「他人が触ったものが汚く思えてしまって…」PTSD、強迫性障害を発症、いじめが奪った19歳女性の人生「いじめの暴露動画を見ると羨ましいなって…」
「他人が触ったものが汚く思えてしまって…」PTSD、強迫性障害を発症、いじめが奪った19歳女性の人生「いじめの暴露動画を見ると羨ましいなって…」

インフルエンサーがSNSでいじめ動画をさらす現象が社会問題となっている。「投稿をみていると、正直、羨ましいという思いもあります。

私は動画とか残ってないから…」そう静かな口調で切り出したのは関東在住のナナミさん(仮名・19歳)だ。小学校時代に受けたいじめが原因でPTSDと強迫性障害を患い不潔恐怖の症状に悩まされ続けている。医師から完治は難しいと言われながらも“普通の生活がしたい”と、さまざまなことに挑戦し続けてきた。

いじめの後遺症が襲った中1の秋

ナナミさんがPTSDと強迫性障害と診断されたのは中学1年生の10月のことだ。「いじめ」を受けた小学校5年生の頃より、食事をとれなくなったり眠れなくなったりすることがあったが、この頃はそれに加えてめまい等、たくさんの症状に悩まされるようになったという。

診断されてから今日まで不安を和らげる薬と睡眠薬を服用しているという。当時の様子についてナナミさんの母親が語る。

「ナナミは、中学校に入学してからも学校に行きたいという思いは変わらず、喜んで登校していました。いじめの加害児童のうち3人は同じ中学校でしたが、中学に上がってからは『いじめ』はなくなりました。

しかし、ナナミの体調が日に日に悪くなり、それこそ這うようにして家を出て登校するようになり、心療内科を受診するとPTSDと強迫性障害だと診断されました。以前の『いじめ』が原因で『学校に行くことが心理的に負担になっている』と、主治医からドクターストップがかかりました」

学校に行けなくなったナナミさんはリビングのソファに座って、窓から外を見てぼーっとして過ごしたり、深夜に散歩をするようになったという。強迫性障害の不潔恐怖で、家族が触ったものすら触れなくなる状態だった。母親が続ける。

「病気自体は完治するのは難しいとのことですが、状態はその時々によって違います。一番ひどかった時は家に帰ってきて玄関で制服を脱いで、頭からアルコール消毒を浴びるようにしないと家に入れなかったという時期もありました。外気に触れるのも汚れていると感じていたんです」

ナナミさんも自身の症状についてこう語る。

「病気になる前だったら何も思わなかったのですが、すべてが汚く思えてしまって……。自分の物は誰にも触られたくないし、他人の物についても触りたくないという状況で、家族についても同じように感じていました」

中学校に行きたいという希望は叶わず、卒業式にも出ることはできなかった。夕方、中学校に卒業証書だけを取りに行くと、校長、担任、学年の先生らが卒業式の時の袴姿のまま校門の前でナナミさんを出迎え、1人だけの卒業式として卒業証書を授与してくれたという。

症状と向き合いながら続けた高校生活

主治医からは当初「高校に通うなんて無理だ。私としては命を守ることが優先なんだ」と言われていた。しかしナナミさんは「どうしても制服を着たい、普通の人と同じように過ごしたい」という思いで無理を言って許可を得た。

高校は通信制の高校を選択した。ナナミさんが高校生活について振り返る。

「本当は全日制の高校に行きたかったのですが、満員電車などが無理でそれは叶いませんでした。通っていた高校は通信制ではあるのですが、通学コースもあり週5日通っていました。

もし通えない状態になってしまったらその分のプリント課題を出せば単位はもらえるというシステムでした」

 高校時代にできた友だちと何度か遊びに行くこともあったという。病気が悪化してしまい、遊びに行けたのは数える程度だったが、友だちと遊べたのは楽しかったようだ。

さらに高校2年生の時に体調が悪化し、1か月も休むことになってしまった。その後、高校3年生は学校に全く通えなくなる事態に直面する。

2年生のある日、ナナミさんが久しぶりに学校に行くということで母親とともに担任と面談した時のことだ。母親が当時の状況を説明する。

「高校2年生の時の担任は男性の教員でしたが、久しぶりに登校したナナミに対し、机に身を乗り出し、声を荒らげてきたんです。『ご無沙汰してます』『学校に来れないのに家でご飯は食べるんだ』『言っていいか分からないけど、元気そうだよね』などとデリカシーのない質問を娘にぶつけはじめました。ナナミはわけもわからず硬まってしまって……。

学校にこの発言を伝えると、対応としてこの教員をナナミに接触させないと約束しましたが、約束がきちんと守られることはなく、それも原因のひとつとなって、結果的にナナミは病状が悪化し高校3年生の時は通えなくなってしまいました。後にその教員はこの発言の責任を問われ違う部署へと配置換えになりました」

そもそも高校側には病気についても伝えており、その上で通っていた。担任の配慮が足りなかったとしか言いようがないが、その後も病気という大きいハンデがナナミさんを襲い続けた。

「私は総合受験で私立の大学を受験しました。論文を提出し面接を受けるのですが、面接で聞かれたのは、ほとんどが病気の話でした。理由についてはわかりませんが結果は不合格。ただ、その大学は定員割れしているので、病気が理由で落ちたのかもと思っています」

『いじめ』は、長く続く人生にすら影を落とす行為

ナナミさんは、第三者委員会でいじめの問題に尽力してくれた弁護士の姿を見て『将来、自分と同じように苦しむ人のために何かできる仕事をしたい』と思っているそうだ。そのため、法律関係の専門学校の面接も受けた。

「面接の対応をしてくれた男性は普段の生活の様子や病気の症状など長時間にわたって話をしました。好意的な印象を感じたのですが、最終的には入学の許可がおりないという話になってしまいました。高校に通えない時期があったことを懸念されているように感じています」

「いじめ」から端を発したものが次々とナナミさんの未来を奪っていく。それでも前を向き、現在は別の大学に進みアルバイトにも励んでいるナナミさんだが、「いじめられた自分のせい」「学校なんかに相談した自分のせい」「病気になった自分のせい」と自身のことを責めてしまう日も多いという。

「つい最近、ナナミは『自分の最大のアンチは自分自身だ』と言っておりました。『いじめ』は行為が終わったから終わりではなく、その後長く続く人生にすら影を落とす行為だと思います」(ナナミさんの母親)

願わくばナナミさんの「普通の人と同じように過ごしたい」という望みが叶う未来であってほしい。

※「集英社オンライン」では、「いじめ」や「学校トラブル」についての情報を募集しています。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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