ホワイトソックス村上、ブルージェイズ岡本…日本最強クラスの長距離打者はMLBで通用するのか? 評価ポイントは“飛距離”だけにあらず
ホワイトソックス村上、ブルージェイズ岡本…日本最強クラスの長距離打者はMLBで通用するのか? 評価ポイントは“飛距離”だけにあらず

日本を代表する長距離打者、村上宗隆と岡本和真が同時期にポスティングでMLB移籍となる。村上は「若くて飛ばせる」素材としてトップクラス。

一方の岡本はバットコントロールに優れ、逆方向にも強い「運ぶ長距離砲」だ。そして両者の評価を分けるのは、打力だけでなく故障リスクと適応力だという。MLBが重視する視点で整理する。

メジャーで国際スカウト歴28年のベテランスカウトマン・大屋博行さんの新刊『メジャーで通用する選手の条件 スカウトは予言者であれ』より一部抜粋・再構成してお届けする。

ポスティング移籍した村上宗隆、岡本和真両選手への評価

2025年のシーズンオフ、前項で触れた村上選手と読売ジャイアンツの岡本和真選手が、ポスティングシステムを利用してメジャー移籍を模索していて、村上選手はシカゴ・ホワイトソックスへ、岡本選手はトロント・ブルージェイズへの入団が発表されました。日本を代表する長距離打者であるふたりが、同時期にポスティングを利用するというのは非常に珍しく、メジャーの各球団がその動向に注目を集めていました。

村上選手については、前項で述べた通りメジャーが求める「飛ばせる能力」、さらに踏み込めば「若くて飛ばせる能力」を存分に備えています。打球速度、飛距離、打球角度、スイングスピード、いずれも一流で、若くして高い実績を残している点も評価されています。渡米が濃厚という情報が入っていたので、我々も調査を進めていましたし、どの球団も獲得候補としてリストアップしていたはずです。

ただ、近年繰り返している故障は少し気がかりです。スイング時に身体を痛めるということは、スイングの強さに対して筋力が十分に追いついていない可能性があります。メジャーの162試合を戦い抜くためには、技術だけではなく強度の高いフィジカルが欠かせません。

メジャーでは、速球の質も変化球のキレも日本より一段階上になります。

当然、より強いスイングで対抗する必要がありますし、飛距離を伸ばすためには毎日フルスイングを繰り返すことになります。

そのため、これは村上選手に限った話ではありませんが、故障しがちな強打者がメジャーを目指すならば、身体の使い方を改良する、体幹と下半身の強化を進めるなど、総合的なアプローチが必要になるでしょう。当然のことながら、ケガをしないような準備運動(ストレッチ等)もさらに重要になってきます。

村上選手は、素材としては間違いなくトップクラスです。その能力をメジャーで発揮するためには、“ケガをしない身体”を作ることが欠かせないと私は感じています。

メジャーは数字以上に重視するもの

一方の岡本選手は、村上選手とはタイプの異なるバッターです。彼は典型的なパワーヒッターというよりも、バットコントロールに優れた“運ぶタイプ”の長距離砲という印象があります。スイング軌道はブレが少ないため、レベルスイングでボールを正確に捉えることが可能です。

また、引っ張るだけではなく逆方向にも強い打球を打てるので、広いメジャーの球場にも対応できるポテンシャルを秘めています。リストワークも柔らかく、コンパクトに振りながらもしっかり振り切れているので、飛距離が落ちることはありません。この「柔らかいスイングで飛ばせる」タイプは、メジャーでも高く評価される可能性があります。

2025年シーズン開幕直後の岡本選手は非常に調子が良く、開幕以降32試合で4番を務めながら打率3割超という安定した成績を残していました。

しかし、一塁守備中に走者と交錯して左肘を痛め(靭帯損傷)、長期離脱を余儀なくされました。

復帰できたのは8月中旬で、シーズンの大半を欠場するという結果になりましたが、それでも69試合の出場で打率3割2分7厘、15本塁打、49打点という高い数字を残しました。

ケガによる長期離脱はネガティブな要素として捉えられることも多いのですが、復帰後にしっかり成績を残している点は大きなプラス材料です。メジャー球団が重視するのは「故障後のパフォーマンスがどれだけ戻っているか」「技術の再現性があるか」という点です。岡本選手の打撃フォームは再現性が高く、無理に振り回すタイプではないため、メジャーのピッチャーに対しても順応できる可能性があります。

最終的に、選手がどのような評価を下されるかは、各球団のニーズや編成方針によって変わってきますが、ひとつ言えるのは、メジャーは数字以上に“伸びしろ”と“ケガへの強さ”を重視するという点です。そして岡本選手は、高い打撃技術でブルージェイズから評価を勝ち取りました。今後の活躍を私も楽しみにしています。

文/大屋博行

『メジャーで通用する選手の条件 スカウトは予言者であれ』(竹書房)

大屋博行
ホワイトソックス村上、ブルージェイズ岡本…日本最強クラスの長距離打者はMLBで通用するのか? 評価ポイントは“飛距離”だけにあらず
『メジャーで通用する選手の条件 スカウトは予言者であれ』(竹書房)
2026年2月20日1,870円(税込)224ページISBN: 978-4801948259

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