「6歳に腰振りダンスはアリ?」TikTok時代に広がる“子どものセクシーダンス”に教育専門家が警鐘
「6歳に腰振りダンスはアリ?」TikTok時代に広がる“子どものセクシーダンス”に教育専門家が警鐘

2024年パリオリンピックでは、ダンススポーツの「ブレイキン」が初めて追加種目として実施されるなど、近年はダンスが自己表現のひとつとして大きな注目を集めている。かっこいいダンスに触れる機会が増えれば、子どもたちがマネをしたくなるのも無理はない。

だが一方で、セクシーな表現やポーズをどこまで認めるべきなのかという問題も浮かび上がっている。

子どもなのに衣装も振り付けもどんどんセクシーに

テレビをつければ、お揃いの衣装を着たアイドルグループが音楽番組でパフォーマンスを披露している。TikTokを開けば、制服姿の高校生たちが流行の振り付けで踊っている。インスタグラムのリール動画には、K-POPアイドルたちの激しいダンスが並ぶ。動画投稿文化の普及によって、いまや日常のあらゆる場所にダンスがあふれている。

2012年度から中学校でダンスが必修化され、ヒップホップやK-POP、ジャズなど、子どもたちにとって「かっこいい」と感じられるジャンルに触れる機会も増えた。都市部を中心にダンススクールも急増し、低年齢層がダンスに触れる機会も広がっている。

保護者が撮影したとみられる動画では、幼い子どもが大人顔負けの動きを披露する姿も多く見られる。一方で、ダンス人口の低年齢化が進むにつれ、その表現方法をめぐってSNS上では懸念の声も上がっている。

〈幼い子どもに性行為を想起させるようなモーションの含まれるジャンルのダンスを習わせている親の神経が理解できません。腰ヒットとか6歳の子どもに踊らせていい動きじゃないだろ〉

〈明らかに小学生という年齢の子も参加させ、衣装も振り付けもセクシーに踊らせる振付師はかなりいる〉

〈大開脚やしゃがんだ状態で激しく腰を震わせるTwerk系ダンス(※)などを未成年にやらせるのは問題ではないか〉(※中腰の姿勢で腰・お尻を激しく振るヒップホップ系ダンス)

〈母親がお金やフォロワー稼ぎのために、幼い娘の水着姿や性的なポーズやミニスカ着せてダンスみたいな子どもの性を売りにして世界に晒す性的虐待垢めっちゃ出る〉

ジャンルを問わず、新しい文化や表現が広がる過程で議論が生じること自体は珍しいことではない。

とはいえ、アメリカのアーティスト、サブリナ・カーペンターのようなセクシーなパフォーマンスを子どもが模倣することに、抵抗を覚える人がいるのも無理はないだろう。

体育科教育の観点から見たセクシーポーズ

もっとも、「どこからが不適切なのか」という線引きは簡単ではない。子どものダンス表現は、どこまで許容されるべきなのだろうか?

「求愛行動のように、動物が身振り手振りで自分の魅力を相手に伝える行動がありますが、生物学的な側面から見ても、ダンスと性的な表現には関わりがあると言えます」

そう語るのは、体育科教育・ダンスを専門とし、「ダンスの表現から現れる動き」に着目した研究を進めている愛知教育大学准教授の成瀬麻美氏。

「一方で、小・中学校の体育において、ダンスは『表現運動(中学校ではダンス)』の領域に位置づけられています。文部科学省の基準では、小学校では低学年の『表現リズム遊び』から始まり、中学年の『表現・リズムダンス』、高学年の『表現・フォークダンス』へと学習内容が整理されています。

そして中学校では、『創作ダンス』『フォークダンス』『現代的なリズムのダンス』の3つの内容で構成されています。現在、TikTokなどで流行しているものを分類するのであれば、このうちの『リズムダンス』や『現代的なリズムのダンス』に近いと考えられます」(以下、「」内は成瀬麻美氏)

本来のリズムダンスは、相手に何かを見せることや、性的な魅力を表現することを目的としたものではない。音楽に合わせて身体を弾ませることで、人間が本来持っている律動の快感を引き出すことに意味があると成瀬氏は解説する。

「人は音楽が鳴ると自然に身体が動くものですが、そうした音と身体の関係を取り戻すことが、教育としてのリズムダンスのねらいです。したがって、過度に露出度の高い衣装を着たり、相手を誘うような動きを重視したりするものではなく、リズムに乗って自由に身体を動かすことそのものを大切にしたいと考えています。

そのため、個人的には、低年齢期から性的表現を連想させるポーズや動きを重視する指導には反対です」

現在はメディアやSNSの影響によって、セクシーな表現をいつでも身近に目にできる環境がある。スタイルが良い、かっこいい、かわいいといったイメージに惹かれ、真似をしたくなるのはある意味で自然なことだ。しかし、行きすぎた表現については、どのように向き合うべきなのだろうか?

「例えばダンススタジオに通い、指導者が振り付けを行っているケースもあるでしょう。また、振り付けを直接教えていなくても、子どもがそうした動きをしたときに周囲の大人が容認してしまうこともあると思います。

そして、家庭の中で保護者が気づかないうちに受け入れてしまっている場合もあるかもしれません。

本来、低年齢期の子どもに対しては、そのような見方でダンスを捉えるのではなく、ダンスが本来持っている多様な価値を伝えることが大切だと思います」

SNSで拡散される女子生徒のダンス動画

ダンスにはさまざまな側面があるが、成瀬氏は、学校教育で行う表現運動やダンスの考え方に近い形で理解してもらうことが望ましいと話す。

「ただ、学校現場で行われているダンスの考え方は、まだ十分に社会に浸透しているとは言えません。そのため、最終的にはモラルの問題として、大人が適切な理解を持ち、子どもに伝えていくしかないと思います」

こうした問題は、子どもだけに限らない。SNSなどでは、高校生が文化祭などで露出度の高い衣装を着てパフォーマンスしている様子が大人によって拡散されている。

「私自身、様々な舞台を鑑賞する中で、近年は子どもが露出の多い衣装で踊っている場面を見ることが増えたという印象があります。もちろん指導の難しさはありますが、まずは教員が学校におけるダンス授業のねらいを正しく理解し、その考え方を他教科の教員とも共有していくことが大切だと思います。そのうえで、学校として発信する動画や活動内容についても、適切な判断をしていく必要があるでしょう」

保健体育の教員であってもダンスの内容を十分に理解できていない場合があり、これは指導する側の課題でもあるという。だからこそ、成瀬氏は、専門的に学んだ立場の人間が正しい知識を持ち、子どもたちに伝えていくことが重要だと考えている。

「私自身も若い頃は、それほど問題ではないのではないかと思っていた時期もありました。しかし学びを深める中で、そうした部分がダンスの本来の魅力ではないと気づきました。今後は、他の教員にも同じように理解を深めてもらえるよう、こちらから発信を続けていく必要があると考えています」

年相応ではない表現には、大人が「待った」をかけることも必要ではないだろうか――。

取材・文/千駄木雄大

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