思えてくる。組織というものは、生活や運営の基盤が重なり合って初めて強くなる。
それを持たない連合は、嵐が来ればすぐに壊れてしまう。私たちは、政治家の威勢のいい言葉だけでなく、その背後にある組織の仕組みや、歴史が教えてくれる教訓をもっと丁寧に観察する必要がある。
理想を語ることは誰にでもできるが、それを形にし、何十年も守り続けることは極めて困難な仕事だ。公明党が持っている「生き残るための知恵」を、単なるずる賢さと捉えるのではなく、責任を持って物事を進めるための切実な技術として再評価すべきではないだろうか。
立憲民主党の議員たちが、もし本気で国を良くしたいと願うのであれば、身内の熱狂に酔いしれるのをやめるべきだ。公明党のような歴史ある組織が、なぜこれほどまでにお金やメディアの管理にこだわり、現実を重視してきたのか、その理由を深く学ぶ必要がある。
政治の舞台裏にある「財布」や「新聞」の重みを知らずに、本当の意味で国民の生活を背負うことはできないからだ。
これから先、日本の政治がどのような道を辿るかはわからない。しかし、一つだけ確かなことは、地に足の着いた現実的な政策こそが、最後には人々の暮らしを救うということだ。
空想に逃げるのではなく、現実を直視し、その中で最善の結果を求めていく。そんな静かで力強い政治が行われることを、私は保守の一国民として切に願っている。
文/小倉健一

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