ワールド・ベースボールクラシック2026(WBC)では初戦でいきなり満塁ホームランを放つなど、大谷翔平がファンの期待を超える活躍を続けているが、そのスポンサー収入も規格外だ。
アメリカのスポーツビジネス専門紙の「スポーティコ」は、2025年のアスリートの長者番付でスポンサー収入などの副収入が1億ドル(約158億円)の大谷が世界1位に達したと報じている。
中高年層から若年層へのリーチを成功させた「エアー」
寝具を販売する西川株式会社は2017年に大谷と契約を結んだ。高校卒業後、日本ハムファイターズ入団時から同社の「エアー」を愛用していたためだ。大谷は最低でも1日10時間の睡眠をとり、睡眠の質の高さがパワーの源になっているとも言われている。
西川は最新のデジタル計測器を用いて身体に最適な寝具を提供してきた。大谷は「僕が一番大事にしてきたもの、それが睡眠です。シーズン何に一番支えられてきたか、こういうエアーだったりとか、すごいお世話になったかと思います」とコメントした。
これまで二人三脚でブランドを育ててきた効果は絶大だ。西川によると、エアーの2025年の売上は、2017年の契約時と比較すると2倍に増加。いまだに売上は伸長し、大谷が愛用する「エアーSX」のマットレスのみの2025年の売上は前年比で30%も増えている。
「エアーSX」のマットレスは、レギュラータイプシングルで17万6000円(税込)、ダブルで24万2000円(税込)と高額だ。それでも購入する人が後を絶たない。
そして、ポイントとなるのが購入者の属性に変化が生じていることだ。
「高校、大学を卒業後、将来的にプロのスポーツ選手になるような子どもたちも、『すでにエアーを愛用しています』と言ってくれる方が増えている印象があります。」(同社・広報担当)
西川の寝具のように高額な商品は、いかに顧客生涯価値を高めるかが勝負になる。「顧客生涯価値」とは、一人の顧客から生涯を通じて得られる利益だ。企業にとって理想的なのは、顧客が一度使ったら他の商品には乗り換えない状態を作ることだ。そして顧客は若ければ若いほどいい。
西川はもともとの製品力が高く、顧客生涯価値を高めるポテンシャルは持っていた。しかし、高額ゆえに中高年層が顧客の中心だったわけだ。大谷がブランド認知を広げたことにより、若年層にもリーチすることができた。
しかも、睡眠や休息を大切にするスポーツ選手予備軍ともなれば、使い慣れた寝具を別のブランドに切り替えるという選択肢は取りづらい。
スポーツ選手の予備軍からスターが誕生すれば、ブランド効果がまた増幅する未来すら見えてくる。
世界的な抹茶ブームによる茶葉高騰の逆風を大谷効果で跳ね返せるか?
「お~いお茶」の伊藤園は2024年4月30日に大谷が『お~いお茶グローバルアンバサダー』に就任した。「僕は⽇本にいたときから「お~いお茶」が⼤好きでよく飲んでいましたし、アメリカの⽣活でも⼤切な相棒となっています。」と本人がコメントを寄せている。
伊藤園によると、2025年3月3日に発売した「お~いお茶」の大谷翔平ボトルは、前年同月比で販売数量が5%増加。プロモーションに起用したことにより、「お~いお茶」の緑茶飲料のマインドシェアが27%から35%に増加するなど、ブランド認知の拡大にも一役買っている。
見逃せないのが「お~いお茶 PURE」シリーズの累計販売本数が5000万本を突破していることだ。大谷翔平を全面的にプロモーションに起用し、「お茶の常識、すてましょう。」のキャッチコピーで若者や女性を中心に支持を集めている商品だ。
実は伊藤園では、主力商品の「お~いお茶」は窮地に立たされている。原材料となる茶葉の高騰などにより、値上げを余儀なくされているからだ。昨年10月にも価格改定をしたが、今年3月1日出荷分からも価格を引き上げ、600mlのボトルの小売希望価格は216円(税込)から237円(税込)に値上げされた。
特に、市場では価格が高額になりがちな自動販売機での購入を手控える動きが加速している。今後、ドラッグストアなどで販売されているプライベートブランドの緑茶にシェアを奪われることも危惧されている。
そうした中で、従来の顧客層とはターゲットが異なる「お~いお茶 PURE」の存在感は大きい。緑茶に付加価値をつけているために競合他社とも差がつけられる。
そして、このシリーズの「お~いお茶 LEMON GREEN」は、2025年9月末より米国内で順次販売を開始した。
ファミマのおにぎりの売上は前年比1.2倍に増加
ファミリーマートは3月6日から「大谷選手ファミマおむすび割2026」を実施している。大谷が出場する公式試合で、ホームランを打つまたは勝利投手になるとクーポンを先着1万枚配布するというものだ。
このキャンペーンの1年ほど前に取り組んだ「おむすび二刀流、解禁。」キャンペーンの効果は凄まじいものだった。おむすびの店舗当たり売上は前年比120%超に伸びた。キャンペーンで押し出した3つの商品は発売から1週間で累計販売数が300万個を突破したのだ。ファミリーマートの2025年3月~5月における本業のもうけを表す事業利益は18%伸びた。同期間のセブン&アイ・ホールディングスの国内コンビニエンスストア事業の営業利益は11%減少している。
コンビニはインフレによって集客に苦戦しており、主力カテゴリーの1つであるおにぎりはコメの価格高騰で販売価格も上昇。セブンイレブンが100円おにぎりを復活させるなど、各社が販売戦略で難しいかじ取りを迫られている。そんな状況下で、ファミリーマートが大谷を起用してキャンペーンを成功させた功績は大きい。
WBCでの大谷の活躍が光るほど、スポンサー企業に与える恩恵も大きそうだ。インフレで消費が停滞する日本経済の救世主とさえ言えるのかもしれない。
取材・文/不破聡

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