イラン攻撃で「年7~10万円家計負担増える可能性も」国際的投資家が指摘「円安ホクホク」が笑えない事態に…市場はすでに戦争状態!
イラン攻撃で「年7~10万円家計負担増える可能性も」国際的投資家が指摘「円安ホクホク」が笑えない事態に…市場はすでに戦争状態!

イラン攻撃を巡り、国際的投資家の木戸次郎氏は「市場はすでに戦争前提で動き始めている」と指摘する。また「ここで長年続いてきた『円安容認』の末路が露わになる」と日本の危機を警告する。

市場はすでに戦争前提で動き始めている

イラン攻撃は、すでに戦争である。

それを言えない論者の横で、円と生活は崩れ始めている。

米国とイスラエルによるイランへの攻撃が続く中、「これは戦争なのか、それとも戦争ではないのか」という議論が繰り返されている。だが私は、この問いそのものがすでに現実からズレ始めていると思っている。

結論から言えば、これはすでに戦争状態に入っている。ただし、多くの人が思い浮かべるような宣戦布告があり、正規軍同士が正面から激突する形ではない、というだけの話だ。

現代の戦争は宣戦布告から始まらない。限定攻撃、代理勢力、サイバー、制裁、エネルギーと物流の遮断。これらを組み合わせた「段階的戦争」こそがいまの戦争の姿であり、その定義に立てば米国・イスラエルとイランの間ではすでに戦争行為が積み重ねられている。

それを「まだ戦争ではない」と言い張るのは政治的な言葉の操作にすぎない。

論者の多くがこの点をはっきり言わない。言えない理由は明白だ。戦争と認めた瞬間に市場が動き、同盟国の立場が固定され、責任が発生するからだ。

しかし言葉を避けたところで、現実は一切忖度してくれない。市場はすでに戦争前提で動き始めている。

80ドル台だった原油が120ドル、130ドルを視野に

まず反応するのはエネルギーだ。ホルムズ海峡が完全に封鎖されなくとも、「封鎖の可能性」「航行リスク」という言葉が出た瞬間に原油価格は跳ねる。80ドル台だった原油が120ドル、場合によっては130ドルを視野に入れる。これは煽りではない。過去の中東危機で何度も起きてきた水準だ。

そして見落としてはならないのは、「止まるか否か」ではなく「誰に流れるか」が選別され始めている可能性である。仮に対中国向けのタンカーのみが事実上航行を許される、あるいはリスクが相対的に低いと市場が判断する状況が固定化すれば、それは単なる地域紛争ではない。

エネルギーの流れが政治によって振り分けられる世界への移行を意味する。イランはすでに原油輸出の多くを中国に依存し、長期包括協定の下で関係を深めている。

石油もガスも輸入依存の日本は苦境に

もしペルシャ湾が「西側にとっての高リスク空間」となり、中国向けだけが実質的な生命線として機能するなら、それはエネルギー版の東西冷戦の始まりだ。

エネルギーが市場ではなく陣営ベースで流れる世界になれば、価格は上がるだけでなく安定も失われる。そこで窮地に立たされるのが、「米国の同盟国でありながら最大の貿易相手は中国」という日本である。

日本は真っ先に直撃を受ける。石油もガスも輸入依存、しかも原油はドル建てだ。原油高と同時に為替が動けば、日本は価格と通貨の両方で殴られる。

多くの日本人はいまだに「有事の円買い」という言葉をどこかで信じている。しかしこれはもはや完全に死語だ。有事になっても円は買われない。むしろ真っ先に売られる通貨になっている。

理由は単純で、日本は有事になるほど外貨が必要な国だからだ。原油、LNG、食料。危機が来るほど輸入額が膨らみ、貿易赤字が拡大する。市場はその構造を正確に理解している。

結果として起きるのは、原油高→貿易赤字拡大→円安→輸入物価上昇→生活コスト直撃という逃げ場のない悪循環だ。

年間では家計負担は7~10万円単位で増える

具体的に言えば、原油120ドル、為替170円になればガソリンは補助金なしで220~230円水準に達する。補助金を維持しても190円台後半が常態化する。

電気代は標準家庭で月3,000~5,000円、ガス代も2,000~4,000円上昇する。年間では家計負担は7~10万円単位で増える。これは節約でどうにかなる水準ではない。

さらに厄介なのは、日本がすでにドル建ての請求書を大量に抱えているという事実だ。約80兆円規模の対米投資、そして膨大な防衛装備品購入。その多くがドル建て契約である。

為替が150円から170円になれば、それだけで円ベース負担は1割以上膨らむ。何も増えていないのに10兆円単位の追加負担が発生する。これは同盟の問題ではない。通貨主権の問題だ。

ここで長年続いてきた「円安容認」の末路が露わになる。

円安は確かに輸出企業や株式投資層には歓迎されてきた。「円安ホクホク」という言葉が象徴的だ。

しかし我々は円で生活している。給料も年金も円、家賃も光熱費も円だ。円の価値が下がるということは生活の土台が削られるということに他ならない。

最も冷静に見ているのは富裕層だ。彼らは声高に文句を言わない。代わりに行動する。

資産家の間でシンガやマレーシアへの移住や長期滞在を模索する動き

資産家の間ではシンガポールやマレーシアへの移住や長期滞在を模索する動きが珍しくなくなっている。円建てで生活し円建てで資産を持ち続けるリスクを本能的に理解しているからだ。円安を称賛しながら円から距離を取る。この矛盾こそが円安政策の本質である。

そこに日本固有の弱点、人口減少が重なる。すでに実質1.8人の現役世代で1人の高齢者を支える構造に入っている。この状態で物価高、実質賃金低下、社会保険料増が同時に進めば、子どもを産み育てる余力は急速に失われる。少子化は価値観の問題ではない。算数の問題だ。

それでもなお円安を容認し外向きの支払いを優先する。その結果、国内の耐久力は削られ富裕層は外へ出ていく。これは成長ではない。逆回転である。

だからはっきり言う。

これは「起きるかもしれない戦争」ではない。すでに戦争状態に入っている世界の中で、日本がどう削られていくかという話だ。

戦争か否かという言葉遊びの横で、エネルギーは陣営ごとに流れ始め、円は売られ、生活コストは上がり、請求書は静かに積み上がっている。

日本にとっての敗北は、戦場ではなく家計と通貨から始まる。

問われているのは戦争か否かではない。

この国が、ブロック化する世界の中で、次の有事に耐えられる状態にあるのか。
それだけだ。

文/木戸次郎 写真/shuttersrock

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