「大谷翔平は何番を打つのがベストか」の最終結論…元WBC戦士が描く最強打線と優勝の条件
「大谷翔平は何番を打つのがベストか」の最終結論…元WBC戦士が描く最強打線と優勝の条件

第6回WBCで連覇を目指す侍ジャパン。大谷翔平、山本由伸らメジャーリーガーに加え、佐藤輝明や牧秀悟など国内組の主力も揃い、戦力は史上屈指とも言われる。

では、どのような打線を組めば世界一に近づくのか。2006年WBC日本代表で、楽天監督も務めた今江敏晃氏が「3番・大谷翔平」を軸とする理想オーダーと大会の展望を語った。

「大谷翔平は何番を打つのがベストか」

前回の第5回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)王者にして、WBSC(世界野球ソフトボール連盟)では世界ランキング1位。日本は第6回大会においても優勝の有力候補と目されている。

昨シーズンに中心選手としてワールドシリーズ連覇を支えた、大谷翔平と山本由伸を筆頭とするメジャーリーガー。国内組も、ピッチャーの最高栄誉である沢村賞を受賞した日本ハムの伊藤大海、ホームランと打点の二冠王に輝いた阪神の佐藤輝明など、豪華な顔ぶれとなった。これだけの戦力を有していれば連覇への期待も俄然、高まるというもの。

初代王者となった2006年のWBC日本代表メンバーであり、24年には楽天の監督を務めるなど指導者経験も豊富な今江敏晃氏に今大会の展望を解説してもらった。

まずは今江氏が考えるオーダーから。

 1番・センター 鈴木誠也(カブス)
 2番・レフト 近藤健介(ソフトバンク)
 3番・DH 大谷翔平(ドジャース)
 4番・サード 岡本和真(ブルージェイズ)
 5番・ファースト 村上宗隆(ホワイトソックス)
 6番・セカンド 牧秀悟(DeNA)
 7番・ライト 佐藤輝明(阪神)
 8番・ショート 小園海斗(広島)
 9番・キャッチャー 坂本誠志郎(阪神)

「ドジャースでは1番や2番を打つことが多い大谷選手ですが、短期決戦のWBCではできるだけチャンスを逃したくない。なので、1番の鈴木選手と2番の近藤選手で得点圏を演出してもらい、3番の大谷選手でランナーを還すというパターンを初回から作れれば、主導権を握りやすいと考えます。

このオーダーでカギを握るのは、4番の岡本選手です。ランナー二塁など一塁が空いているケースで大谷選手が敬遠されれば、よりチャンスをものにすることができる。

そこで長打のある岡本選手から5番の村上選手、6番の牧選手まで繋がることができれば、一気に大量点を狙える、というわけです。

さらにポイントとなるのが、7番のサトテル選手(佐藤)です。ピッチャー心理からすれば、7、8、9の下位打線はひと息つきたいところですが、一発のあるサトテル選手がいることでそれが叶わない。

しかも7番は、意外とランナーが溜まりやすい打順でもあるため、彼に走者一掃の長打が出ればより優位に試合を運ぶことができるでしょう。それにサトテル選手はWBC初選出なので、できるだけプレッシャーの少ない打順でのびのび打ってもらいたい、という意図もあります。

ただ正直、悩んでもいます。特に外野手は、前回大会でベストナインとなった吉田正尚選手(レッドソックス)。2024年のプレミア12で4番を任された森下翔太選手(阪神)もいます。吉田選手の実績や能力は申し分ないですし、森下選手にしてもミドルスピードのストレートを待ちながら変化球に対応できるといった巧さがある。

ふたりとも初球からしっかりバットを振っていける、短期決戦向きのバッターでもあります。外野は誰がスタメンで出てもおかしくないと思っています」

「ポジション問題」とピッチクロック

日本は送りバントや盗塁、進塁打など小技を駆使して得点を重ねる「スモール・ベースボール」がお家芸とされているなか、今江氏は長打力のあるバッターを多く選んだ。理由として、準々決勝以降で日本と対戦する可能性のあるチームに救援タイプが多いからだという。

2月時点でアメリカは16人中7人、ドミニカ共和国は15人中11人、ベネズエラは17人中11人と、短期決戦ならではの小刻みな継投で挑んでくると睨んでいる。

「球数制限(上限は1次ラウンド65球、準々決勝80球、準決勝以降95球。50球以上で中4日、30球または連投で中1日)があるので、海外のチームはショートイニングでどんどんピッチャーをつぎ込んでくることが予想されます。だからこそ、しっかりバットを振れる選手を揃えて攻撃的に打っていったほうが、相手に嫌なイメージを与えられるんじゃないかな、と思います」

さらに、代表選手が発表された際に噴出した「ポジション問題」。例えば、ショートを守ることが予想される小園が昨シーズンはサードで、佐藤もサード、鈴木はライトがメインだった。これについて、今江氏は「問題ないと思います」と指導者目線で説明する。

「絶対に専門職ではいけない、というわけではないと思います。ショートで言えば、前回も阪神ではセカンドの中野(拓夢)選手と西武の源田(壮亮)選手の併用でした。代表に選ばれるくらいの選手ですから、ディフェンス面の平均レベルは高いです。そこは、現役時代に『守備の名手』と呼ばれた井端(弘和)監督が考えていないはずがありません。

繰り返しになりますが、守ることよりも打つことに重きを置いたほうがいい。世界的にパワー野球となっているなか、初回から最少得点で守り抜く野球をしても、なかなか勝機を見出せないんじゃないかな、と考えます」

攻撃野球を実現できる一方、投手陣は不安要素が残る。14人のうち所属チームで先発を務める選手が11人と大半を占める。

ゲーム終盤に頼りとなる救援陣も、西武の平良海馬、阪神の石井大智、パドレスの松井裕樹が故障により出場を辞退。

追加で招集された楽天の藤平尚真、西武の隅田知一郎、中日の金丸夢斗のうち、藤平以外は先発タイプである。

さらに不安を助長させるのが、今大会から導入されるピッチコムとピッチクロックだ。電子機器を使用し選手にサインを伝達ができる前者こそ問題はないとするが、後者は未知数だと今江氏は実情を口にする。

ピッチクロックとは、走者なしで15秒以内、走者ありだと18秒以内にピッチングモーションに入らなければならず、時間がオーバーすれば1ボールが加算される。また、打者から次の打者の初球までを30秒以内に投じなければならず、牽制球も原則2回までで3回目にアウトにできなければボークが与えられる。

バッターも上記15秒ないし18秒から8秒以内までに打席で構えなければ、1ストライクが加算されるペナルティを設けられている。それでも、今江氏は「やはりピッチャーの対応がカギを握る」と見ている。

「これまで、日本で使い慣れていないWBCの公式球だけでも苦労する選手がいたなかで、ピッチクロックも順応するまでに時間がかかるケースも出てくるかもしれません。なので、僕はメジャーでプレーするピッチャーの経験がポイントになると思っています」

救援陣に不安、クローザーは誰が適任か

4試合ある1次ラウンドでローテーションを任されるであろう先発ピッチャーは、今江氏
の見立てではこうなる。

「前回、ピッチャーとバッターの〝二刀流〟で活躍してくれた大谷選手が今回はバッターに専念するので、山本由伸選手が柱になるでしょう。

昨シーズンのワールドシリーズMVPと実績も十分なので、誰もが認める投手陣の軸として引っ張ってくれる。そこに、オリオールズで10勝を挙げた菅野(智之=現ロッキーズ)選手、エンゼルスでローテーションを担った菊池雄星選手のメジャーリーガーも期待感が高まります。

もうひとりは、前回大会も経験する伊藤大海選手になるのかな、と。1次ラウンドは少ない球数制限なので、この4人がしっかりゲームを作って、試合中盤から〝第2先発〟と呼ばれるピッチャーなどで繋いでいく――そういった継投になっていくのではないかと思います」

不安材料が残る救援陣。なかでも守護神について、今江氏は当初、楽天時代に236セーブを挙げ実績十分の松井を推していたが、白紙となってしまった。そのため「信頼できるピッチャーを流動的に起用するのかもしれない」と予測している。

「ここは難しいです。抑えの経験が豊富なピッチャーに任せたいところではありますけど、過去の大会を見てもダルビッシュ(有)選手や大谷選手も抑えをやりましたから。クローザーというのはゲームを締めくくる役割なので、『この選手で打たれたらしょうがない』と信頼される存在が投げなければいけません。代表メンバーはそれだけの選手が揃っていますけど、誰が投げるのかの適性を見極める部分は重要なポイントになるでしょうね」

投手陣のみならず、野手も含め試合ごとに情勢が変わっていく国際大会において、井端監督の采配も重要となる。今江氏自身も監督経験者として注目しているという。

「前回大会で栗山(英樹)監督が不振だった村上選手を起用し続けたように、井端監督もスタメンに選んだ選手に命運を託すのか? それとも、調子やコンディションによって臨機応変に代えていくのか? そこは大きな見どころです。短期決戦はみんなでカバーし合えないと絶対に優勝できないと思いますし、そのあたりを井端監督がどういう観点から判断し、采配に繋げていくのかは楽しみですね」

決して侮れない台湾

前回王者であるため、日本は各国から徹底マークされる。今江氏が警戒するチームとは。

「もう、全部です。1次ラウンドで戦うチームでは、プレミア12で日本を倒して優勝した台湾は第一に警戒すべきです。韓国は最近のWBCで結果は出ていませんが、去年にサムスンライオンズで打撃インストラクターとして指導させてもらった僕としては、力がある選手が多いと感じました。国際大会になればやっぱり怖い存在になってくるでしょう。

準々決勝以降に勝ち進められるとすれば、ドミニカとベネズエラの中南米のチームは日本にとって厄介になるはずです。2013年の第3回大会の準決勝でプエルトリコに敗れたように、彼らは乗ってきたら日本であっても食い止められないくらい勢いづいてくる。だからこそ、序盤から投打ともに攻めて流れを作らせない戦いが求められます。

勝ち上がれば決勝での対戦が予想されるアメリカも、ヤンキースのアーロン・ジャッジ選手などスター選手が揃っています。前回の決勝で負けているのでリベンジに燃えているでしょうし、このカードが再び実現できれば大きな話題になるでしょうね」

最後に余談ではあるが、今大会は動画配信サービス「Netflix」の全試合独占配信となり、地上波では放映しない。「お金を払ってまで見たいとは思わない」といった声も散見されるなか、その盛況ぶりにも注目が集まる。

「今回も連覇の可能性は十分にあります。前回があれだけ盛り上がったんですから、侍ジャパンが勝ち進めば日本人なら絶対に見ますって。

だって、WBCですよ!」

文/田口元義

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