近年、「バイク女子」という言葉が広がり、女性ライダーへの注目も高まっている。一方で、大型バイクに乗る女性に対しては、いまだに「本当に乗れるのか」「男の影響ではないか」といった偏見の目が向けられがちだ。
そんな空気のなか、アイドル時代にバイクにまたがる姿が話題を呼び、バズったことがあるのが、望永るなさんだ。見た目とのギャップゆえに向けられる視線や、女性ライダーならではの不便さ、それでも乗り続ける理由について聞いた。
初対面にもかかわらず「男の影響ですか?」
バイクに乗っている女性と言えば、ある程度身長が高く、ビジュアルもストリート系やワイルド系に近いイメージが一般的にはあるだろう。しかし、身長158cmの望永るなさんは元アイドルということもあり、見た目はいわゆる「ザ・女の子」。ビジュアルだけを見れば、バイクに乗っている姿は想像できないかもしれない。
そんな彼女が現在乗っているのは、「ROYAL ENFIELD CLASSIC 650」。現存するオートバイメーカーでは最も歴史があるイギリス発祥のメーカー「Royal Enfield(ロイヤルエンフィールド)」から発売されている、れっきとした大型バイクだ。
望永さんがバイクに興味を持ったきっかけは、もともと家族が乗っていたことだった。
「父親と従兄弟がバイクに乗っていたので、自然と自分もバイクを好きになっていました。車より先にバイクの免許を取りましたね」
当時、望永さんは大学生。周りの友達はみな車の免許を取っていたが、一人で教習所に通い、普通二輪免許を取得した。そして、昨年末には念願の大型二輪免許を取得し、「ROYAL ENFIELD CLASSIC 650」を手に入れた。
しかし、望永さんのバイク愛が本物であっても、周囲から好奇の目を向けられることも少なくない。
「初対面の人に『バイクに乗っているんです』って話すと、だいたい『男の影響ですか?』って聞かれますね(笑)。仲良くなってから冗談で言われるならまだわかるんですが、初対面の人なので強く言い返すこともできず。毎回適当に受け流しているんですが、正直、本当に面倒くさいです」
その偏見はリアルの場だけにとどまらない。
望永さんはアイドル時代、衣装を着てバイクに乗った写真がXでバズり、ネットニュースになったことがある。そのときもコメント欄には「どうせ男の影響だろ」という言葉が多く並んだという。
アイドルという肩書きだけを見れば、「アイドルとしての話題づくりのため」「男に媚びを売っている」とひねくれた捉え方をする人もいたのではないか。
「幸いにも、『男に媚びてるんだろ』とまで言われたことはなかったです。ただ、確かにそういう見方もあるかもしれないとは思いますね」
女性ライダーにとっての大きなハードル
女性ライダーであることによって向けられる偏見は、「なぜ乗り始めたのか」という問いだけにはとどまらない。「本当に乗れるのか」と、その技量自体を疑われてしまうこともある。
「『大型バイクに乗ってる』って言うと、『ちゃんと乗れるの?』とか『引き起こせるの?』とかも、よく言われますね(笑)」
バイクが倒れた状態から車体を起こす「引き起こし」は、バイクの扱いにおける最初の難関とされる。この引き起こしはコツさえつかめば女性でもできるのだが、やはりある程度力があったほうがやりやすいことは事実だ。
そのため、学生時代にスポーツ経験がなかった望永さんにとって、大型バイクの引き起こしは大きなハードルであった。
「教習所に通っていたときは全然できなかったですね。
また、身長158cmの望永さんは、大型バイクに乗ると地面に足がつかないこともある。
「車高を下げてもらえば足はつくようになるんですけど、足がつま先だけしかつかないような状態だと、停車時にふらついたり、バイクの重さの影響をもろに受けますね」
さらに、女性ライダーであることの不便さは、乗る以外の場面でも感じているという。
「女性ライダーはそもそもの母数が少ないので、気軽にツーリングに行ける相手がいないんです。あとは、ヘルメットもライダーズスーツも女性のものがほとんどなくて不便に感じることは多いです。もっと女性ライダーが増えれば、自然と女性向けのアイテムも増えていくと思うんですけど……」
「え、なんで泣いてるの!?」
こうした偏見や不便さに日常的にさらされながらも、望永さんはバイクに乗り続けている。それはなぜなのか。
「やっぱりバイクが好きだからですね。何か辛いことがあっても、バイクに乗ればスッキリするんです。一度乗ってもらえればわかると思うんですが、あの爽快感は車では味わえないですね」
アイドル時代には、月20本以上のライブをこなすなど多忙を極め、バイクに乗れない日が続いた時期もあった。それでも、ようやくバイクに乗れたときはライブの疲れや苦労もすべて吹き飛んだ。
「千葉のライブにバイクで行くことになったんですけど、そのときは2週間ぐらいバイクに乗れていなかったので、乗ったときは感動で涙が出ました。バイクに乗ってるときも泣き続けていたので、ライブ会場についたときは目がちょっと腫れてて(笑)。
先述のネットニュースになったときも、実は批判だけでなく「SNSを見ればちゃんと乗っているとわかります」と擁護するライダー界隈からのコメントもあった。その言葉も、望永さんの背中を押した。
「写真だけだと、本当に乗れているのか伝わらなかったんだなって気づきました。だから今後は、私がバイクに乗っている動画をどんどん発信して、私が本当に好きで乗っていることをいろんな人に知ってもらいたい。そこから、女性ライダーがもっと増えてくれたら嬉しいと思っています」
「バイク女子」という言葉が広まり、女性ライダーは昔に比べれば一定の市民権を得てはいる。しかし、望永さんが経験してきた通り、やはり女性がバイク、とりわけ大型バイクに乗ることには依然として高いハードルが存在することも事実だ。
それでも、彼女はこれからも大型バイクに乗って、日本中を走り続けるだろう。心の底から、バイクを愛しているのだから。
取材・文/ワダハルキ 写真/本人提供

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