もしホルムズ海峡が本格的に閉鎖されたら、日本の生活はどうなるのか。世界の原油の約20%が通るこの海の要衝が、いま事実上の停止状態に陥っている。
日本のエネルギー供給がいかに脆く、危うい基盤の上に成り立っているか
世界経済、そして、私たちの家計に大きな脅威が訪れている。
「ドナルド・トランプによるイラン政府の武力転覆の試みは、世界中の苦境に立たされた政府や中央銀行が対処に苦しむ、生活費圧力の新たな波を引き起こす可能性がある。(中略)米国・イスラエルによる中東諸国への攻撃は、世界的な経済ショックの長い連鎖の最新のものだ。イランの南部国境にある狭い水路であるホルムズ海峡を通る船舶輸送は、ミサイル攻撃後に企業が迅速に輸送を制限したため、事実上閉鎖された」(3月2日、ガーディアン紙)
「ホルムズ海峡の閉鎖は、一夜にして世界貿易される原油の約5分の1を混乱させ、価格は単に急騰するだけでなく、恐怖だけで暴騰するだろう。(中略)このショックはエネルギー市場を超えて波及し、金融条件を厳しくし、インフレを加速させ、数週間で脆弱な経済を不況に近づける」(3月1日、アルジャジーラ紙)
日本はエネルギーのほとんどを外国からの輸入に頼る国である。中東から運ばれる原油は全体の95パーセントに達し、その大半がホルムズ海峡という狭い水路を通過する。
海峡がふさがれる事態は、日本のエネルギー供給がいかに脆く、危うい基盤の上に成り立っているかを、改めて思い知らされることになる。
海峡は事実上の閉鎖状態に陥った
石油や天然ガスの流れが途絶えれば、ガソリン代、電気代は一気にハネ上がり、工場は立ち行かなくなる。このような危機を繰り返すたび、日本は立ちすくむ。
ホルムズ海峡は、イランとオマーンという国に挟まれた、非常に幅の狭い海の「道」である。世界中で輸出される原油のうち、約20パーセント、量にして1日あたり約2000万バレルがここを通る。電気を作るために欠かせない液化天然ガス、いわゆるLNGについても、世界の約20パーセントが同じ道を通って運ばれる。
現在、イランをめぐる情勢が悪化したことで、海峡は事実上の閉鎖状態に陥った。
船の行き来は止まり、海を渡るための保険料は跳ね上がり、荷物を運ぶ会社は危険な海域を避けている。3月2日の時点で、原油の価格は1バレルあたり67ドルから82ドルまで急上昇した。
世界経済への打撃は、想像を絶する規模に
日本がサウジアラビアやアラブ首長国連邦から買い付けている原油の70パーセント以上は、海峡を経由して届く。カタールから送られるLNGも日本全体の15パーセントを占めており、発電所や産業を支えるために一刻も欠かすことができない。
世界経済への打撃は、私たちの想像を絶する規模になる。原油の値段が上がれば、物を運ぶ費用が増え、店に並ぶあらゆる食べ物や日用品の値段が、これまでの常識を超えて上がっていく。
世界の経済成長を示す指標であるGDPは、0.3パーセントから0.8パーセントも低下する可能性がある。特にアジアの国々は、破滅的な状況に置かれるだろう。中国、インド、日本、韓国の4か国だけで、海峡を通る原油の75パーセント、LNGの59パーセントを消費しているからである。
欧米でもガソリンの価格が1ガロンあたり3ドルを超える事態が予測される。閉鎖が長引けば、物価の上昇と不況が同時に牙をむく「スタグフレーション」という地獄のような現象が起きる。1970年代に世界を絶望させたオイルショックと同じ光景が、さらに深刻な形で繰り返されようとしている。
閉鎖が長く続けば、終わりが見えない苦難が始まる
視点を、私たちの台所や家計に移してみる。エネルギー供給の弱さは、生活者の日常を直接的に、そして冷酷に追い詰める。日本政府は、石油の備蓄を254日分持っている。
国が蓄えている分が146日、民間の会社が持つ分が101日、産油国と共同で持つ分が7日である。LNGの在庫については、わずか約3週間分しかない。
短い期間であれば、備蓄を食いつぶして耐えることもできるだろう。しかし、閉鎖が長く続けば、終わりが見えない苦難が始まる。船が遠回りのルートを選べば、運賃は跳ね上がり、そのツケはすべて私たちの支払う代金に上乗せされる。
「イランはドナルド・トランプ大統領を脅すために、ホルムズ海峡を商用船舶にとって危険な状態にしようとするかもしれない。それにより原油価格が1バレルあたり100ドルを超える急騰を招く可能性がある、とマクナリー氏は述べた。(中略)ホルムズ海峡の長期閉鎖は、確実な世界的な不況を意味する、とマクナリー氏は語った」(2月28日、CNBC)。
原油の価格が1バレルあたり120ドルを超えると、ガソリン代や電気料金は、生活を破壊するレベルで上がっていく。
もはや「苦しい」という言葉では足りないほどの窮地
農業でトラクターを動かす燃料も、漁業で船を出す油も、ビニールハウスを温める重油も、手の届かない値段になる。その結果、スーパーに並ぶ野菜や魚の値段は、これまでの倍近くに跳ね上がるかもしれない。
私たち生活者の立場から見れば、もはや「苦しい」という言葉では足りないほどの窮地である。現在、円の価値が急激に下がる「円安」が止まらない。1ドル150円をも超えるような深刻な円安の中で石油の値段が上がることは、家計の息の根を止めかねない猛毒となる。
石油が高くなれば、冬の暖房費を払えず凍える夜を過ごし、仕事や病院に行くための交通費さえ惜しまなければならなくなる。毎月の光熱費が数千円、数万円と上がることで、貯金は底をつき、生活は音を立てて崩れていく。
子供の未来のための教育費や、病気を治すための医療費を削らざるを得ない家庭が、街中にあふれるだろう。工場が止まれば、働く場所が奪われる。こうした絶望の連鎖が、日本という国全体の活力を奪い去る。
日本のGDPは3パーセント低下する可能性がある。製品を作ることも、荷物を運ぶこともできなくなり、日本は世界の中で取り残されていく。消費は完全に冷え込み、景気は底の見えない暗い穴へと落ちていく。
「ホルムズ海峡の長期閉鎖は、確実な世界的な不況だ」
今後の予測についても、厳しい展望が示されている。
「『ホルムズ海峡の長期閉鎖は、確実な世界的な不況だ』と、コンサルティンググループRapidan Energyの創設者で、ジョージ・W・ブッシュ元大統領のエネルギー顧問だったボブ・マクナリー氏は述べた」(3月2日、Fortune)
今回のような危機が繰り返される現実を前に、原子力発電の役割を改めて考えるべきではないだろうか。エネルギーを自前で用意する割合が高まれば、安定した電力を手に入れることができる。過去にオイルショックで学んだ教訓を、今こそ活かさなければならない。
エネルギーを他国に委ねたまま、供給の脆さを放置し続けることは、家族の命や未来をギャンブルにさらすのと同じことである。
私たちが目を覚ますための、最後通告かもしれない
今回の海峡閉鎖は、私たちが目を覚ますための、最後通告かもしれない。安定した経済と、安心して眠れる夜を取り戻すため、日本国内にあるエネルギーの源を徹底的に強化しよう。
原子力発電の全基稼働を含め、あらゆる手段を尽くす時が来ている。この未曾有の困難を、日本が生まれ変わるための、最初で最後のチャンスにしなければならない。
もはや、エネルギー問題を「いつか解決すべき課題」として先送りにする猶予はない。ホルムズ海峡という細い生命線に国家の命運を丸投げし続けることは、日本経済を常に「他者の掌の上」で踊らせることに他ならない。
今、私たちが直面しているのは、単なる物価高騰ではなく、国家存立の基盤が崩壊しかねないという冷厳な事実である。供給網の脆弱さを露呈した今こそ、原子力発電の活用を含めたエネルギー自給率の抜本的向上に、不退転の決意で踏み出すべきだ。
文/小倉健一 写真/shutterstock

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