申し込み3万1000人、成婚150組…東京都のAI婚活「TOKYO縁結び」が映す“結婚できない時代”
申し込み3万1000人、成婚150組…東京都のAI婚活「TOKYO縁結び」が映す“結婚できない時代”

出会いの場は増えているはずなのに、結婚はなぜ難しくなっているのか。東京都が始めたAIマッチングシステム「TOKYO縁結び」や婚活を描いた作品を手がかりに、現代の婚活のハードルを探った。

「TOKYO縁結び」の登録者と成婚者数は

「結婚したいとは思っているけれど、何から始めていいのかわからない」。そんな声は、決して珍しいものではない。

実際、独身男女を対象にした調査では、結婚願望がある人のうち、実際に婚活をしている人は3割弱にとどまり、約7割は行動を起こしていないという結果もある。

こうした状況の中で、2024年9月から本格的にサービスが始まったのが、東京都が提供しているAIマッチングシステム「TOKYO縁結び」だ。

担当する東京都生活文化局の大森有一氏に話を聞くと、こうした状況を次のように説明する。

「結婚に関心がある方の中でも、実際には何も行動していないという人がかなり多いというデータがあります。そういう方の背中を行動に向けて少し押すことができれば、というのが東京都の結婚支援事業の目的の一つです」(大森有一氏、以下同)

近年、未婚率の上昇や晩婚化が社会問題として語られることが増えた。

国勢調査をもとに算出される「生涯未婚率」(50歳時点で一度も結婚したことがない人の割合)は上昇を続けており、男性の生涯未婚率は1990年には5%台だったが、2020年時点では男性28.3%、女性17.8%となっている。

背景としてよく指摘されるのが、「出会いの場」の変化だ。かつては職場や学校、友人の紹介、あるいは合コンなど、自然な形で男女が出会う機会が多く存在していた。しかし、こうした機会は年々減少している。

「職場などでも、結婚しているのかどうかといった話題を踏み込んで聞くこと自体が以前と比べて難しくなってきています。そうした環境の変化もあって、出会いの機会が少なくなっている面はあると思います」

「TOKYO縁結び」は独身証明書の提出などの手続きを経たうえで登録する仕組みになっている。

2026年1月末時点での実績は、累計入会申込数がおよそ3万1000人、登録者数が約1万4000人。実際に成婚に至ったカップルは150組にのぼるという。

年収200万円48歳の漫画家が婚活スタート

ただし、この数字を見ると、申し込み数と登録者数の間には大きな差がある。マッチングシステムの利用には、オンライン面談や各種書類の提出、利用料の支払いなどいくつかの手続きが必要になるためだ。

「申し込みだけして、少し様子を見てみようという方もいらっしゃいますし、面談を受けてみてから考えようという方もいます。ただ、活動していなかった人が“まず申し込んでみる”という一歩を踏み出しているという意味では、一定の役割は果たせているのではないかと思っています」

またこのマッチングシステムの特徴は、経験豊富なスタッフがオンラインで婚活の悩みや相談に応じてくれることだ。

「多いのは“どう進めたらいいのか”という相談です。実際に会うときに何に気をつければいいかとか、どういうふうに次のステップに進めていけばいいか、といったご質問が多いですね」

服装について相談されることもあるという。恋愛そのものというよりも、「どうやって関係を進めればいいのか」という手順に悩む人が多いというわけだ。

こうした状況は、婚活の現場を描いた作品からも見えてくる。漫画家の中川学氏は、自身の婚活体験をもとにしたコミックエッセイ『独りで死ぬのはイヤだ』で、年収200万円・48歳という立場から婚活に挑んだ過程を描いている。

マッチングアプリや街コン、お見合い企画など、さまざまな方法で出会いを探していくが、そこには年齢や収入への不安、コミュニケーションの難しさ、相手を本当に好きになれるのかなど、現実的な壁が次々と現れる。

こうして見ていくと、現代の結婚の難しさは単純に「出会いがない」という問題だけでは説明できないことがわかる。

出会いの場は存在する。マッチングアプリもある。自治体の支援事業もある。実際に出会い、交際に発展するケースも少なくない。それでも、その先に進むことは簡単ではない。

むしろ、マッチングアプリなどで出会いの機会が増えたことで、選択肢が広がるがゆえに「ほかにもいい人がいるのではないか」と迷ってしまう側面もあるのかもしれない。SNSには理想的な恋愛や結婚の成功体験があふれている。

現代人の婚活のハードルは今、「出会いがない」という問題から、その先へどう進むかという次のフェーズへと移りつつあるのかもしれない。

取材・文/集英社オンライン編集部

編集部おすすめ