「角刈りナメるな!」炎上投稿に理容師が反論…知られざる“マジの角刈り”の難易度とは
「角刈りナメるな!」炎上投稿に理容師が反論…知られざる“マジの角刈り”の難易度とは

「旦那が毎月5000円もかけて角刈りみたいな髪型で帰ってくんのマジでイライラする。その角刈りに1時間かかるのも意味わからんし、1000円カット行けや」。

そんなささいな愚痴から始まった投稿が、SNSで450万表示を超える拡散を見せている。投稿したのは妻で、“角刈りみたいな髪型”で帰ってくる夫の写真を添え、不満を漏らした。

「角刈りにするなら1000円カットに行け」

投稿のリプライ欄は大盛り上がりで、「これが5000円!?」「1時間も何してるの?」「これだからバリカン買って自分でやってもらうようになった」「角刈りに5000円かけていいのはアタック西本だけだよね」といった共感の声が並ぶ。

一方で、「美容師との会話を楽しんでいるのでは?」「月に一度のリラックスタイムなんだよ」と擁護する意見もあった。

しかし全体としては、「角刈りに5000円は高い」という見方が優勢だった。物価高騰により、すでに『1000円カット店』の料金もすでに1000円を超えてきてはいるが、5000円の価格帯の店とは開きがある。

本当に角刈りに5000円は割に合わないのだろうか。

その実態を探るべく、都内で美容院を営む40代の男性オーナーに話を聞いてみると、返ってきたのは「角刈りって、正直言って難しいですよ」という意外な答えだった。

「いわゆる“マジの角刈り”なら、5000円でも安いくらいです。それだけ難しい髪型なんです。『1000円カット』の角刈りは、言っちゃなんですが、たぶん“おままごと”みたいになると思います」(40代美容院オーナー、以下同)

まず大前提として角刈りは、バリカンで一気に刈れば完成するものではない。

「頭って基本的に丸いですよね。角刈りは、その丸い形の上に“角”を作らなきゃいけない。

直角のラインをきれいに出すのが、とんでもなく難しいんです。しかもトップは一番高い位置にあるから短くするけど、薄く見せちゃいけない。上を薄く見せずに、角は立たせる。そのバランスを取るのが本当の技術。これが“マジの角刈り”です」

さらに、角刈りには“プロだけの工程”があるという。仕上げに使う「打ち粉(うちこ)」だ。

白い粉を髪に軽くはたくと、刈り上げた面からピョンと飛び出した毛――いわゆる「差し毛」が浮き上がる。フラットに整えたはずの面のわずかなデコボコも可視化されるのだ。

角刈りは、丸い頭の上に直線を作る髪型。ほんの少しのムラや取り残しがあるだけで、途端に形が崩れる。粉で誤差を見える化し、削り、整え、また確認する。その繰り返しで、ようやく“角”が立つ。

また、意外と知られていないのが理容師と美容師の違い。一般的な美容院では、角刈りを頼んでも難しい場合もあるという。

AI画像を持ち込んでくる客が増加

「美容師と理容師では、習っている技術や資格が違います。理容師は実技で角刈りをほぼ必須で習いますが、美容師は基本的には習わない。だから美容室で角刈りをオーダーすると、内心困る美容師は多いと思いますよ。頼んで断られることは少ないと思いますが、美容室では“それっぽい何か”になる可能性は十分あります」

そして、角刈りと並ぶ昭和の男性スタイルといえばパンチパーマだが、これもまた一見簡単そうに見えて、実は高度な技術を要する。

「僕の地元にはパンチパーマのうまい理容室があるのですが、そこは連日予約でいっぱい。角刈りやパンチパーマに憧れている人は今もいますし、それをしっかり作れる理容師は重宝されています」

さらに話を聞いているうちに、最近の美容師事情についても興味深い話が飛び出した。かつては芸能人の写真を持ってくるのが定番だったが、今ではAIで生成した画像を見本にする客が増えているという。

しかしそれに頭を悩ますことも……。

「AI画像は顔の大きさ、首の細さ、頭のバランスがすべて“理想値”。いわば黄金比です。

でも実際のお客さんの骨格は違う。その理想と現実の差をどう埋めるか。毎回、頭の形を見て、どうすれば理想に近づけるかを考えています。もちろん芸能人の画像もそれに近いのですが、AIは言ってみればイラストに近い。これにしてくれというのはなかなか難しいです」

頭の形から考えてスタイルを作るという点では、角刈りも同じだ。美容師や理容師は、ただ髪を短くしているわけではない。一人ひとりの骨格に合わせ、立体を作り出している。

中でも、最も骨格の影響が出やすく、ごまかしが効かない髪型が角刈りということなのだろう。

どこまでこだわるかによって、価格の感じ方は変わる。しかし、素人目には簡単に見えるものほど、プロの世界では難しいことがある。そう考えると、5000円の角刈りは、決して高いとは言い切れないのかもしれない。

取材・文/集英社オンライン編集部

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