高市首相は本物の虎党か? 阪神ファン心理から読み解く首相のタイガース“ガチ度”
高市首相は本物の虎党か? 阪神ファン心理から読み解く首相のタイガース“ガチ度”

『「幸福感」に満たされたいなら阪神ファンを知りましょう マーケッターが気づいた「効果と法則」』の著者で、虎党の牛窪恵さんに聞く“阪神ファンという生き物”。阪神ファンといえば、熱狂的過ぎるが故に、他球団ファンから引かれてしまうこともしばしば。

今回は牛窪さんが「なぜ阪神ファンは嫌われやすいのか」について持論を展開。そして虎党で知られる高市早苗首相は本物かどうかも聞いた。〈全3回の2回〉

阪神ファンは「周りが見えなくなる」ことも…

――著書『「幸福感」に満たされたいなら阪神ファンを知りましょう』では、応援が熱狂的になりすぎることでのネガティブな面にも言及していますね。

牛窪恵(以下、同) はい、阪神ファンを含む推し活全般はいきすぎると、自身にストレスをかけすぎたり、周囲に迷惑を掛けたりといった悪影響を及ぼすこともあります。

――確かに、阪神ファンに対して怖いというイメージを持つ他球団ファンは多いです。

失敬な(笑)!たぶんそれは、優勝したときに道頓堀川に飛び込むシーンをイメージするからでは? 私から言わせれば、歴史的瞬間に真剣に応援せずそんなことをするのは、本当のファンではないのではと思っちゃいますが。

――なぜ阪神ファンはいきすぎてしまうのでしょうか?

昨今、よく耳にするようになった用語、すなわち「エコーチェンバー」や「フィルターバブル」とも関係がありそうです。
「エコーチェンバー」はSNSなどで自分と似た興味・関心を持つユーザーと日常的に対話することで、結果的に同じような意見や思想が増幅していくこと。一方の「フィルターバブル」はAIを含むアルゴリズム機能により、ユーザーの興味関心に近い情報ばかり表示されて、情報の膜に包まれてしまう状態のことを言います。

阪神ファンの多くは熱狂的で、おそらくSNS上のコミュニティも強固なだけに、自分でも気づかぬうちに、こうした状態に陥りやすい。そうすると、相手を傷つける意図がなくても、“周りが見えなくなる”ことで、結果的に他球団ファンに攻撃的になったり、不快な思いにさせたりするケースが多くなってしまうのでは、と考えます。

――なるほど。

また、「チーム・アイデンティフィケーション(ID)効果」も、マイナスに働いてしまうことがあります。

これはもともと、チームや選手などの対象に “一体化感情”を抱くことをいい、プラスに働けば、チームや選手が頑張る姿を見て「よし、自分も頑張ろう」と思えるなど、幸福感に繋がる可能性が多々指摘されています。

一般に、阪神ファンはこの感情が強く、選手たちを自分自身や自分の子供のような感覚で見ている(拡張自己)ことも多い。すると、例えば阪神の選手がデッドボールを受けたとき、当てた投手に対して必要以上に攻撃的になってしまう。さらに、普段から情報に偏りがある場合は、「相手投手がわざと当てた」「謝罪がない」など、不確かな情報をもとに相手選手を批判しやすいんです。これは、私も含めて。

阪神ファンからすれば、真実がどうかよりも、自分が大事にしているものを傷つけられたという感情で突っ走りやすい。

――分かりますが、ちょっと厄介ですね……(苦笑)。

得点時の『六甲おろし』の大合唱もそうですが、人は誰かと同じ体験を共有することで、一人で行動するときより幸福感が増大する「共有体験効果」を得られます。ただ、これは球場でのヤジやSNS上での誹謗中傷についてもある種、起こり得る喜びなので、場合によると「負」の感情も増幅されやすいんですよね……。

高市首相の虎党ぶりは本物か

――『六甲おろし』でいうと、コロナ禍での球場観戦において声援自粛が叫ばれるなか、一部の阪神ファンだけは得点時に『六甲おろし』を合唱し、問題視された時期がありました。

おそらくですが、あれはあえて歌っていたというより、体に染みついちゃってるんですよね(苦笑)。私もですが、タイガースが得点すると『六甲おろし』を歌うものだという……。

実際、私が脳にデバイスを付けて、『六甲おろし』を歌いながらヘモグロビンの活動を観察した際も、研究者から「この歌が、体に染みついちゃってますね」と言われました。

言わば“パブロフの犬”みたいなものでしょう。

――条件反射、だと(笑)。そういえば、高市早苗首相も虎党を公言していますね。

高市さんの場合はポーズではなく、ガチファンであることがひしひしと感じます。

昨年12月に「2025年報道写真展」を訪れた際も、藤川球児監督の胴上げ写真を見て思わずガッツポーズをしちゃってました。仕事中だろうとなんだろうと、タイガースのことになるとつい行動に出てしまうのは、真のファンである証だと思います。

もっとも虎党からすると、政治と野球は一緒にしてくれるなという思いも強いんですけどね……(苦笑)。

――改めて“阪神ファンという生き物”とは何なのでしょうか。

近年のウェルビーイング(Well-being=心身ともに満たされた良好な状態)の研究では、幸福感との関連で「熱狂」や「没頭」「共感」「達成感」「(社会や地域との)繋がり」といったキーワードが挙がっています。

今回、改めて阪神ファンと数々の調査や論文を突き合わせて分析してみたのですが、彼らの行動は、こうした幸福感に繋がるワードとリンクする部分が多い。だからこそ、慶應義塾大学の鈴木秀男教授の調査結果(※)にあるように、阪神ファンは「チーム応援」を通じた幸福感スコアが、12球団一高いのではないでしょうか。

(※2024年「プロ野球のサービスに関する満足度調査」において、阪神タイガースのファンは「チーム応援を通じた、生活満足度および幸福感」の幸福感スコア(総合生活満足度部門)が、12球団中トップだった)

――熱狂的であればあるほど、幸福実感が強いと。

先ほどのキーワードの「繋がり」でいえば、セ・リーグでは横浜DeNAや広島カープなども、地域密着型の球団だと言えるので、周囲との「繋がり」を感じやすいチームでしょう。ただ統計的に見ると、阪神ファンはそこにプラスして「多様性」があることが分かっています。

たとえば、女性やシニア、若年層、海外にも一定数のファンがいて、しかもその割合がほとんど減っていかない。その裏には、たとえば球団が毎年女性ファン(TORACO)向けのイベント「TORACO DAY」を開催するなどの努力もあるほか、「親から子への伝承」、いわゆる「英才教育」も強く影響しているようだと、今回、TORACOへの調査を通じて分かりました(笑)

――TORACOの話題が出たということで、本書執筆のために実施したTORACO(女性阪神ファン)2868人アンケートによる「推しランキング」の結果について、引き続き牛窪先生に分析していただきます!

(後編に続く)

取材・文/武松佑季

『「幸福感」に満たされたいなら阪神ファンを知りましょう マーケッターが気づいた「効果と法則」』(集英社)

牛窪恵
高市首相は本物の虎党か? 阪神ファン心理から読み解く首相のタイガース“ガチ度”
『「幸福感」に満たされたいなら阪神ファン マーケッターが気づいた「効果と法則」』(集英社)
2026年3月5日1,760円(税込)224ページISBN: 978-4-08-790234-1

【野球でなく「幸せ」に関する本です!】
★「おひとりさま」「草食系」など数々の流行語を世に広め、「ホンマでっか!?TV」ほかテレビのコメンテーターでもおなじみのマーケッター・牛窪恵さん。大学教授でMBAホルダーでもある著者が、推し活と行動経済学などの研究を経て導き出した「Well-being(幸福感)」に繋がるキーワード、それが「阪神ファンと熱狂」でした。
★みずからも熱狂的な阪神ファンで、毎年40試合前後を球場で観戦する著者だからこそ気づいた、彼らの体感的リアリティと行動心理の意外な関係。本書を読むことで、阪神ファン自身も気づいていない「幸福感」に繋がるヒントが、数多く得られるはずです。
★本書ではそうした実践的ヒントを、著名なマーケティング理論や女性ファン(TORACO)約3000人への調査・取材を通して独自分析し、わかりやすく展開します。

【効果と法則はこんなこと!】
■報酬の予測誤差=「ダメな子ほど可愛い」が喜びをもたらす
■プラシーボ効果=前向きな「思い込み」こそが幸運を呼ぶ
■ファンベース効果=「熱狂」こそが幸福度を高める
■サンクコスト効果=「今後も私(僕)がいなきゃ」が愛着を生む
■幸せの損益分岐点=「小さな幸せ」の積み重ねが、幸福度を高める
■PERMAモデル=「没頭」こそが、幸福持続の源泉に

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